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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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《英雄》、噂の人と遭遇する。

 その日、リア・アルナスはいつものようにレベルあげのために魔物狩りに来ていた。日常的に魔物を狩っている存在なんて、そうはいない。

 ましてや学園の生徒たちは実践経験が少ないものばかりである。正体をひたむきに隠しているが、リアは間違いなく学園最強である。

 リアが今回来ているのは草原である。ちなみに時刻は夜。ここは昼間は結構魔物を狩りに来る冒険者もいたりする。基本的に魔物というものは夜に狂暴化する生き物であり、夜に好き好んで危険な場所に来るものはそうはいないのだ。

 まぁ、リアは誰もいない方がやりやすいと考えているのもあってこんな夜中だろうが喜んで来るわけだが。

 空には、満月が輝いている。

 此処は地球ではなく、異世界であるため月も違う。青白く光り輝くそれは、酷く神秘的である。

 このフォグラス草原では、レアモンスターが出る仕様であった。ゲームでの話であるが、現実でも実際そうである。だからわざわざリアはやってきた。

 魔物狩りをするのはいつもの事だが、素材が欲しいと義姉であるルカにも言われているからというのも一つの理由である。

 (うーん、あんなに目立つレアモンスターならすぐに見つかると思うんだけど。どこいるかな?)

 リアが探しているレアモンスターというのは、ギガントゴーレムと呼ばれる存在である。草原に満月の夜にだけ出現するという設定が、ゲーム時代にはあった。が、現実になるとゲーム時代よりも出現率は低い。

 リアが《何人もその存在を知りえない》を行使したまま、草原を駆ける。

 駆け抜けながらすれ違う魔物たちを殺戮し、《アイテムボックス》の中に突っ込んでいく。解体は後からまとめてやるつもりらしい。

 (ギガントゴーレムは中々経験値はいるし、見つけたいんだけどなぁ。いないなぁ)

 うーんとリアはギガントゴーレムが見つからない事にそんなことを考える。

 ちなみにギガントゴーレムはレアモンスターであるだけあって、討伐難易度は高い。まず遭遇することが難しく、遭遇しても討伐難易度が高く倒せるものが少ないというのだから、ゲーム時代も中々鬼畜仕様のモンスターであった。

 此処はリアにとって現実の世界でしかない。死ねばリセットはない。だけれども、この世界が確かにゲームの世界と酷似している事は確かであって、こうしてゲーム時代の記憶は生きていれば思い出されていく。

 尤もこの世界で、16年近く生きていて前世の記憶というものは、大分薄れてきている。ただ、死んだ時の記憶だけは猛烈に頭の中に残されていて、その記憶があるからこそリアは死にたくないという思いが人よりも強い。

 そうしてリアが魔物を狩りながら進んでいる中で、戦闘音が響いた。

 (誰か戦っている? 夜の草原で、珍しい……)

 リアは自分の事を棚に上げてそんな風に思考しながら、興味本位で戦闘音のする方へと向かっていった。

 そして向かった先では、ギガントゴーレムとそれに対峙している一人の存在がいた。

 (あれ、誰かにもう取られちゃってたか。それにしても一人でギガントゴーレムと戦うってよっぽどの馬鹿か、実力者か)

 リアは相変わらず自分も一人でギガントゴーレムと対峙する気満々だったくせに、そんなことを考えている。

 暗くて男の顔はよく見えないが(第一、こちらに背を向けているわけで)、鎧を身にまとっていて、見た目は戦線で戦う騎士のようだ。

 リアはギガントゴーレムと、男をじーっと見つめる。

 人の死を見るのはすきではないから、もし危険だったら助けようかななどと思いながらもとりあえず観察していた。

 ギガントゴーレム相手にその人はよく戦っていた。

 (ふーん、一人でギガントゴーレム相手にあれだけ戦えるなんて凄い)

 と、リアも関心するぐらいである。

 ギガントゴーレムの巨大な腕が、その人を狙う。だけどその男は鎧を身にまとっているとは思えないほどのスピードで、さっとそれを避ける。

 (あれは《瞬速》のスキルもちかな?)

 リア、のほほんと戦いを見ている。その人がリアに気づいた様子はない。

 ギガントゴーレムの攻撃を避けたその人は、そのまま持っていた長剣でギガントゴーレムを真っ二つに切り裂いた。

 (うん、強いね。あれ誰だろう? なんか、頭の中引っかかるっていうか、どこかで見た事ある気がしてならないんだけど。うーん、実力者っぽいから近づいたら気づかれる可能性もあるけれど、もっと近づいてみるかな?)

 リアは近づいたらばれるかなと不安なようだが、それよりも好奇心が大きかったらしい。ユニークスキルを発動したままの状態で、ゆっくりとその人に近づいていく。

 その人はギガントゴーレムの死骸を前に、なんだかどうしようみたいな態度をしている。そのことがリアにとって不思議であった。普通に解体すればいいのにとしか思えない。

 その人は、近づくリアに気づかない。

 リアは、その人の真正面に経つ。

 そして、その顔を見た瞬間、声が口から洩れていた。

 「《爆炎の騎士》ラウル?」

 リアがしまったと思った時には遅い。リアの姿は男の前に現れていた。

 しかし、リアが声を上げてしまったことも無理もなかった。なぜなら、その《爆炎の騎士》ラウルはリアの前世の知り合い―――VRMMO時代の友人であったのだから。





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