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10:打ち合わせ

 とりあえず、アーサさん、じゃなくて、アーサとの仲直りが出来て俺はホッとした。

 なんだか思いつめていた感じもなくなり、一安心。これから一緒にやっていくのも大丈夫そうだ。

 俺たちは、結局外に出たこともあって、一緒に打ち合わせへ向かうことにした。もののついで、というのも失礼かもしれないけど。

 俺はてっきり王城へ行くんだと思っていたんだが、行先はユニコーン騎士団の屯所だそうだ。

 まあ、いちいち王城へ行くのも大変か。許可証とか必要だしな。俺はほぼ顔パスだけど。


「すみません、屯所は手狭なのですが、仲間たちがいるので話を早く進められると思いまして」


 言われてみれば、その通りだ。ただ、女性だらけの屯所にお邪魔するというのは結構勇気がいる。

 アーサさん美人だしなあ。きっとユニコーン騎士団って、美女ばっかりなんだろうなあ。

 いくら元・遊び人とはいっても、女性に囲まれた経験なんてそうそうない。カジノで勝って、羽振りが良かった時だけだったかな。

 それくらいしか経験がないものだから、目的地に近づくにつれて緊張してきた。ロスヴィータを連れてこなくてよかった。何てからかわれるか分かったもんじゃない。

 勇者が異性に会うだけで緊張だと? 英雄色を好むという言葉を知らんのか?

 とか言ってニヤニヤ笑いそうだ、あいつなら。そりゃ俺も色を好むけど、英雄になりたてなんだよ、経験無いんだよ。

 というかだ、さっきの仲直り以降、アーサと会話ができていない。

 なんだかうつむかれているし、俺は俺で小粋なジョークが思い浮かばないくらいに焦っている。

 チラチラと視線をよこされているので、俺からの話を期待しているんだろうなあ。何か笑える話なかったっけ。

 あー、でも、パーティのみんなに言われてたもんな。アシュレイのジョークは難易度が高いって。

 下手なことを言うと、笑わせるどころか、引かれそうで怖い。元・遊び人のジョブが泣くぜ……。

 えーっとえーっと、と頭を働かせても、思いつくのは仕事のことばかり。チクショウ、勇者の生真面目さが俺にも移ったのか?

 あ、そうだ。


「なあ、アーサ」

「ひゃ、は、はい!」


 うおーい、名前を呼んだだけでこれかよ。実は仲直りできてなかったとか言わないよね? よね?

 まあいいや。これから一緒に働くにあたり、聞いておかなきゃいけないことだし。


「アーサはレベル48みたいだけど、他のみんなはどれくらい?」

「え……、アシュレイ様、私のレベルをご存じだったのですか?」


 あ、しまった。名札が見えるのは俺だけなんだ。つい口を滑らせてしまった。


「あー、いやー、国王陛下から聞いたんだ、うん。ほら、一緒に仕事するのは、どれくらいのレベルの人ですかーって」


 苦しい言い訳だったけど、アーサは、そうでしたか、とうなずいてくれた。嘘ついてごめんなさい。


「えっと、そうですね。騎士団の平均は、35くらいです」


 48というアーサのレベルも高いけど、団の皆さんも強そうだ。こりゃあ頼りになるなあ。

 でも、いいんだろうか。そんな優秀な騎士団を借りちゃって。


「我々は後方支援や、後は式典などでの仕事が主ですが、訓練は怠っておりません。魔物相手でも、いつでも戦えるだけの準備はしてあります」


 ただのお飾り騎士団じゃないってことね。ますます頼もしい。

 魔物相手でも戦えるっていうのは、正直助かる。国中で情報収集して貰わないといけないからな。魔物を倒せるなら心配も減るってもんだ。

 まあ、本音は魔物相手でも戦ってほしくないけど。そこは変えない方向で。

 いや、女性だからって侮っているわけじゃないからね? これが男衆だったとしても、危険な目にはなるべく遭わせたくない。


「あの、アシュレイ様」

「ん? 何?」

「もし差し支えなければ、アシュレイ様のレベルを教えていただいてもよろしいですか……?」


 え、いいよそれくらい。

 と、答えようとして俺は迷った。

 俺のレベルは99.人間の最高到達点だ。バグを倒したおかげで、一気にレベルが上がってしまった。

 99って言って、信じてもらえるかなあ。レベルは俺か魔族じゃなきゃ見えないし、信ぴょう性薄いよね。

 それじゃあ、なんて答えよう。こっちから聞いておいて、秘密、ってわけにもいかないだろう。


「アーサよりも上、かな。あんまり自慢できるほどじゃないよ」

「やはり私よりも……。さすが、アシュレイ様」


 あ、納得してくれた。嘘じゃないし、いいよね、これでも。


「アシュレイ様ほどの方でも、これから探す敵には苦戦なさるのですか?」

「……うん」

「……なるほど。アシュレイ様が戦うな、と仰るのは、そのためなのですね」


 魔王だった頃のロスヴィータが、苦戦した、なんてはっきり言ったくらいだ。今の俺でも、どれだけ戦えるやら。

 この前のバグはレベルが67だったけど、バグってのは俺にもよくわかっていない。アレより強い奴だっているんだろうな。

 そんな相手と、アーサたちを戦わせるわけにはいかない。

 レベル差の問題っていうわけじゃなくて、俺の復讐だからって意味合いが強いけど。

 やっぱり手伝ってもらうのは気が引ける、っていやいや。またこんなこと考えると、ロスヴィータに説教されちまう。

 助けてもらおう。でも、俺も助けていこう。そう考えるのが一番だ。

 そんな会話をしながら歩いていたら、ユニコーン騎士団の屯所に着いた。

 おー、屯所というわりには結構見た目が綺麗だな。広い訓練場こそあるけど、見た目だけならちょっとした貴族の館っぽい。

 レンガ造りで、薄汚れてて、武骨でいかにも、って感じの建物を俺は予想していたよ。ユニコーン騎士団は見た目にも気を付けているんだなあ。


「こちらです、アシュレイ様。会議室までご案内いたします」


 中もきれいに整頓されてる。調度品なんかはさすがになかったけど、上流階級の館そのまんまだわ。

 アーサが案内してくれた会議室もかなり広い。王国の地図とか、作戦板とかはあるけど、貴族の食卓っぽいでっかいテーブルがある。お茶会でも開けそうな雰囲気だ。


「すぐに部隊長たちを呼んでまいります。しばらくお待ちいただけますか?」

「うん、大丈夫。ありがとう、アーサ」


 アーサが出ていくのを見送ってから、俺はテーブル横に椅子に腰かけた。

 部隊長かあ。美人ぞろいなんだろうなあ。

 会えるのが楽しみだけど、ちょっとびびっている自分もいる。気合を入れろ、元・遊び人! 女性に会えるのは最高に嬉しいイベントだろ!

 とはいっても、内心複雑になりながら、俺はアーサを待っていた。ヘタレとは言わないでいただきたい。

 まだ、朝からちょっと時間が経ったくらい。昼までは時間がある。そんな頃合いなので、窓から入る陽の光が心地よい。

 以前の俺だったら、昼寝しようぜ! なんて言って、ラザフォードたちを苦笑いさせただろうな。

 でも、今はお仕事お仕事。……復讐のことを忘れちゃあいけない。


「お待たせいたしました!」


 アーサと、女性が数人入ってきた。いよいよ、ご対面だ。

 あー、やっぱり美人多いわ。アーサほどじゃないけど、かなりイケる子ばっかりだ。

 気持ちの温度差が激しいけど、そこは勇者にまだ慣れきっていないということでお許しいただきたい。

 さて、会議を開くとして、どう話そうかな。

 って、考えていたら、なんだか目の前に影が差した。


「副団長、何をやっていた。遅いぞ!」


 アーサの叱りが飛んでいる。何事?

 俺は影の主を見て……、固まった。


「すみません、団長、ちょっと若いのに稽古をつけていたもんで……」

「アシュレ……、勇者様をお待たせするな。今日の予定は伝えてあっただろう」


 アーサが怒る先には、なんだかとんでもなく大きい女がいた。

 身長はアーサよりも頭二つほど高いし、体格で言えば、アーサよりも一回り大きいんじゃなかろうか。

 短く刈った赤毛と、日焼けした顔がなんとも特徴的。女性に使う言葉じゃないが、豪傑、って感じがする。


「まったく……。もういい、早く勇者様に名乗れ」

「へいへいっと」


 大女殿が、俺に向かって敬礼した。


「ユニコーン騎士団副団長のメルヴィナと申します! 勇者様にお会いできて、光栄であります!!」


 声もでけー。他のみんなは慣れているみたいだけど、俺は思わず耳をふさぎそうになったよ。


「よ、よろしく、メルヴィナさん」

「どうぞ、メルヴィナとお呼びください!」

「は、はい、メルヴィナ」


 この人、酒場で会ったら間違いなく逃げるわ。身の危険を感じるわ。酔ったら怖そう。


「それでは、勇者様、会議を行いましょう」


 アーサが声をかけてくれるまで、固まってた。すごいわ、インパクト大だわ。

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