第2章〈機械じかけの金糸雀〉⑹
諸事情(やる気の問題)でエタっていたが、再度投稿開始。
やはり継続投稿できる人たちは素晴らしいモチベーションを持っていると感心しました。
初めに、光を失った。
両手で年を数えられなくなった頃だろうか、ある日から段々と視界が曇り、頭をぶつけることが多くなった。
杖をついて歩くようになり、出歩くことは少なくなった。
だが、それでも彼女は両親の愛に育まれ、幸せに生きてきた。
次に呼吸を失った。
病気だった、文献には記録されているものの、その治し方は既に魔法都市で失われて久しく、
治すにはサイボーグ手術が必須なのは明白だった。
両親は禁忌に触れることも厭わず、アンダーズと取引を行った。
幸い富豪だった彼らは、サイボーグ手術を受けさせることで、娘の呼吸を蘇らせることができた。
彼女は自分の両親の愛に感謝し、自分は幸せ者だと感じていた。
最後に、両親を失った。
大掃討、それが彼女の全てを奪った。
彼女を生かす為、アンダーズから埋め込まれた人口肺。
それを理由に両親は処刑台に上がらされ、全ての財産を奪われた。
彼女が生きていたのは、定期の人口肺のメンテナンスの為、
アンダーズの元を訪れていたという偶然によるもの。
幾日も目を真っ赤に腫らして泣き叫び、世界を、騎士団を呪った。
それでも、彼女は自分が不幸だとは思わなかった。
復讐する相手がいることと、それを成し遂げる手段があることを神に感謝した。
視覚連動型、対弓兵独立狙撃支援義眼ef-078。
それが、カナリアというフレーム使いを生み出したこの世界の理だった。