闇ギルドVS爆炎の騎士 ②
「ナキエル! 無事か?」
「はい。ラウルさん!!」
《爆炎の騎士》ラウルは、自分の庇護下にあるナキエルに声をかけながら、前を睨みつけている。
夜中、のんびりと過ごしていた所、ラウルは襲撃に合った。この世界にやってきて、まだ少ししか経っていないラウルは、何故このような事態になっているのかわからない。
一応、リアはナキエルは闇ギルド所属などというそういう最低限の情報はラウルに与えている。しかし、あえて闇ギルドが狙っているので注意するようにといった忠告はしなかった。忠告せずに死ぬのなら、それまでだったというそれだけなのだから。
ラウルに向かってとびかかるのは、無数の影だ。
リアほど隠密行動に長けているとは言えないが、音もなく現れる集団たち。それにラウルはどうにか対処をする。
レベルが150あり、それなりのスペックを持ち合わせているからこそ未熟な身ながら、それだけの行動を起こす事が出来る。
《超越者》のスペックがあるからこそ、こうして、対処することが出来る。だけど、《超越者》としてこの世界に落ちてきたからこそ、ラウルは厄介事に巻き込まれている。
「こいつらは……っ」
「私のいた組織の人たちみたいです……ごめんなさい。ラウルさん、ご迷惑をかけてしまい」
ラウルは対処は出来ている。だけど、殺しはしていない。敵を殺してもいない状況で、自分の庇護下にある少女と会話を交わすなんて本来すべきではない。
そんな風に、殺さなかったからこそ、
「確保」
倒れたふりをしていた闇ギルドの一員にナキエルを確保されてしまうのだ。
「なっ、待て! ナキエル!!」
「ラ、ラウルさん!!」
その様子はさながら引き裂かれる最愛の恋人同士のようである。闇ギルドのメンバーたちは、ラウルを殺す事は現状難しいと考えたのだろう。とりあえず今出来る事を……と考えた結果、裏切者の確保を優先させ、離脱したといった所だろう。
ラウルは闇ギルドのメンバーたちにとびかかられ、ナキエルを追いかける事は出来なかった。闇ギルドのメンバーたちは裏切者を確保出来、ラウルを足止め出来たからだろうかその後姿を消した。そして、その場に残るのは呆然としたラウルと、
(うわー、やっぱり甘いね。最初に闇ギルドのメンバー殺せたらよかったのに。そこで殺しとけばナキエルさらわれる事もなかったのに。やっぱり元地球人として殺すのは躊躇われたのかな。でもそんなこと言っていたら大切な人がどんどん死んでいくんだけど。それにしても呆然としすぎでしょ。ナキエルは裏切者だから拷問とかこれからされるかもしれないのにさ)
様子をのんびりと見守っていたリアである。
リア・アルナスは、《爆炎の騎士》ラウルがどのように対処するのかを見ていた。見ていたうえで感じたのは、この友人はこの世界で生きていくのは難しいという事である。
(あまりにも甘い。殺す覚悟を持たなきゃ殺されるって事を理解していない。命が軽いこの世界において、襲ってきた奴を殺そうがどうこう言われる事もないんだから殺せばいいのに)
呆然としているラウルを、リアは見ている。此処で声をかける気は一切ない。なぜなら、これはラウルがこの世界で生きていけるのか試すという意味があるから。
「ギ、ギルドマスターに連絡を……」
《超越者》というこの世界で最上位の位置に居ながらも他力本願なラウル。ふらふらと動き出そうとするラウル。
(うーん、お義父さんの助けを借りては意味がないんだよ。ラウル。ラウルが《爆炎の騎士》の姿で、《超越者》としてこの世界に落ちてきたのではなければ……、幼子の姿だったりしたらまた別だっただろうけど、今のラウルは自分の力ですべてを解決する事を覚えなきゃならない。《超越者》であり、ギルドの高ランク者が、他人の力をあてにしているというのは、あまりにも周りに示しているとギルドが嘗められちゃうし)
リアは、元同郷の友人相手だろうが全く容赦がない。《超越者》である存在がこのような甘えた状況にあることをリアは許さない。
レベルがゲームにおいて150のカンストにまで行っているのだから、ラウルには強さはある。ないのは、この世界で生きていく覚悟。それを無理やりでも身に着けてほしいなーと考えているリアなのだが、ラウルを見ながら色々考えている。
(お義父さんは自分が面倒を見ている存在なのだから自分で何とかしろっていうだろうけど、突き放されて自分でどうにかしなきゃいけない状況でラウルがどう動くかだよね。お義父さんがナキエルの所属していた闇ギルドの場所だけでもラウルに言ったとして、一人でナキエルのために動こうと出来るか。それとも闇ギルドなんて地球育ちのラウルにとってみれば恐ろしい存在相手に立ち向かえないと震えて動かないか……。力があるのだから取り返したいなら取り返せばいいって話だけど、今の様子を見ていると動けない可能性もあるよね。その場合は、どうしようかな)
リアはギルドマスターの元へと駆け出していくラウルをひっそりと追いかけながらそんなことを考えるのであった。




