テスト勉強をしながら会話を交わす。
もうすぐ二年生の三学期が終わるため、リアとソラトはテスト勉強をしていた。相変わらず、平均点を取るための勉強である。何だかんだテスト勉強を一緒にするあたり、リアはソラトに心を許していると言えるだろう。
その様子を見ているネアラとヴィヴィヨン。
ネアラはすっかり慣れた様子だが、ヴィヴィヨンは不思議そうな顔をしている。
「……リアさん、ソラトさん、何をしているの?」
「リア姉とソラ兄は勉強しているのよ。目立たないための勉強なんて……訳の分からないことをしているのだから、邪魔しないようにね」
「……やっぱりリアさんは不思議。精霊も不思議がっている」
ネアラとヴィヴィヨンは勉強をする二人を見ながらそんな会話を交わしていた。
「そういえばリアちゃん、就職先決まったんだよね?」
「……まぁ。何処から聞いた?」
「ギルドマスター。それにリアちゃんは機嫌よさそうだし。上手くいったのだろうなって」
「そう」
「俺、リアちゃんが働く場所の近くで働くから!!」
「好きにすれば」
ソラトはリアが完全に就職先を決めたので、ソラトも就職活動をちらほら始めているらしい。……学園では人を寄せ付けないように嫌われ者になっているとはいえ、天才肌である。
元々、誰も寄せ付けないほどの才能を持ち合わせ、だからこそあまり周りに興味を持たない存在だ。それにソラトはリアと違ってコミュ障な訳ではない。《炎剣》として行動する時にはギルドに所属する者たちとの会話もしっかりできている。だからこそ、就職活動も簡単に終えることだろう。
「リアちゃん、あと一年で学園は卒業だね。学園ではリアちゃんがユニークスキルを使わずに姿を現わしているからいっぱいリアちゃんを見れて良かったのになあ。でも薬師として働くリアちゃんを見れるの楽しみ!!」
「……別に私の働く傍で働くのはいいけど、なれなれしくしないでね」
「ちゃんと順序を踏むよ。リアちゃんは学園で俺と会話してくれないだろうし。リアちゃんが俺と学園で話してくれるならさー、もっと旧知の仲として仲良く出来るのにさー」
「絶対やだ。ソラト、学園で悪目立ちしてる」
「むー。それはそうだけどさー。でも三度もチャンスがあるのに、リアちゃんと今の所同じクラスになれてないのが、嫌なんだよな。次が最後のチャンスだし、リアちゃんとクラスメイトになりたい」
「私はどっちでもいい」
ソラトはリアに向かって沢山話しかけているが、リアはつれない様子で答えている。そんなリアの冷たさになれきっているソラトは全く気にした様子はなく楽しそうである。
リアとソラトは、二年生のテスト範囲についての会話を淡々と続ける。そうしながら、どういう風に答えを書けば平均点を取れるかというのを進めていった。
「というか、リア姉の就職先が決まったのを私は初めて聞いたのだけど……。そうなると、私とヴィヴィヨンはどうしたらいいの? リア姉って、一応私の保護者枠で、ヴィヴィヨンのことはリア姉が買ったでしょう」
「んー、そのあたりはまだ決めてない。師匠とは雇用条件決めただけ。何処に住むか不明。……でもネアラとヴィヴィヨンを連れて行くのも目立ちそう」
「リアちゃんが嫌なら俺が二人とも引き取ってもいいよ!! そうしたらリアちゃんがうちの家に来る理由になるし!!」
……自分のことはちゃんと考えているリアだが、ネアラとヴィヴィヨンのことをどうにかしようなんて考えていなかった。まだ一年もあるので、それまでに色々考えなければいけないとリアは思った。
ソラトはリアが来てくれるならとネアラとヴィヴィヨンを引き取ることは問題ないと思っているようだ。
(……ソラ兄は相変わらずだなぁ。でもリア姉は私がソラ兄の所にいたとしてもそんなにこないと思うけど。ああ、でもヴィヴィヨンの事は精霊への対策のためにもやってくるか)
ネアラはそんなことを考えながら、リアとソラトの会話に呆れた様子である。
ネアラはリアの傍でもソラトの傍にいたとしても問題がない。どちらにせよ、やることは変わらないので、リアの意見に従うことにしていた。そもそもリアに助けられて生き延びた命なので、ネアラの命はリア次第である。
そしてヴィヴィヨンもリアの奴隷なので、リアが決めた事ならば問題は全くないようだった。
「そのあたりは、この一年のうちに決める。お義父さんに確認もして、家の手配をしてもらうことも考える」
「リアちゃん、俺のことも全然頼ってくれていいから! 俺はリアちゃんのためなら全財産だって差し出すよ!」
「……いや、お金は自分で稼いでいるからいらない。自分で稼いだものなら自分で使えばいい」
「俺はリアちゃんにしかお金を使いたくない」
「あ、そう」
リアはソラトの重すぎる言葉もどうでもいいと思っているのか、慣れているのかそんな風な言葉を返すだけだった。
――まもなくテストを迎え、三学期も終わる。




