後編 半年の片想い。
中学一年の時と三年の時に同じクラスだった、
俺とその子の関係はただのクラスメイトであり、
話した事すら殆ど無かった。
しかし少しずつ仕草などの細かい部分に、
俺は惹かれていっていた。
その子は結構おとなしい感じの子で、
喋ってる事すら余り聞いたことがない。
友達と喋っている時は明るく笑っているが、
それ以外の時は表情は滅多に変えない様な子だった。
かと言って暗い子でもなかった。
そういえば俺はその子の声を、
聞いた事すらなかったのかもしれない。
それくらいに無口でおとなしい子だった。
まあでもそれなりに密かにモテる子ではあった。
その子とのやりとりもやはりLINEが殆どだった。
初めてLINEを送った時の事は覚えていない。
恐らく前と同じ様に誤送信と偽って送ったのだろう。
受験生だというのにも関わらず、
数時間に渡ってLINEをする事もあった。
LINEでのその子は普段とは違い、
かなり明るくよく喋る子だった。
まあ普段とLINEやTwitterでの、
性格やテンションが違う事はよくある事だ。
そしてまたその子とも記憶にも残らないような、
会話を日々続けていた。
でもそれがまた心地良いのである。
時々俺はその子に恋人や好きな人の話題をあげる。
話を聞くに恐らくその子は年上の男性に、
恋をしているようだった。
時より年の差について悩んでいる様な、
そんな発言があったのを覚えている。
中間テストや期末テストの前になると、
その子は必ず一週間程携帯を触らない様になる。
勿論勉強に集中する為であろう。
最もその当時もまた学校に行っていない俺は、
テストの時期などは知らずに、
その子のTwitterでの「テストなので携帯見れません」
というツイートによってテストの時期を知る。
その一週間は勿論だが自分としてはかなり嫌であり、
それと同時にこの間に彼氏ができたらどうしよう、
という不安もあった。
その一週間が終わると俺はすぐその子にLINEを送る。
テストは上手くいったかとか、
次のテストも頑張ってねだとか、
そんな会話をしていたのだろう。
クリスマスイヴの日。
この日も俺はその子にLINEをした。
クリスマスに一人だという事を伝えながらも、
彼氏が居るのかを探りながらのLINEをした。
その子にまだ彼氏ができてない事を確認し、
今何をしているかを聞いた。
「塾の準備をしてるの」
そうその子は送ってきた。
どうやらイヴとクリスマスは、
夕方から塾があるらしい。
「だから夕方からは一人ではないから!笑」
なんて事も送ってきた。
一安心しながらも俺とその子は、
その日も数時間のLINEをした。
受験生には忙しい一月に入った。
最も俺には忙しくもなんともない。
出席日数も足らず学力も足りない為、
定時制高校に入る事が決まっていたからだ。
勉強などしなくても受かるのは確実だった。
この頃にはもう俺はその子に、
何気ない会話の中で何度も、
好きという事を分かりやすく伝えていた。
ちゃんとした告白でもないので、
受け入れるも断るもなかったが、
反応から大体告白しても駄目という事は、
分かっていた。
お正月の雰囲気がまだいっぱいに残っている、
一月の始めの頃の事だった。
その日も俺はその子と何気ないLINEを、
長時間に渡り続けていた。
ある時その子がそういえばと、
最初に付け加えてこう送ってきた。
「明日から受験終わるまで携帯触れないのよ」
僕は驚きながらも返信した。
「一回も?」
と俺が言うと、
「一回も」
とその子からのLINEが返ってきた。
受験が終わるまではまだ約二ヶ月程あった。
いつものパターンである。
テスト前になると携帯を触らないという、
いつものパターンであった。
しかし俺にはその二ヶ月という期間、
その子と会話をできないのはかなりのダメージであった。
勿論学校に行けば済む話なのかも知れないが、
数ヶ月行っていない学校に行く勇気は、
俺にはもうなかった。
できることならこのまま行かずに卒業したい。
そう考えすらしていた程だから。
その受験前最後の日は思う存分LINEをした。
俺の長く面白くもない話に、
その子は構ってくれていた。
そして夜も終わろうとしている頃であり、
話も途絶え途絶えになっている頃。
「そろそろバイバイね」
というその子からのLINEがきた。
そして俺は返信した。
「受験終わったらまた話しましょうや」
「うん!いいよ!」
最後に俺が受験を応援する様なLINEを送ると、
「ありがとう!頑張ってきますわ!」
という元気なLINEが返ってきた。
そして長いその子の居ない二ヶ月が始まったのだ。
その二ヶ月間は本当に全く記憶がない。
恐らく不登校らしく家に引きこもり、
つまらなすぎる生活をしてたのだろう。
唯一覚えているのは二月十日の事だ。
その子の私立高校受験の日。
私立は受験すらしない俺はその日も、
家に引きこもっていたが、
兄のある発言によって家の前に出た。
するとそこは一面雹だらけだった。
傘をさして少しだけ空の下に出てみると、
傘に打ち付ける雨なんかより大きい、
雹の打ち付ける音がした。
その子の受験が心配になった事も覚えている。
そして公立高校受験の日。
この日は私立の時とは違い、
勿論俺も受験へ向かう。
最も定時制高校で定員割れの為、
受かるのはほぼ確実だったが、
それでも少し不安と緊張があった。
でもその子は俺の数百倍は緊張と不安に、
襲われていたのだろう。
久々に俺の嫌いな中学校の学ランに、
袖を通し俺は家を出た。
鞄に関しては中学校の鞄は埃を被っていた為、
いつも使っている焦げ茶色の薄めのリュックで行った。
二十分程の時間をかけて駅に着くと、
そこには同じく受験に向かう、
中学の同級生で溢れていた。
俯きながら切符を買おうとすると、
二年生の時の担任の女性教師に声をかけられた。
ちゃんと皆が来ているかの確認の為のものだった。
俺を呼び寄せて持っていた名簿の、
俺の名前の欄にチェックを付けて、
女性教師は「頑張ってこいよ」と声をかけてきた。
頑張る事も殆どないのだが、
単純な俺は少し背中を押された感じだった。
たまに喋る程度の同級生数名に、
「久々だな」なんて感じで声をかけられ、
少しばかり会話をしてから、
切符を買い改札を通った。
ホームに上がりしばらく経ってから電車が来た。
空席はもう少なかった様な記憶がある。
俺はドアを入ってすぐの所で端に寄って、
座らず立って降車駅まで行く事にした。
降車駅に着き次の学校近くの駅までの、
各駅停車に乗り換えた。
その各駅停車では少なからず空席はあったが、
そこでも立ったまま降車駅まで行く事を決めた。
窓の外を眺めながらその子の事を思い出し、
自分の事以上に心配になった事を覚えている。
そんな事を考えていると学校近くの駅に着いた。
駅でトイレを済ませ少し長めの出口までの道を歩いた。
出口を出て学校までの三分程度の短い距離を、
少しの緊張を抱えながら歩いて行った。
数名の同じような受験生と一緒に、
俺は受験する高校の中に入って行った。
しかし俺以外は恐らく皆全日制を受験する人だろう。
校舎に入ってしばらく人が集まるまで廊下で、
壁に背を向けて並んで立っていた。
同じ歳くらいの制服の人が多かったが、
中にはお年寄りの女性もいた。
その後教室に入り独特なチャイムと共に、
受験が始まった。
定時制という事もあり問題は簡単だった。
まあ俺にはその簡単な問題さえ、
余り解けなかったのだが。
無事手ごたえもなくでも不安も余りない、
定時制高校受験が終わった。
誰にも目をくれる事なく駅まで向かい電車に乗った。
とにかく早く家に帰り早くこの、
嫌いな中学の学ランを脱ぎたかったのだ。
何事もなく地元の駅に着き、
何事もなく家に着いた。
学ランを真っ先に脱いでから、
俺が真っ先にした事は、
家に置きっ放しだった携帯で、
あの子にLINEを送る事だった。
「受験お疲れ様」
なんていうLINEを送ったのだと思う。
俺がLINEを送ったのは昼か昼前頃だったと思う。
それからその子の既読が付き、
約二ヶ月ぶりの返信が来たのは夕方頃だった。
「そっちもお疲れ様〜」
久々だねと俺が言うと久々だねと返してきた。
俺が自信を問うとその子は全然と返してきた。
次の日に面接がある事を伝えられ、
久々のその子との会話に興奮して、
もっといっぱい話したい欲を抑えて、
また応援してその日のLINEを終えた。
翌日面接を終えたその子に自信を問うと、
またその子は全然と返してきた。
俺が慣れないながらも励ましてから、
この二ヶ月間のお互いの話をしたりした。
その日はまた以前の様に長時間LINEをした。
数日が経った時の事だった。
俺はその子をデートに誘ったのだ。
実はこれまでに何度か誘っては断られていた。
この日も案の定笑いながら断られたのだが、
少しばかりいや結構状況が変わった。
俺が「何したらデートしてくれますか?」
と聞くとその子は少し悩みながらこう返信してきた。
「卒業式とその前日に学校に来たら考えてもいいよ」
一瞬の間に俺の中で嬉しさと迷いの感情が、
何度も繰り返されながらも、
嬉しさの感情を込めた返信をした。
そしてその後、
「卒業式とその前日に学校に来たら考えてもいいよ」
から「来たらデートしてあげる」
にまでなんとかこじつけた。
その後も数分話してその日のLINEを終えた。
布団に包まり俺は迷い悩み続けた。
もう卒業式には行かないと決めていた。
勿論前日も同様である。
ちなみに前日は予行練習の事だ。
そこから数日間迷い悩みながらも、
卒業式の前日であり予行練習の日を迎えた。
夜中の内に起き一通り心と体を落ち着かせ、
準備を済ませてから俺は、
もう着る予定のなかった嫌いな中学の学ランに、
袖を通し埃を被った中学の鞄を埃をはらって、
リュックの様に背負って俺は家のドアを開けた。
学校までの道のりは受験の時とは、
比べ物にならないくらいに緊張していた。
良い事なのか悪い事なのか、
その道のりの中で、
喋る程の同級生とは会う事はなかった。
学校に着き息を整えて教室に入った。
実に三、四ヶ月ぶりだった。
数名の生徒が俺の名前を呼び、
驚いた様な顔をして俺に声をかけてきた。
会話の内容は覚えていない。
大した話はしていなかったのだろう。
しばらく経つと俺に話かしてくる人は居なくなり、
完全に自分の居場所がなくなり、
孤立してしまっている事に気がついた。
しかしこれもこの二日を乗り切れば終わる。
そう心に語りかけた。
教室に入ってきた時辺りを見回しても、
まだその子の姿はなかったが、
しばらく経った頃知らない間に、
その子の姿が教室にあった。
チラチラその子の方を見ながらも、
俺への反応がない事を確認し、
担任の指示により廊下に並んだ。
廊下に並ぶとその子に声をかけれる、
位置までは来たもののかける勇気はなかった。
そして何よりその時のその子は、
背中からだけではあるが、
少し俺を避けている感じがした。
後にこの予感が的中する。
次の担任の指示により体育館に入り、
卒業式の予行練習が始まった。
内容は普通の卒業式の予行練習であり、
書く程の事でもないだろう。
長い予行練習を終えて教室に戻り、
担任による明日の本番の話を聞いた。
内容はやはり俺には覚えていない。
帰り道俺は鞄に入れてあった携帯を手に取り、
その子にLINEを送った。
「明日行けばデートだからね!」
なんていう内容だったと思う。
数分経ったところで
その子からの返信が来た。
「何の事だっけ?笑」
俺が突っ込みながらも改めて、
約束を確認するLINEを送った。
何度確認してもその子は少し笑いながらとぼける。
少しずつ状況が変わっていき、
少しずつ違和感が生まれ始めた。
どうやら本当に来るとは思っていなかったようだ。
そしてもう何度かそのやりとりをして、
少しずつ険悪なムードに包まれつつ俺は確認した。
「デートの話はなしですか?」
数分後その子からの返信がきた。
「うん、ごめん」
そこからも俺はしつこくねばり続けたが、
それは分かりやすく逆効果であり、
徐々にその子の口調も珍しく強くなっていった。
最終的には俺はその子に完全に嫌われていた。
いや元々嫌われていたのかもしれない。
俺のしつこさにどんどん口調が強くなっていく、
その子は最後にこう言った。
「私はあなたとは合わないと思う。」
「しつこいところとかも嫌い。」
「正直もうLINEもしたくない」
「絶対付き合えないから」
「バイバイ」
そう言ってその子は俺のLINEをブロックした。
Twitterのフォローも外された。
最悪の形で恋が終わってしまった。
心が痛すぎて布団に潜り、
夕方の内にいつの間にか寝ていた。
お腹が痛くなって起きた。
時間はまだ夜八時頃だった。
トイレに長い時間こもり痛さが引いてトイレを出た。
そしてまた布団に潜り寝れずに、
その子の事を考え続けた。
今思えば俺の悪い部分は大量にあったのだが、
当時はそれが分からなかったからだ。
しばらくの時間が経った頃。
俺は声を出して情けなく泣いていた。
ここ数年で一番に泣いていた。
どれくらい泣いていたのだろうか。
大分長い間泣いていた気がする。
泣き疲れて心が落ち着き出した頃俺は、
明日の卒業式には行かない事をようやく決めた。
無駄だと分かったからだ。
その後は長い時間をかけて寝た。
朝、その子と親しい女の子に、
「あの子に悪い事をしてしまった。」
「今日行けそうにないから代わりにごめんって言っておいてくれ、すまない。」
という情けないLINEを送った。
女の子はそれを了承してくれた。
そうして俺の中学生活は儚く幕を閉じた。
そしてその子との約半年間の恋も儚く幕を閉じた。
と思っていた。
二週間程が経った頃だろうか。
その謝罪があったからなのか、
フォローが外されていたその子のTwitter垢から、
再びフォローされたのだ。
そして数日間考えた後、
俺はその子にダイレクトメッセージを送った。
「二週間考えましたがやっぱり友達では居たいです。」
今考えると気持ち悪く女々しい内容だな。
数分後久々のその子からの返信が来た。
「私からフォローした時点で友達でしょ?」
「ごめんねあの時は言い過ぎた。」
嬉しくて声が出なかった。
ここには書いていないが俺は、
あの子に色々な迷惑をかけてきたそして嫌われた。
その末のこの言葉は俺を大きく救ってくれた。
数回やり取りをして、
携帯を変えLINEを変えた事を伝えられて、
「たまにしか返信できないけど」
とその子は言いながらLINEを交換した。
俺のその子への恋は二週間前に既に終わっていた。
それは結局は変わらない。
でも儚くはなかった。
それだけで良かった。
それで良いと思えた。
その後、相談にのってもらい、
また好きになりそうになったり。
その子に彼氏ができて嫉妬しながらも、
割り切ってスッキリしたり。
七年間好きだったあの子にも、
何気ない事をLINEで話したりしたのは、
また別のお話。
これが俺の二人のその子との七年と半年の片想い。
最後までご覧いただいた方が、
もしいらしたならばありがとうございます。
僕の人生二度目の連載小説であり、
僕の今まで書いた小説の中で、
一番長い作品になりました。
まさか自分が一万文字書く時が来るとは、
思っていませんでした。
そして七年の片想いよりも、
半年の片想いの方が長くなるとは。
期間と想いというのは当たり前ではありますが、
必ずしも比例はしないのかも知れませんね。
流行病もありますし、
何より今は寒い季節ですので、
風邪などひかれませんようにお気をつけください。
因みに僕はもう既に風邪をひいて、
鼻水が喉の痛みが止まりませんが。
評価感想宜しくお願い致します。m(_ _)m
お気に入りユーザの仕組みがよく分かりませんが、
そちらも良ければ是非お願いします。
Twitter→【@hizanosara_2525】




