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Another World  作者: 電話
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序章

小さい子供が道路に転がっていったボールを取りに行くために道路に飛び出してしまい、車に引かれそうになる。そこで正義感溢れる少年少女がこどもをかばい死んでしまうというストーリーはこの世界に五万とある。



そのストーリーでは大抵その兄弟姉妹がその悲しみを糧に成長していく物語が形成されていくだろう。



しかし、もしその正義感溢れる少年少女が助かってしまったら。生への異常な執着があっために。兄弟姉妹より主人公としての素質が上であったために。その場面を回避するための人外の能力をその場で身につけたために。いや、理由はなんだっていい。



その場合その世界はどうなるのだろうか。本来そこで死ぬという運命が確定した人物が生きてしまったとき。つまり本来100%起こりえないことが起こってしまったとき、因果律が異常に捻じ曲がってしまうのである。その捻じ曲がってしまった因果律を正常にするため、世界はこう決断せざるを得ないだろう。


そいつを世界からはじき出し、世界を、因果律を正常に保つ。世界を元のあるべき世界へ戻す。



そう。因果律を捻じ曲げ多大な影響を及ぼされるよりはたった一人の存在をその死ぬべきタイミングできちんと死んだことにしてしまえば、因果律に及ぶ影響は軽減される。



時は2020年。丁度東京オリンピックが開催されている、そんな時期である。その世界の神と呼ばれるものはその異常な事態をすぐさま察知した。神には未来を見る力がある。そして何が契機かはわからないがこの本来起こりえないことが多発していた。神が過去に見た未来とは別の方向に世界は動こうとしていた。



「なぜこいつもこいつも、皆このタイミングで死なないのだ。それではこいつが死を契機に発生させる多大な経済効果が生まれなくなってしまう。そいつがそこで死ななければその後、そいつの弟が伝説のプロ野球選手になる大きな原動力が……」



焦る神をあざ笑うかのようにその時死ぬはずであった人々が次々と死を回避しているのだ。



本来、数百年に1度起こるか、起こらないかの現象「SURVIVE」、つまりそのタイミングで死ななければいけないものが「生き残る」という現象がこの2020年では多発していたのだ。



本来では神も感知できぬほどすぐさまにこの世界がその人物を排除するため、因果律が捻じ曲がったことはない。しかしもしその事態が世界が対処し得るキャパシティをはるかに超えた度合いで起こったら。



世界は滅亡する。



神は焦った。それだけは避けなければならない。自分がみた未来に繋がらない。あと五年後。それが神が見れる最大の未来である。なぜ五年後までしかみれないのか。それは今の神の任期が2025年までだからである。



しかしいつも見える未来が今は見えない。神は決断する。SURVIVE現象による「生き残った」ものをこの世界から排除することを。



「だがいいのか、おれの一存でこの者たちを消していいのか……。一人なら隠し通すことは容易であったがこの人数では……。あ!!!!!」



神は名案が思いついたかのように何かを想像し、創り始めた。それは本来神がしてはいけない行為。消されてしまう人物が生き残れる、この世界とは別の世界を作り上げる行為。そして数時間が経過し、




「……出来た。」



神は別の次元に出来た新しい世界を見て安堵の表情を浮かべた。そしてSURVIVEへの対処を開始したのだ。



新世界Another World。本来死ぬはずであった、そしてそれを回避してしまうほどの力をもってしまった人が「もし」生き残ってしまったら。そんな人物が集められた世界。



神が創造したAnother Worldの未来は今の神であっても、そして次の神であっても余地することはできない。たとえ予測することができたとしてもそんなことは無意味なのである。



Another Worldには確定した未来を覆すことができる人物たちしかいないのだから。



2020年。この世界から突如として1千万人の人々が姿を消した。

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