前編 七年の片想い。
俺には昔小学二年生から中学三年生までの、
七年間片想いしていた人がいた。
小学二年生の頃、
俺は同じクラスだったその子に、
一目惚れとまでではないが、
三目惚れくらいの感じで好きになった。
その頃の記憶は既に薄まっているが、
二年生頃の僕とその子はそれなりに、
クラスメイトとして仲は良かったと思う。
三年生になりその子と僕は違うクラスになった。
同じ学校ですぐ近くに居るというのに、
違うクラスというだけで喋る事も、
もはや全くと言っていい程になくなった。
殆どの小学生はそういうものなのだと俺は思う。
しかし俺は喋らなくなってからも、
廊下で遠目に見つめていたり、
好きという気持ちは全く変わらなかった。
四年生になっても五年生になっても、
その心が遠く離れた関係は続いていた。
六年生の時もまた俺とその子は違うクラスだった。
実に小学校と中学校で同じ学校に通っていた、
俺とその子が同じクラスになったのは、
小学二年生の時だけでそれ以降、
中学生になって大幅にクラスが増えた事もあり、
同じクラスになる事はなかった。
それでも俺はその子をずっと好きだった。
先程全くと言っていい程に喋らなかった、
と俺は言っていたが恐らくは、
俺が覚えていないだけで俺とその子は、
そのクラスが分かれてからの期間も、
数回程は喋っていたのだと思う。
記憶に残っているものをあげるとすると、
小学六年生の時の出来事で、
一度程俺とその子が喋ったのを覚えている。
四時間目が終わって給食を待っている時間か、
給食終わりの休憩時間かの事だったと思う。
確か机を向かい合わせにしていた記憶があるからだ。
そうやって向かい合わせにする時は、
給食の時くらいしかなかったからな。
その時俺は同じクラスの友人と、
自分の机に座り喋り合っていた。
喋っていた内容など勿論覚えていない。
俺の席は廊下側の一番前の席だった。
だからこそ俺はその子と喋る事が出来たのだ。
友人と喋っていると
向かい合わせになって廊下側に背を向けた俺に、
背後の廊下から俺の名前を呼ぶ女の子の声がした。
振り向くと俺の想いを寄せているその子が立っていた。
「◯◯ちゃんにこれ渡して」
そう言いながらその子が手を突き出して、
渡してきたものは縄跳びだった。
俺と同じクラスの子に借りていたのだろう。
俺はそれに返事をしてその子が立ち去ると同時に、
俺は同じクラスの子に縄跳びを返しに行った。
なんともない会話だった。
その子はその用事の為に話しかけただけだろう。
でもそれでも俺は凄く嬉しく感じたのを、
今でも覚えている。
先程言った事だが俺は先程こう言った。
”恐らくは俺が覚えていないだけで俺とその子は、
そのクラスが分かれてからの期間も、
数回程は喋っていたのだと思う“と。
何故覚えていないのにクラスが分かれてからも、
喋っていたのだと思うと言えたかというと、
その「◯◯ちゃんにこれ渡して」と、
その子が俺の名前を呼び俺に話しかけた時の、
感じが数年ぶりの会話の雰囲気ではなかった。
そして俺の反応も嬉しくは感じていたが、
そこまでの大袈裟なものでもなかったからだ。
俺の記憶に残っているようなその子との、
小学生時代の二年生以降の会話は、
そのくらいであろう。
中学に上がって毎年クラス発表の時、
その子の名前を探しても、
俺と同じクラスにその子の名前は、
三年間ずっとなかった。
人数が大幅に増えた事もあり、
まあ一番の原因は俺が余り学校に、
行かなくなった事もあり、
俺とその子が喋る事や関わる事は更になくなった。
学校に行かなくなった理由はここでは伏せておこう。
大したものではないし話にもならないような話だし。
中学一年生か二年生の時だ。
その子が携帯を買ってもらったのか、
LINEを始めたようだった。
その当時俺は既に携帯を持っており、
LINEも既にしていた。
恐らくその子がLINEを始めた事を知ったのは、
小学校の同級生で作ったグループLINEに、
その子が入ったからみたいな理由だと思う。
詳しくは覚えていないし覚える程の事でもない。
そこから俺が友達追加をして、
少しずつではあるものの、
LINEでの会話をするようになっていった。
本当に少しずつであり、
数ヶ月会話をしない事も結構あるくらいだった。
細かい会話は覚えていない。
しかし俺は記憶力が悪いのだろうか。
ここまででどれ程“覚えていない”という、
言葉を発しただろうか。
まあそんな事は置いておこうか。
一つ覚えているのは、
俺がその子と喋りたいと思い、
しかし数ヶ月ぶりだし喋る内容がない時、
間違えて通話をかけただとか、
間違えてスタンプを送ってしまっただとかの、
誤送信を偽って話しかけていた事が多かった。
そこからは記憶力の悪い俺の記憶には、
残らないくらいの事をたまに喋る関係が続いた。
依然LINE以外で喋る事はなかった。
中学二年生の夏頃だったかのある日、
俺はその子に告白する事を決意した。
俺はその子にLINEを送った。
「話があるんだけどいい?」
みたいなLINEを恐らく俺は送った。
すると思ったより早くに既読が付きその子からの、
「なに?」という返信がきた。
告白すると決めていた俺だったが、
思った以上の返信の早さに、
急に告白に対して怖気付いて手が震えだし、
俺はその子にこんなLINEを送った。
「俺がもし告白したらOKする?」
という内容のLINEだった。
今思うと本当に情けないよ。
その子は「何で?」と訊いてきたので、
「なんとなく皆んなに訊いてるんだ」と、
これまた情けない返信を送った。
その後その子は「告白じゃないよね?笑」なんて事を、
訊いた後に「多分付き合うと思うよ笑」と返してきた。
当時の俺はこの返信に対し少し喜んだりもしていたが、
この状況において告白じゃないという、
前置きもしておいて、
大体の人間は気を使い思っていなくても、
断るという事は出来ないだろう。
それにその子の言った、
“多分”という言葉がそれを一番に物語っている。
それからも記憶にも残らないような、
LINEでの掛け合いが続いていた。
当時の俺はそれに少し満足してる部分もあったが、
卒業までには告白しないとなとは思っていた。
途中その子に彼氏ができて凹んだりもしたが、
その後すぐに別れてしまったらしい。
そこからまた時は経ち中学三年生の夏休み。
俺はその時もまた学校にはあまり行ってなかったが、
同じクラスの男女に花火に誘われた。
クラスの一軍男女に紛れて、
一人不登校の三軍の俺がいる光景は、
今思うと少し変な光景だっただろう。
一緒に花火をした男女は十人弱くらいだったと思う。
その殆どの人に恋人が居たのだ。
居ない人は俺以外は二人程度だった。
その時恋人が居る皆が羨ましくなり、
恋人が居ない俺に恋人が欲しいという、
感情が無性に湧き出してきた。
そして花火が終わり家に帰り、
その勢いのまま俺はLINEで、
その子に告白する事にした。
状況からして振られる事は目に見えていたが、
今告白できなければずっとできないだろうと、
俺は直感で思い気持ちだけは伝えておこう。
そう思って前のようにはならないよう心で誓って、
俺はその子にLINEを送った。
切り出し方は前と同じ様なものだったと思う。
「話があるんだけどいい?」
なんていう同じ切り出し方だろう。
その子の了承の返信を受け取り俺はその子に訊いた。
「今から告白してもいいですか?」
妙な切り口だなと今になって思う。
その時俺は勢いだけで告白した為、
文面を考えておらず少々の、
パニック状態にでもなっていたのかもしれない。
その子は困惑しながらも了承してくれた。
LINEではなく目の前で告白し、
俺がその子に今の様な事を言っていたら、
その子は眉を困らせながら少し笑って、
了承してくれていたのだろう。
そんなくらいにその子のその時の了承の返信には、
分かりやすく感情が見えていた。
「少し気持ち悪いかもだけど」
という前置きをした俺に、
その子は「全然気持ち悪くないから大丈夫だよ」
と返してくれた。
「断られるのは分かってるけど」
という前置きに更にダサい前置きを付け加えて、
そして俺はついにその子に告白する。
約七年越しの告白を。
「小学二年生の頃からずっと好きでした。」
「付き合ってください」
数秒後予想通りの答えがその子から返ってきた。
でもそれで良かったんだ。
とにかくその時の俺は気持ちを伝えたかったから。
その後布団に潜った後も、
俺は不思議と振られた悲しみなどはなかった。
それ以上に気持ちを伝えれた嬉しさの方が、
断然優っていた。
スッキリした俺はぐっすりと眠りについた。
そこからもしばらくの間俺は、
その子の事が好きだった。
振られたくらいで無くなる恋じゃなかった。
しかし以前と少し好きの感情は違った。
それは告白出来た事と振られた事があったからだろう。
だからこそその後その子に新しい彼氏ができても、
俺はずっとその子を好きだった。
それにしてもやっぱりその子はモテてたんだな。
しかしそれと同時に俺は、
同じクラスのある女の子の事も、
気になってきていた。
話は戻るがそれからその子はその新しい彼氏とも、
結構早めに別れてしまったらしい。
その別れた時点でも確か俺は、
その子が好きだったと思う。
しかしある日の出来事だった。
俺はふとその子のTwitterを見ていて、
その子の写真を見つけた。
いつもなら可愛いなみたいな感情が湧くのだが、
その時の俺にはそんな感情が湧かなかった。
その時俺は気づいてしまった。
あ、俺もうこの子の事好きじゃないのかも。
恋というのは不思議なもので、
七年間ずっと好きでも、
冷める時は一瞬だったりするという事を、
俺はこの瞬間知ってしまった。
勿論嫌いになった訳ではない。
冷めてしまった詳しい理由は自分でも分からないが、
先程言った“同じクラスのある女の子”の事の方に、
気になるという感情が多く芽生えてしまい、
その子に対する恋心を忘れてしまったのかもしれない。
そんな風に俺の初恋であり、
七年間に渡る片想いは幕を閉じたのだ。
そしてそれと同時に俺の新しい恋が始まった。
この小説は前後編です。
後編もご覧くださいm(_ _)m




