【別視点】封印
まおう視点です。
※誤字というか、変換する前の名前が残っていました。本当に申し訳ございません。直しました(9/6時点)
『???』
暗く、暗く、更に暗く。
一筋の光明すら見えぬ程、真っ暗な闇。
ノイズのような、砂嵐のようなものが視界にこびりつき、目を擦ろうとも離れない。
言いようもしない不快感と共に、ギィ……ギィ……とした木材が軋む音が鼓膜を囁く。
「ここは一体何処なんだ全く……というか、何で急にホラーゲーム始まってるんだ?」
プレイヤー“まおう”はホラーゲームが苦手……という訳ではない。
むしろ、遊園地によくあるお化け屋敷に行こうとも平然とするような人であり、ある程度の耐性は備わっている。
それでも突然のホラー展開に脳が追い付かず、全身を逆立つように周囲を警戒している。
「――――何だ?」
何かが聞こえる。
鼻歌だ。
この静寂に包まれた場所であるから、妙に明朗に響く。
一定のリズムに乗って聞こえる音は、暗闇の奥からやって来る。
「眩しっ――――」
一斉に光が灯る。
突然、周囲が明るくなった。
明暗の変化に視界が慣れず、一抹の目眩を起こす。
「おや、客人だね?」
視界が慣れ、目眩も収まった頃。
まおうの目の前には――――
黒で塗り潰された人が居た。
これは何かの比喩表現ではなく、本当に身体が黒一色で染め上げている。
まるで日光に当てられて作り出される影が一人歩きしているようで、そして、世界から弾き出された1つのバグのようで――――
ともかく、余りにも異質だった。
彼は椅子に座っている。
優雅にホットココアを飲み、尊大にくつろいでいた。
「……何処が目で、何処が口なんだ?」
「初っ端聞く質問がそれかい? そうだね……ここが目で、ここが口だよ」
「いや分からん」
目の前の存在は黒で塗り潰されている。
それ故に、目も口も分からない。
表情が読み取れないからか、常に掴み所が無い雰囲気を醸し出している。
「……で、誰?」
「そうそれ! 一番最初に聞くべき質問それだろう!」
「僕様を君の常識に引き込むのは辞めて貰おうか」
「ありゃ不快にさせちゃった? 失敬失敬」
実に軽い問答を済ませた後、その者は自己紹介を行う。
「僕はサピエンド。世界を観測する者さ」
サピエンドは愉快そうにホットココアを一口飲む。
この会話を心から楽しんでいるような声色を周囲に響かせている。
「僕様は”まおう”だ」
「まおう……君の事は知ってるよ。知らず知らずの間に世界の一端に触れた者――――前々から、こうして話しておきたいと思っていたんだ」
世界を観測する者。
この言葉に偽りは無く、これまで様々なプレイヤー達を観測してきた。
その数多のプレイヤー達の中で、まおうは知らず知らずの間に世界の一端に触れた者だと言うのだ。
「まぁ僕様は凄いからな! 世界の一端くらいちゃちゃっと……えーっと……何の事だっけ」
「忘れたのかい? 『後続の発見者へ』……君が金庫から取り出した手紙の事だよ」
『後続の発見者へ』――――
かつて、まおうが発見した手紙。
まおう自身は宝の地図らしきアイテムを手に入れ、膨大な宝を入手出来るとと勘違いして金庫を開けた。
その中身は、たった1つの手紙。
「あぁその話ね。確か、宇宙調査隊が狂乱化モンスターにボコられて壊滅した話だっけ」
「その認識で合ってるよ」
宇宙調査隊は未開の地と思われし惑星へと降り立った。
だが実際には、既に1度文明が滅んだ惑星であった。
探索を続けていく内に魔神を起こしてしまい、狂乱化モンスターで溢れ返った。
そして、宇宙調査隊は壊滅。
消息を絶った。
「彼らは実に愚かで面白かった。宇宙調査隊の人間は、元々はこの惑星の旧人類だと言うのに、永劫の時を経て、それを忘れていたんだ」
旧人類は、数多のモンスターが制御不能となったこの惑星を捨て、他の惑星へと移住した。
そして長い時が経ったからか、それをすっかり忘れて宇宙調査隊を派遣し、開拓させた。
「まんまと移住前の所に戻ってきたのか。一体誰が宇宙調査隊を派遣させたんだ?」
「それは……君達の上司だよ」
「上司?」
「『アマテラス社』、『ボレアス社』、『ドリュアス社』、『セイレーン社』――――ははっ、実に興味深いね。何も知らない宇宙調査隊に続き、何も知らない遺物ハンターを送り込んだ訳だ」
彼ら4つの会社――――
もとい陣営は基本的には対立関係にある。
どの会社も我先にと、この惑星の恩恵を受けに来たのだ。
「でも僕様と僕様の臣下は、魔神程度じゃ倒せない。きっと何だかんだ倒してハッピーエンドだ!」
「それは……考えが甘すぎだよ。僕の推測はこうだ。このまま行けば、高い確率でバッドエンドとなる」
相反する意見に、まおうは驚く。
まおうは他のプレイヤー達の強さを知っている。
そう簡単に倒されるような人達ではない。
彼らが揃って尚、サピエンドはバッドエンドとなる推測を立てている。
「そんなに強いのか? 魔神」
「強いね。文字通り死力を尽くしても、一握りの勝率を掴めるかどうか――――今の状態で勝てたなら、奇跡と言う他無い」
余りに絶望的な宣告に、まおうは少したじろぐ。
魔神はそこまで強大な存在なのかと、固唾を呑む。
「だけどね。もし魔神に再度封印を施すなら、勝てる確率が上がる」
「封印? 今まさに封じられてるんじゃないの?」
「現状、封印は緩んでいる。だからこそ、世界に狂乱という異変が漏れ出てるんじゃないか」
このまま行けば、魔神は間違いなく復活するだろう。
なりふり構ってられる余裕は無いのだ。
「出てきた所を封印し直す。それで終わりさ」
「でも封印って言ったって、どうするんだ? そんなに強い魔神を封印するんだ。どうせ代償があるんだろ?」
「その通り。封印に必要なのは――――器となる者だよ」
「要するに……プレイヤーの1人に魔神ぶち込むのか?」
「そうなるね」
封印には器となるプレイヤーが必須となる。
そして、封じ込めたプレイヤーが一体どうなるかは……想像も付かない。
「僕様に封印するのはどうだ?」
「オススメはしないね。碌な事にならない」
まおうは少し考える。
封印には1人のプレイヤーの同意が必要となる。
それでもこの先、魔神と戦うのなら手札は多い方が良い。
どのような展開になるにしろ、封印という対抗手段を捨てるのは勿体無い。
「サピエンド……教えてくれ、封印の方法を」
「――――いや、君が封印を施す必要は無い。封印は僕が施すとしよう」
「なんだ、君がやってくれるのか」
「その代わり――――君の中に、僕を住まわせてくれ」
サピエンドがまおうの中に入った状態で魔神の前に立ち、合図を送れば封印を行う。
1人のプレイヤーを犠牲に、狂乱の異変は収まるのだ。
「……分かった。いいぞ」
まおうがそう言うと、突然視界が暗転した。
先程と同じような、暗く静かな空間。
サピエンドが這い寄り、身体の中に入っていくような感覚がする。
そして――――
[魔王 ホモ=サピエンドが真の姿を現す……]
[邪神 END.000が出現しました]
[邪神 END.000が身体の中に侵入しました]
[身体の構造が変化します]
[所持している遺物の内容が変化します]
[クエスト「■■降臨」を受注しました]
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■■降臨
達成条件 ■■の討伐
報酬 ???
依頼内容
抗え。
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補足ですが、まおうがこの空間に入れた理由は『後続の発見者へ』を所持していたのがトリガーとなったからです。




