第八話
雷、淡路島に降り立つ
――三柱の邂逅、福神の胎動
北天の空が裂ける島の空に、
突如として“縦に走る雷”が落ちた。
それは天界の雷ではない。
人界の雷でもない。武神が降り立つための“天の裂け目”。
恵比寿は海辺でその光を見上げ、
大黒天は岩屋の影から静かに目を細めた。
潮が震え、
大地が唸り、
空気が鋭く張り詰める。
恵比寿は呟いた。
「……来る。」
大黒天は頷いた。
「第三の柱だ。」
雷の中から現れた影雷光が収まったとき、そこに立っていたのは――炎の鎧をまとい、
宝棒を肩に担ぎ、
背に宝塔を輝かせた武神。
毘沙門天。その足元の砂は、
熱で黒く焦げていた。
恵比寿は思わず息を呑んだ。
「……強い。」
大黒天は静かに言った。
「あれは“守るために戦う者”。
怒りではなく、覚悟の炎だ。」
武神、二柱を見据える毘沙門天はゆっくりと歩み出し、
恵比寿と大黒天の前に立った。
その目は鋭く、
しかし深い慈悲を宿していた。「海の子、恵比寿。」
恵比寿は驚いた。
「僕の名を……?」
「海が教えてくれた。
お前は海の孤独を越えた者。」
次に大黒天へ視線を向ける。
「そして、大地の慈悲を背負う者。」
大黒天は微笑んだ。
「お前もまた、孤独を越えたのだな。」
毘沙門天は頷いた。
「我ら三柱、それぞれの孤独を越え、ここに集った。
三柱の力が共鳴する恵比寿の背に潮の光が揺れ、
大黒天の袋から豊穣の香りが漂い、
毘沙門天の鎧が雷を纏う。
三つの力が交わると、
島の空に七色の光が走った。海が波を立て、大地が震え、
空が雷を鳴らす。
恵比寿は胸の奥が熱くなるのを感じた。
「これが……三柱が揃った力……」大黒天は静かに言った。
「まだ七柱のうち三つ。だが、すでに世界が動き始めている。」
毘沙門天は宝棒を地に突き立てた。
「七つの福が揃う前に、“影”が動き出す。」
恵比寿は眉をひそめた。「影……?」
毘沙門天は島の山の方角を見つめた。
「無福王。
七柱が揃うことを恐れる存在。」
大黒天は低く呟いた。
「あれが動けば、世界は再び欠乏と争いに沈む。」
恵比寿は拳を握った。
「じゃあ……僕たちが止める。」
毘沙門天は微笑んだ。
「その意気だ、海の子。」
三柱、国生みの丘へ毘沙門天は空を見上げた。
「残る四柱も、この島へ向かっている。」
恵比寿は潮風を受けながら言った。
「僕たち三人で、迎えに行こう。」
大黒天は袋を背負い直し、
毘沙門天は宝塔を輝かせ、
恵比寿は海の光を背負った。
三柱は並んで歩き出す。
向かう先は――
国生みの丘。
七柱が揃う“始まりの場所”




