ティアルク・ルミアネスと師たち。
その日、ティアルク・ルミアネスはゲン・サバステスとルノ・フィナンシェリに会いに来ていた。
ティアルクは学園生活に忙しいというのもあり、時々しか師の二人と会うことはない。とはいえ、師であるゲンとルノはティアルクの事を気にしているので、時々こうして会うことになっているのだ。
その場所は、ゲンとルノが指定した食事処である。ゲンとルノもギルドの仕事で忙しく世界中を飛び回っているので、こうして揃うことも珍しいと言える。
「ゲンさん、ルノさん、僕、学園生活が楽しいです! 友人達にも囲まれて、学園に通わなければ出会えなかった人たちと沢山出会えました!!」
「それはよかったな」
「よかったわね」
ゲンとルノも、ティアルクが楽しそうに過ごしていることは良い事だと思っているようだ。不測の事態により、レベルの高い相手の事を倒してしまい、その結果――実力を伴わないレベルを手にしてしまった。その結果、波乱万丈の人生を送ることになったと言える。
普通とは違う人生を歩むことになったティアルク。普通とは違うからこそ、普通を望むものである。少なくともゲンとルノはそう言う普通を享受せずに生きてきたからこそ――、そういうものに焦がれることもたまにある。
本人と師を含むそういう普通へのあこがれもあり、こうしてティアルク・ルミアネスは学園に通っている。
「――闘技大会でも優勝出来ましたよ!!」
「それはティアルクがやる気があるのならば、当然だろう」
「ええ。……寧ろ普通を望むなら優勝しない方がいいのでは?」
ゲンとルノはティアルクの言葉にそう言葉をかける。
ゲンとルノはティアルクの師という立場で、面倒を見ていたが、家族や兄弟というほどに距離が近いわけではない。学園にティアルクが通っている今は特に、時々しか会わないものである。
違う大陸に顔を出している事も多く、ティアルクの情報をすべて知っているわけではない。
「去年も優勝したといっていなかったかしら……」
ルノはそう言いながらティアルクを見る。
ティアルクはルノにそういう風に言われても、きょとんとした表情である。本人的には自分がやりたいようにやっているだけで、他意はないのである。
「そうです! 優勝しました!」
「そう……まぁ、ティアルクがそうしたいならそれは自由だけど、優勝し続けるのは目立つ事だと思うのだけど」
「それでも――わざと負けるなんて相手に悪いでしょう」
当然、そういう考えはあるだろう。とはいえ、レベルを偽っている状態で優勝をたたき出すのはなんともちぐはぐな行為である。
「ルノ、まぁ、いいだろう。ティアルクはたった一度の学園生活を送っているんだから自由にすればいい。ただしそうやって自由にした結果、ツケが回ってきた場合はきちんと自分でけりをつけろよ」
「はい!」
元気よく答えるティアルクだが、おそらくゲンとルノが考えているほど深くはその事態を受け止めていないだろう。
ゲンやルノにとって弟子だが、ティアルク・ルミアネスはギルドランクAを所持している独立した相手である。自分が面倒を見るべき子供というわけではない。なので基本的には自己責任と思っている。
たった一度の学園生活なので、色々と騒がしくなるかもしれないがそのあたりは自由にやればいいとそう思っているのだ。
(リアちゃんの噂は聞かないからきっと大人しくしているんでしょうね。ティアルクのように目立つ方に向かうのも、リアちゃんのように目立たないようにするのも結局その人次第か。リアちゃんがどういう学園生活を送っているかちょっと気になるけど、ティアルクに聞いたら大変なことになりそうだわ。そんなことになったら私とゲンが闇討ちされそうだからやめましょう)
ルノはリアのことを思考して小さく笑う。
――ためらいもなく、敵と思った存在は闇討ちをする。それだけ容赦がなく、面白い少女。
ゲンがリアのことを理解出来ないとぼやいていたが、ルノもその気持ちはわかる。リアという存在が訳が分からないとはルノも思っている。でもそういう感情さえもルノは面白いと思っているので、リアの訳の分からなさをもっと知っていきたいと思っていた。
だからこそリアに嫌われるわけにもいかないので、ルノは話を変える。
「――それで、ティアルク。貴方のお友達の話を聞いてもいいかしら?」
ティアルクには友人が数えきれないほどいるとルノは聞いているので、その話題にうつる。また近しい生徒たちが特異な存在であることは、《風音姫》としてある程度把握しているが、ルノはティアルクが語ること以上の情報はティアルクにいう気はなかった。それはゲンも同様である。
とはいえ、もちろん、ゲンとルノが知らない情報――例えばアキラ・サラガンのこととか――もあり、そのあたりはゲンとルノを驚かせるのであった。
そしてしばらくの間、ティアルク、ゲン、ルノの会話は繰り広げられた。ティアルクは二人と話せたことがよっぽど嬉しかったのか満面の笑みを浮かべていた。




