ハーレム主人公の観察記録 2
さて、今日も今日とてリア・アルナスは無害な生徒を装い、いつも通り学園に通っていた。
《ギルド最高ランク所持者》にして、《超越者》、誰もが通り名を知っているような怪物――《姿なき英雄》がこんな場所に平然と存在していることは普通に考えておかしいことである。
たかが、《ギルドランクA》を所持している、ティアルク・ルミアネスの存在でさえ、騒がしくなるような学園だ。そこでもっと強者が存在しているなんて冗談みたいな話である。
自分の実力を隠しきれていないティアルク・ルミアネスは、生徒会や友人たちからも「何者なのだろう」といった目を向けられている。
本来学園に通う必要性の全くないほどの実力者が、学園に通っているということはそれだけのことなのだ。
「ティアルク・ルミアネス、お前は……」
さて、相変わらず《何人もその存在を知りえない》を使い、学園内をこそこと動き回っているリアはある現場を目撃した。
それは、生徒会長であるマルスがティアルクと対峙している場面である。
ティアルク・ルミアネスがこの学園に入学して、まだ一学期しか時間が経過していないというのにもかかわらず詰めの甘すぎる彼はすっかりマルスの警戒対象になっていたのであった。
(そりゃあ、よっぽどのバカじゃなければハーレム主人公が普通の生徒ではないってわかるよね。ルミさんとゲンさんの弟子だってばれたら普通の生活ができないからって隠しているなら本当、徹底的にやればいいのに。この学園の生徒は基本的に将来のエリート候補生だし、そんなつぎはぎだらけの隠蔽で隠せるわけがないのに)
まぁ、いうなればリアは臆病すぎるが故にすべてを疑い、油断をしていない。
それに対してティアルクは自分の力をどこか過信しているが故に、周りを疑わず油断ばかりがあるのだろう。
そこら辺は、運でレベルを上げてしまったからこその弊害といえるだろうか。
それにしてもリアにあれだけ徹底的にやられておきながらも、いまだに過信しているというのにリアはあきれてしまう。
「生徒会長さん、なんですか?」
自分がどういう疑いをかけられているか、などとそんなこと一切考えていないのだろう、ティアルクののんきな声が響く。
(本当に能天気すぎるなぁ。なんでああいう主人公属性のある存在って楽観的だったりするんだろうか。うーん、謎)
相変わらず脳内ではおしゃべりなリアは、マルスとティアルクを見ながらそんなことを考える。もちろん、二人はリアの存在には一切気づいてさえもいない。
「お前は、何者なんだ?」
「何者って?」
「お前はおかしい。レベルが31にしてはおかしいのだ。あえて実力を隠しているように見える。最初はどこかの諜報員かとも思ったが、それにしては……警戒心が薄すぎる」
そんなマルスの言葉を聞きながらすべてを知っているリアはのんきな思考である。
(あー、まぁ、この学園重要な機関だしね。諜報員的存在もいるだろうね。私も何人かみたし。でもさすがにプロのそういう存在については筋肉会長も気づけないだろうしなー。でもあれだね、ハーレム主人公は嘘とかつけないだろうし、諜報員とか無理だよね!)
ちなみに、そんな感想を持っているリアは素で毎日諜報員のような行動をしているわけである。誰も聞いていないだろうとこぼした言葉をリアが聞き、問題がありそうなものならばギルドマスターに報告したり、自分で対処したりしているのだ。
マルスはこの学園によからぬことをしようとティアルクがいるのではないかという懸念もあるようだが、平穏な学園生活を求めているリアがこの学園にいる限りこの学園の平和は崩されることがないことは確実である。
もっともマルスは《姿無き英雄》がこの学園にいるなどと欠片も考えていないことだろうが。
「諜報員なんてっ、僕は……」
傷ついた顔をするティアルク。
「ならば、お前はなんだ」
「それは――」
言いよどむティアルク。しかしそんなティアルクの様子を見ながらマルスはティアルクは学園を害そうとここにいるわけではないというのはわかるのだろう。
「……言いたくないのか。何か事情があるのだろう。お前は、この学園を害す気はないんだな?」
「それは、当たり前です!」
「ふむ、害すというのならばこの筋肉で制裁を与えなければならなかったところだが、それならばよいだろう」
結局ティアルクが言いたくなさそうなために、そこまで問い詰めるのをやめたらしい。ティアルクがあまりにも迂闊で、油断をしすぎていて、警戒心が薄れたのもあるだろうが。
(うーん、そこまでしてハーレム主人公は平穏な生活をしたいのかな? だったらもっと徹底的に平凡を極めればよかったのに。下手に手を抜くのが苦手で、ハーレム作って目立つからアレなんだよね)
リア、ティアルクにあきれた目を向ける。ティアルクが去り、残されたマルスが「あいつは何者なのだろうか」とつぶやくのを黙って聞いているのであった。




