絶叫と共に響く激流
本日2回目!!
「案外建築士って便利なんだな。こんな物まで作れるとは」
バンダナは俺を小舟に乗せて湖畔を北へ漕いでいた。相も変わらず『のこ丘』は茸が生い茂っている。煌めく胞子が宙を舞い、蛍のように辺りを漂っている。
「むぅ~私は建築士だよ! 小舟はおまけなんだからね!」
「こればっかりは仕方ないって、あの中で作れるのバンダナだけだったし」
こうしてみると人手不足が顕著だな。
北の方で誰か雇うのもアリかもしれん。
「キシャ――――
バキュン!
[擬態茸虫を倒しました]
[200HGを入手しました]
「うえぇ……雑魚敵とは言え、あんな簡単に溶けるものなんだ」
「俺を前に奇襲など百年早い」
道中は楽そのものだった。
何せ1発撃てば大抵のモンスターが消し飛ぶからな。
例え生き残っても、毒、吸収、麻痺で何も出来ず力尽きる。
「忘れてたけど、赤月ってトーナメントの猛者だったもんね」
「猛者……響きが良いな」
「全くそう見えないのに」
「は?」
どっからどう見たって猛者のそれはだろうが。
見よ、名前の上に浮かぶ『赤月の夜』を!
それに加えて、長髪赤髪ギザ歯は個性の塊だろ!
「こう……強者の圧が無いんだよね」
「強者の圧が無い?!」
「勿論良い意味でだよ!」
「良い意味で……?」
俺の事を何だと思ってるんだ……?
ワンチャン、他プレイヤーから舐められたりして――――
無いな、流石に。
「……んぁ? いつの間にか雰囲気変わってるな」
先程とは打って変わり、鬱蒼とした景色から澄んだ景色へと様変わりしていた。
茸の量も徐々に少なくなっており、もうすぐで『のこ丘』を抜けるようだ。
「本当だ……急に明るくなった?」
左右を囲っていた茸の群生は消え失せ、やがて岸辺には苔むした白岩が目立つようになった。
水面の様子も全く異なり、淀みを含んだ暗い色ではなく、徐々に澄んだ色となる。
だがそんな透明さの奥で、水が落ち着きなく震えているような気がした。
「……流れ強くなってねぇか?」
俺は水面を覗き込む。
明らかに南から北に向けて水が流れており、湖畔の時のような穏やかさは無い。
「なぁ……『のこ丘』ってよ、案外高い場所なんだよな。んで、明らか〜に流れ落ちてるよな?」
『ザー大瀑布』
そのエリア名が視界に見えた瞬間、まるで答え合わせでもするみたいに――――
遠く北の方から、低い轟音が届いた。
風の音か……否。
ならば雷の音……否!
これは絶え間なく鳴り続ける、水の塊がどこかで砕け散っている音だ。
俺たちの乗る小舟は、その音に引かれるように――――
いや実際には水流に押されるようにして北へ進んでいく。
例え漕いでいなくても、既にその流れに乗せられていた。
「ちょ、ちょっと待って! 戻せないんだけど!」
バンダナが慌てて櫂を逆に入れるが、水は意志を持ったかのようにそれを拒む。
非情にも、小舟はわずかに横滑りするだけで、進行方向は一切変わらない。
「……マジで?」
俺は立ち上がり、前方へ目を凝らす。
木々が完全に途切れた先――――
そこには、空間ごと削り取られたような断崖があった。
「もしかして……もしかしなくても……ヤバ……いな」
視界の先はそのまま巨大な滝へと変わっていた。
落ちる水は白く泡立っており、雲を作っているかのように水飛沫が散っている。
「あ、ヤバいわこれ。凄いヤバい。ヤバいって、待てって、ちょっ、お願いだって! ヤバぁぁぁぁい!!!」
そして何より――――
水の流れが、さっきまでとは比べ物にならない。
小舟はもはや落ちていると形容しても良い速度で加速していた。
「無理無理! 誰か助けてぇぇぇ!!!」
小舟はさらに加速する。
滝壺の轟音が、もはや会話を掻き消すほどに膨れ上がっていた。
「ほえやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
小舟は、ついに断崖の縁へと躍り出る。
視界が開け、空と水と奈落が一体になった。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
次の瞬間――――
「グモォォォォォォォ!!!」
巨大な鯉が滝の中から現れた。
[エリアボスが出現しました]
[水天昇鯉 コイ=ノボリ]
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
名前 『赤月の夜』赤月
階級 ランク32
所持金 30800HG(1700BP)
武器 魂縫双銃【魂吸収弾】
武器 魂縫双銃【魂吸収弾】
防具 縫魂礼装【魂枯渇転化】(紅砂のガンマン)
装飾 腐王鴉の眼核【死肉の王眼】
装飾 毒蜜女王の毒腺輪【紫蜜ノ血】
装飾 嵐角雷環【嵐角誘雷】
ステータス
体力 290
魔力 185
攻撃力 100
防御力 30
素早さ 50
毒効力 1毎3(+1)
吸収効力 1毎2
麻痺効力 10%
自動魔力回復 1秒毎4(+1)
状態異常命中 +140%
状態異常耐性 +30%
職業
遺物調薬師 熟練度3
【遺物調薬図鑑】【脆弱化】【遺物調薬観察眼】
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




