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状態異常使い、敵を溶かす。~状態異常ビルドのVRMMO~  作者: MEはCat
【第三章】人外共の頂上決戦

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【準決勝】第二試合

「まずは1勝か」


 案外早く勝負が付いたな。

 だが一歩間違えば、即死していたのは俺の方だっただろう。

 俺はあのサーフボードが万事屋の下に向かう刹那、万事屋が付与されている色と同じ極性の雷弾を撃ち込んでおいた。

 結果、万事屋はサーフボードを掴めずに復帰を阻止出来た訳だ。


 万事屋の敗因としては、俺の挑発に乗らず堅実に攻め続けなかった事だ。

 勝負を急ぎ過ぎるが余り、余計な隙を晒してしまった。

 彼が空中に移動した時点で、俺の方に勝利の女神が微笑んでいたのだ。


「これで祐介からの依頼は終わった訳だが……」


 前の俺なら、依頼が終わったからとイベントが終われば別ゲーに行っていただろう。

 だが、想像以上に『Relics Online』が楽しいと思う自分が居る。

 それを無下にする事は出来ない。


「今思えば、俺このゲームにハマってるんだな」


 ちゃんと俺はゲームを楽しめている。

 累計何時間プレイしているのか分からないが、こんなにハマったのは久しぶりだ。

 それを無視して別ゲー?

 ――――無いね。

 この際だ、とことん『Relics Online』を楽しもうじゃないか。


「第二試合――――BAN対ヒーロー」


 思考を第二試合の方に切り替える。


 正直、あの戦いを見る前は決勝戦でBANと戦うものだと思っていた。

 だが、想像以上にヒーローが強すぎる。

 ……どう対処するつもりだ、BAN。


[第二試合 開始準備]


『トーナメント 無人の街』


 戦場は中世ヨーロッパの街並みだった。

 周囲は既にもぬけの殻となっており、殺風景な雰囲気が漂う。

 この街には誰も居ない――――彼ら以外は。


「ファンタジーに相応しい景色やねぇ。この街並みに、その鎧――――良く映えていますよ」


 プレイヤーネーム"BAN"。

 彼はその柔らかくも独特な口調と裏腹に、数多くのプレイヤーを知恵で屠ったプレイヤーであった。

 まさしく智将、盤面をコントロールし相手に()()を強制する戦い方を好む。


「蛇者は正直な人だと思っていたけど、お前は正直な人ではなさそうだな」


 プレイヤーネーム"ヒーロー"。

 彼は実直で誠実、それに加え爽やかな青年であるが、その実力はこのゲーム随一のPSを誇る剣士だ。

 人は彼を"勇者"と呼び、多くの者に慕われている。


「おや失敬、お世辞は好みませんでしたか。せやけど、人の事言えないんちゃいます?」


「……というと?」


「君、準々決勝の時「温存して勝とう」って思うてはりませんでした?」


 沈黙が流れる。

 それは()()の流れだった。

 BANはそれを見てニヤリと笑みを浮かべる。


「えぇ、別に温存も1つの戦術やと思いますよ。それでも、そんな面持ちでトーナメントをを優勝出来る程甘くないのも事実――――」


 BANは囁く。

 どうせなら、最初から()()を出せと。


「先、言うときますけど、()()封じた状態で私や赤月を倒せるなどと思わない事やね。舐めプしてると痛い目見るで?」


 ――――その上で、正面から潰すとBANは宣う。


「それとも――――負けた時の言い訳にするおつもりで?」


「……なる程、俺の本気を見たいのか」


 ヒーローは決意する。

 BANを全力で屠る。

 望み通り、全霊を持って叩き潰す。


「……良いだろう、そこまで言うのなら見せてやる!」


[プレイヤー ヒーローは準備完了しました]


「つべこべ言わずにかかって来い。望み通り、この『神霊聖剣』でお前の策略ごと叩き斬ってやる!」


「それは楽しみやねぇ。私の策略、切れるか試してみましょか」


[プレイヤー BANは準備完了しました]


[第二試合 開始まで]

[3]


 両者、武器遺物を構える。


[2]


 BANは一見すれば、刀身の()()剣のような武器遺物を持っていた。

 とても楽しそうに、狙いを定めたような仕草をする。

 


[1]


 一方ヒーローは直剣を構える。

 それは『神霊聖剣』と呼ばれた遺物であり、悪を撃ち滅ぼすべく作られた剣である。

 そして今は、BANとおう名の悪逆非道なる者を成敗すべく力を貸す。


[0]

[第二試合 開始]


 開始と同時に、ヒーローは力を溜める仕草をする。

 『神霊聖剣』に秘められたヒーローの奥義【神霊顕現】には2種類の()()()()が存在する。


 即座に顕現させるか、()()()()()で顕現させるか。


 かつて蛇者には使用を試みるも、寸前で後退したお陰でカウンターには至らなかった。

 だが今回の状況では、これが最適解だ。

 BANは前の試合にて、初手で【光刃】を出していた。

 それは実質不可避の斬撃であり、どこに居ようと攻撃が届く。

 その仕様を利用した初見殺し、それを逆に活用してカウンターを狙う。


 ――――だが、BANが持っていたのは()であった。


「【遅延行為】」


 BANが『刻遅の魔杖』の先を地面に叩く。

 すると次の瞬間、自身を中心とした()()のようなエフェクトが出てきたと思えば、ヒーローの身体は遅く鈍化した。


「……やられた!」


 それに加え、攻撃が当たった事による【神霊顕現】のカウンター条件の成立。

 神霊は攻撃を行ったBANを捉え攻撃しようとするも。


「おっと」


 ――――簡単に避けられてしまう。


 BANは準々決勝の第四試合をよく観察していた。

 あの試合にて、ヒーローにはカウンターの手段がある事はバレていた。

 自身が【神霊顕現】に拘っていると相手に誤認させ、開始直後にカウンターをしてくるよう誘導する。

 その上で、初手の攻撃を【光刃】ではなく【遅延行為】にする事で、カウンターの速度ごと遅くする魂胆であった。


 ――――BANの狙いは正しかった。


 ただ1つ読みが外れた点としては――――


「【光刃】ッ!」


 ジリジリジリッ!


 【遅延行為】を使用したとしても、攻撃が速い事には変わりないという事。

 例え飛行機の速度を遅くした所で、列車並みの速度が出ていれば致命傷に成り得るのだ。


「……なんちゅう速度してるんや、本当に遅くなっとるんやろなぁ……?」


「【飛来天斬】ッ!」


 ヒーローは飛ぶ斬撃をBANに向けて飛ばす。

 BANは大きく身を翻して躱すと、背後の建物が真っ二つに割れていた。

 間違いなく、準々決勝より大分速度は落ちている。

 それでも、攻撃の1つ1つが致命傷である事には変わりない。


「【遅延行為】【光刃】ッ!」


 ジリジリジリッ!

 ガキンッ!


 【遅延行為】の延長をした後、【光刃】を振るうも刃で受け止められ弾き返される。

 動きが遅くなっているのも関わらず、自分自身と戦えているという事実が身体を伝う。

 ――――いや、【遅延行為】が無ければ、そもそも戦いの土台にすら上がれていなかったのだ。


「……久々やなぁ、この感覚」


 忘れかけていた、()の感覚。

 それは、かつて赤月と対峙した時に感じた()()()()()

 例えどのような策略を練ろうと、その上からねじ伏せる圧倒的な力。


 自分を押し通す()――――

 強引で理不尽な彼に酷似している。


「――――ヒーロー、最後に私から忠告を一つ」


 それは悔しくも爽やかな笑顔だった。


「あいつのペースに飲み込まれるんやないで」


「……っ!」


 次の瞬間、【遅延行為】の効果が解けた刹那――――

 BANの身体は両断されていた。


[プレイヤーネーム ヒーローが第二試合に勝利しました]

[プレイヤーネーム ヒーローは決勝に進出しました]

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