第2章〈機械じかけの金糸雀〉⑺
大掃討。
歴史を僅かにでも学んだことがあるなら、この言葉を知らないものはいない。
およそ10年ほど前に行われた騎士団による大規模な粛清。
表向きの理由は重罪とされる機械・科学の研究を行う者たちへの一斉取締りだが、
実のところアンダーズの持つ資源を狙い撃ちにしたジェノサイドというのが真相だ。
この虐殺でアンダーズの人間の約7割、20万にも及ぶ命が失われたここ数百年の間では類を見ないほどの大虐殺だった。
また、彼女の親ように裏でアンダーズと取引をしていた人々も大量に殺されたとされている。
それ以来、どちらもギリギリの関係を保っていた均衡は崩れ、アンダーズで生き残った者達は徹底的な武装化を推し進めた。
今ではあらゆる地域、場所でアンダーズと騎士団が小競り合いを繰り返しており、平和への糸口さえつかめていないのが実情だ。
そんなご時世だ、少年少女のフレーム使いがいてもおかしくはない。
だが、たとえそうだったとしても、彼女の口から語られる言葉はあまりにも重かった。
「そうして、私は両親と引き換えにこの目を手に入れたわけ」
そう言って彼女は自分の髪をかきあげ上げて俺にその目を見せた。
青と緑に発色する眼球、定期的に明滅を繰り返して心臓の鼓動のように瞬くそれは、如何に鈍感な人物であっても、人ならざるものの目であることを理解させるだけの説得力を持っていた。
「その目が……君にあの力を?」
一言だけ、だが確信に触れる質問をする。
アーチャーの放った矢を撃ち落とした神業は、果たしてその目によるものなのか……
俺はそれを問いかけていた。
「えぇ、そうよ」
以外とあっさりと答えが返ってくる。
「この目はあらゆる科学的なセンサーを搭載しているの、それを私のレールガンと連動させてるわけ、特に高速で飛来する物体とかには即座に反応するよう作られてる。元々はアーチャーを狩る為のフレームですもの」
ペラペラと自分の情報を話す姿は、拍子抜けというか、さっきまで大事な秘密は守れとか言ってた人物と同じようには思えない。
「その目で、アーチャーの放った矢を見て打ち落す判断ができるわけか、凄いな」
素直に感心する、あんな技、人類最強と謳われる鋼魔級の騎士でもできるかどうか……
「それは、ちょっと違うわね」彼女が訂正する。
「目で見て判断するわけじゃないわ、目が判断した結果を私に伝えるのよ。特にアーチャーの矢なんて一々迎撃の確認なんてしていられないでしょう?危険物については先に対処してから結果だけが残るのよ」
「人間だってそうよ、危険な人間かどうかは大体この目で判断がつくの」
「武器は持っているか?次の行動に危険な因子は含まれているか?体温の変化から嘘をついていないか?表情は攻撃的か?冷静か?そう言った情報をぜーんぶまとめて判断してくれるわけ」
「いいのか?そんな情報を見ず知らずの俺に話して」
踏み込んではいけない領域近くまで聞いてしまった気がして若干不安になる。
「普通だったら話さないでしょうけど、これでチャラってことにしておく。それに……」
そして彼女はニヤリと笑って。
「それに貴方は正直者みたいだし、隠し事するのも気がひけるからね」
正直者?……あ、そういうことか。
「私と出会ったあの時から、あなたはこの目に試されていたのよ、一言でも嘘をついたら、一瞬でも敵意を見せたら、私のことは絶対に話さないつもりだった」
「……でも」
呆れたような、笑うような、皮肉の笑みを浮かべたまま彼女は続ける。
「貴方、こっちが呆れるぐらいの、お人好しだったんですもの」
次はなるべく早く投稿できるようモチベーションを上げていきたい。




