絶叫はもう届かない
「足場は不安定だけど……やるしかないね」
「落ちたら即死か――――おぉ怖っ」
足場の下を覗けば、『ムシムシ密林』を一望出来る。
万が一足を踏み外せば助かる保証なんて無い。
ビリッ!
「……っ!」
ドゴーンッ!
この足場が制限された上空に加えて、常に上から振落とされる雷を警戒しなければならない。
一応雷の予知は可能だが、その合間をマグニ=パルスが見逃すはずも無い。
「ガァァッ!」
マグニ=パルスの身体から赤雷が放出される。
普通の落雷とは違い、その放電は横薙ぎの電流。
まさしく雷速の弾が飛んでくるような物であり、空中に飛んだ俺の身体を正確に――――
バチュン!
撃ち抜いた。
[電磁(赤)の状態になりました]
妖精達は足場を伸ばし、吹き飛ばされた俺を回収した。
もし妖精が居なかったら、そのまま地上へ落下していく所だった。
「痛ってぇな……で、何だこの状態異常」
電磁の状態……赤?
今の所、身体が赤く光ってるだけで何も変化が無いな。
すぐに分からない系が一番恐ろしいが、ひとまずは置いておくしかないか。
バンバン!
俺は反撃として酸弾を発射した。
マグニ=パルスはその場を全く動く事は無い。
酸弾はいとも容易くマグニ=パルスを撃ち抜く。
「攻撃を与えるだけなら余裕なのか?」
その瞬間、青色の球体が出現した。
「なっ……?!」
俺は空中に放り出される。
まるで自身が磁石になったかのように、その青色の球体へと吸い込まれた。
「……ちっ!」
俺は途中の足場にしがみついて難を逃れる。
いつの間にか、俺の身体には赤の電気が帯電していたようだ。
そして、あれは青の電気――――
N極とS極は惹かれ合う。
そして逆にN極とN極は――――
「ガァァッ!」
マグニ=パルスは口から赤色の球体が放たれようとしている。
「【超速化】」
その瞬間、蛇者がマグニ=パルスの喉元を掻き切った。
「良し、ナイスアシストだっただろう!」
「それ自分で言うかよ! ありがとう!」
「どういたしまして!」
蛇者はそう言うと、浮かんだ足場を駆け回る。
一切速度を落とさず、マグニ=パルスの身体を切り刻む。
対する俺は酸弾を発射し続ける。
少しでも防御力を下げ、蛇者の攻撃一つ一つの火力を底上げしていく為に。
「全く近接でバッサバッサと……ズルい奴め!」
「赤月もやるかい?」
「多分だが無理だな。赤の電磁の状態のせいで近寄れない」
きっと、このN極効果はマグニ=パルス本人にも作用されているだろう。
先程から輝かしい程の赤を身体から放っているという事は、俺が近付いても反発されるに違いない。
「俺は援護に専念する。フィニッシャー任せたぜ!」
「うむ、任せたまえ!」
俺は酸弾をこれでもかと言う程ばら撒き、蛇者も目にも留まらぬ速さで斬り付ける。
同じくマグニ=パルスの攻撃頻度も激しくなるが、蛇者には掠りもしていない。
「終わりだよ」
蛇者の一閃。
マグニ=パルスの身体が貫通した。
「ガァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
それは絶命の咆哮であり、絶叫である。
天を揺るがす声は、もう届かない。
[クエストボスを撃破しました]
[災穿百足 マグニ=パルスを倒しました]
[3500HGを入手しました]
[妖精の哀歌をクリアしました]
[報酬5000HGを入手しました]
[『災極双転銃』を入手しました]
[『災雷纏装』を入手しました]
[ランク20になりました]
[地上まで転送します]
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
地上へ戻ると、大勢の妖精が俺達の帰りを祝福していた。
そして、一人の妖精が前に出る。
「この度は私達の村を救ってくれてありがとうございます」
その妖精の頭上を良く見てみると、”妖精の長 ティターニア”と書かれている。
もしかしたら、重要NPCなのかもしれない。
「お礼と言っては何ですが、今後はハンター様の活動拠点にして下さっても構いません。好きにお使い下さい」
[『アマテラス社』アナウンス]
[『ムシムシ密林』にて『ピクシー村』を解放しました]
[解放者 赤月、蛇者]
「……『アマテラス社』アナウンス?」
また聞いた事の無い単語が出てきたな……。
このアナウンス的に運営か何かか……?
「おや、赤月は知らないのかい? 俺達は設定上、『アマテラス社』に所属する遺物ハンターって事になってるんだ」
「そうだったのか……最初『サンド街』に降りたからか?」
「そうだね。『サンド街』に降りたプレイヤーは皆、所属が『アマテラス社』になっているはずさ」
確か祐介は『スノー街』に降りたと言っていたな。
彼も彼で別の会社陣営となっている可能性が高い。
もしこれから勢力争いのコンテンツがあるとするなら、会社同士の戦いになるのかもしれんな。
「蛇者、今回はありがとう」
「こちらこそ、中々楽しい冒険が出来たよ!」
「せっかくだし、フレンド申請送っておくぞ」
「なら有り難く受け取らせて貰おう」
[プレイヤー 蛇者がフレンド申請を承認しました]
このゲームをやっていれば、また会う時が来るだろう。
その時が来れば、いつか戦ってみたいものだ。
巨大ムカデ……撃沈!
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名前 赤月
階級 ランク20
所持金 17440HG
武器 蒼天機兵の蒼炎刀【蒼炎点火】
武器 血酸嘴砲【血腐食霧】
防具 血羽の屍外套【死肉伝播】
装飾 腐王鴉の眼核【死肉の王眼】
装飾 粉砕機兵の圧壊輪【大震撃】
装飾 蒼炎の炉心核【蒼炎燃焼】
ステータス
体力 80
魔力 80
攻撃力 60
防御力 20
自動魔力回復 1秒毎2
状態異常命中 +60%
状態異常耐性 +40%
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