エピローグ
‐エピローグ‐
体がうまく動かない。目も耳もぼんやりした感じだ。
もしかして、また事故にあったんだろうか……。
声を上げようとすると、「うぅぅ。」と思いの外、高いうめき声が出た。
舌がうまく回らない。運動機能に障害が出たんだろうか。だとしたら最悪だ。
いったい何があったっていうんだ。
たしか病院から退院する時、ケイコちゃんのSPの人が、マスコミから見張りのバイトを受けているらしい人達をブロックしている間に、地下の駐車場まで移動したんだ。
そこまでする必要あるのか疑問だったけど、囮の高級車を先に出すとマスコミがそれを取り囲みながら病院の敷地を出ていったの見て、ひどく納得したものだった。
ボクは、カムフラージュのための軽自動車にケイコちゃんと一緒に乗せられると、運転手の人が別荘に向かうって言ってたな。不安そうなケイコちゃんの手を握ると、ぎゅっと握り返して微笑んでくれた。その途中で、パパラッチに気付かれたんだ。運転手の人が「巻きます。」って言ったのが、映画みたいで格好よかったな。
その後は、そうだ。トンネルに差し掛かった時だった。ケイコちゃんが窓の外を見たまま固まっていたんだ。何を見たのかとケイコちゃん側の窓を見るとストライプ柄のピエロみたいな感じの人が車の横に並んで走ってたんだ。ボクがビビって声を上げちゃって、運転手の人もそれに気付いた。直後に、体が振り回されるような感じがあって、一瞬、パパラッチの車が正面に見えた気がする。
ああ。やっぱり事故ったんだ。それも、ボクのせいみたいなものじゃないか。……ケイコちゃんは、――運転手の人も無事だろうか。無事だといいな。
あのピエロみたいなヤツも呪いのせいなのかな。だとしたらお払いとかして貰わないと。思えばろくなことがなかった気がする。――駄目だ。なんだろ。泣きそうになってきた。
「……うぅぅあああぁぁー!」
赤ちゃんみたいに泣いてしまった。いろいろ漏らした感覚もある。最悪だ。
「あらあら。どうしたの私の可愛い坊や――」
誰だ? 女の人。外人?
日本語じゃない。でも、言葉の意味はわかる。「おしりが汚れちゃったのね。」と、女の人がボクを服を脱がしてきた。恥ずかしい。やめてくれ。しょうがないのかもしれないけど、まだ心の準備が。
延ばした自分の手をぼんやりと見ると、思考が止まる思いがした。小さい。これはアレだろうか。ボクは赤ちゃんになってるのかな。
うん。これは、きっと夢だ。そうに違いない。
「ねー、居るー? あら、おしめ? 大変そうね。手伝う?」
「ありがとう。もう終わるとこだから大丈夫よ。それより、これ洗ってくるから少しの間、この子のこと見ててもらえる?」
「もちろんよ。この子も喜ぶわ。坊やの名前は決まった?」
「それがまだなのよ。あの人ったら、まだ悩んでて……」
いつの間にか女の人が増えていた。そんなやりとりをするとボクのおしめを変えた方が「それじゃ、お願いね」と言い残してそのまま部屋を出ていったみたいだ。
後から来た女の人がボクの顔を覗き込むようにすると、胸元に何かを抱えているように見えた。
「ほーら坊や、うちの“スイーツ”ちゃんよ。スイーツちゃんもご挨拶ちまちょうねー」
後から来た女の人は、声音を変えた赤ちゃん言葉で「こんにちはー!」とか「はじめまちてー!」とボクに語り掛けてきていた。
そんなことよりもボクは、ぼやけた視界のなかで彼女が胸に抱いている存在から目が離せなかった。
きっと、ほっとして微笑んだその顔が『また会えたね。』そう言っているように思えたからだ。
‐おわり‐
ここまでつき合っていただきありがとうございました。
本当は、一話投稿した時点で先走ったと後悔して書き直そうと思っていました。
そこにブックマーク1件があることに気づいて、書き上げなくてはいけないと思うようになりました。
つたない内容ですが、想定していた部分はなんとか書き上げることができたと思います。
真面目(?)な内容も書いてはいるのですが、筆が進まずお目見えする日がくるのかわかりません。
今後があれば、今回の経験を励みにしたいと思います。




