朱に染まる暁、碧に染まる世界
『ヒート街』
常に日照りによる熱気に覆われた地。
木々が生い茂り、葉っぱが影をくっきりと形成する。
改めて周囲を見渡してみれば、建造物は木造建築が多く、北の堅苦しい石壁とは反対に解放された雰囲気を感じる。
ただ解放され過ぎて、プレイヤーの姿が見えない。
気配はある。
きっとキルされない為に、何処か隠れているんだろう。
この俺と戦おうとするプレイヤーは――――
バゴンッ!
俺は首を傾けて飛来した物を避ける。
これは、クナイだ。
バトルロワイヤルの時と同じ、壁に穴を開ける程の貫通力のあるクナイだ。
「――――久しぶりだな」
飛んできた方向に目を向けても姿は見えない。
あの時もそうだった。
気配だけを残して、頑なに姿を見せない。
結局、あの後はバンダナの攻撃のお陰で難を逃れたが、ここではそんなアクシデントを起こせないだろう。
逃げに徹すれば、必ず追って来る。
追跡能力は折り紙付き。
だったら、叩き潰すしかない。
「ま、今は気にする暇無いか」
俺は自然に『ヒート街』を散策する。
元々の目的は万事屋の居場所を突き止めて倒す事。
それを行っているだけだと、追跡者に思わせる。
「…………」
バキュン!
クナイが放たれる瞬間、『魂縫双銃』の引き金を引く。
蒼白なる弾丸が姿の見えない追跡者へと当たり、クナイも俺に当たる。
ふと追跡者がニヤリと笑みを浮かべた気がした。
――――が、その笑みは直ぐに止んだ。
「……何故生きている」
俺は無傷で立っていた。
スキル【魂灯再臨】の効果により、「魂灯」全てを消費してダメージを無効化したのだ。
対するプレイヤー“浪忍”は俺の弾丸を喰らって手負いとなった訳だ。
「別に答えてやっても良いが、その代わり万事屋の居場所を吐いて貰おうか」
俺は銃口を浪忍に向ける。
お前が何をしようとも、次の瞬間には脳天撃ち抜いて終わらせる事が出来る。
今この状況で浪忍に出来る事と言えば、吐くか吐かないかの2択だ。
「無理に答えなくても良いぜ。その場合、犠牲者が1人増えるだけだ」
「……あの大きな屋敷の中だ」
「サンキュー」
浪忍に示された先へ視線を向けると、木々の隙間からその屋敷は姿を現した。
それは一際異質な存在感を放っており、広大な敷地の中央に構えられていた。
屋敷というより、王城と形容しても遜色の無い荘厳さ。
圧巻する程の巨大な建造物である。
「デザイン重視の建築は分からんな」
あいつの事だから、見栄を張る為に高級感のある建築にしたんだろう。
実用性重視の俺には分からないセンスしてるな。
「ふんっ!」
バゴンッ!
俺は扉を蹴破る。
その部屋の先には、台座に仰々しく座る“万事屋”が居た。
盃に入れられた酒を旨そうに飲み干す。
そして、改めて俺を見据える。
「邪魔するぞ」
「邪魔するなら帰って欲しいんだけどね」
ふと俺はとある依頼を思い出す。
裕介から「そのプレイヤー以上に強くなって正面から叩き潰して欲しい」と言われていた。
俺はその依頼通りにトーナメントで万事屋を下したものの、焼肉屋の時の裕介は心無しか消化不良を起こしているように思えた。
そもそも、何故裕介はこんな依頼をした?
「優勝商品を強奪したのだ」と言っていたが、それだけの理由で、ここまでするのだろうか?
他にも狙いがあったと見るのが自然だろう。
その狙いとは――――
「“八百屋”、『スペースアナーキー』では世話になったな」
『スペースアナーキー』と呼ばれるVRMMOは、宇宙で自分達だけのギャング、もといギルドを作り上げ他のギルドとの大規模PVPが魅力のVRゲームだった。
あの頃の俺は実に初々しく、名前も“赤月”という名前ではなかった。
俺は他のゲームでも名前を統一する派だが、この“赤月”の名前は『スペースアナーキー』以降の名前だ。
それ以前は別の名前でプレイしており、過去の決別の為に今の名前となったんだ。
「……どうして急に『スペースアナーキー』の話を? それに、僕は君のような奴知らないな」
「『朱に染まる暁事件』――――この単語に聞き覚えは?」
俺がそう言った途端、万事屋の持つ盃は落ちた。
指が震え出す。
目を大きく見開いて、信じられないような表情を浮かべている。
「“ヌルライフ”――――このゲームでは“ヌルハート”か。あいつに『Relics Online』を誘われてな」
ヌルハートの狙いは、きっとこれだったのだろう。
ヌルライフは、これがお望みだったのだろう。
裕介は、これを求めていたのだろう。
『朱に染まる暁事件』とは、『スペースアナーキー』で起こったゲーム史に残る事件である。
あるギルドが、たった1人のプレイヤーによって滅ぼされる事件が起きた。
その凄惨な様子から、『朱に染まる暁事件』と呼ばれ畏怖され続けてきた。
壊滅されたギルドメンバーの内の1人に、八百屋と呼ばれたプレイヤーが居た。
八百屋はそのプレイヤーに対して裏切りを起こした。
それが、『朱に染まる暁事件』の原因の1つだと語り継がれている。
「お前……“朱雀”か!」
『朱に染まる暁事件』を起こしたプレイヤーの名は朱雀。
かつて不信に陥った、過去の俺だ。
「何度でも殺してやる。八百屋」
「……僕が怯えるだけだと思ったか!」
万事屋は『高圧水撃砲』を放ち、無作為に振り回す。
水圧カッターとも呼べるそれは、確かに当たれば即死するだろう。
だが――――
「やはり温いな。何が「怯えるだけだと思ったか」だ。怯えてんじゃねぇか」
万事屋の恐怖で染まった攻撃など、大きく避ける必要すらない。
俺は先程「魂灯」を全て消費した事もあり、ダメージの無効化が切れている。
つまり、今この瞬間、万事屋は俺を殺す事が出来る。
そのはずなのに、何だその怯え様は。
まるで生まれ落ちたばかりの子鹿のように、足が震えているではないか。
そして、銃口を向ける。
「嫌だ……嫌だ!」
終わりにしよう。
こんな惨めでつまらない戦いは。
俺は『魂縫双銃』の引き金を――――
「――――何だ?」
ふと俺は違和感に気が付いた。
気が付けば、部屋のあちこちに青い水晶が生えている。
こんな物、先程まで無かったはずだ。
まるで、この空間自体が狂乱化したかのようで。
「くっ……頭が……!」
俺も万事屋も、等しく頭を抑える。
声が聞こえる。
最初は小さかったその声は、徐々に……いや、はっきりと脳内を揺らす。
「■■■■■■■■■■■■■■■■」
それは羊だった。
それは雲だった。
それは空だった。
それは青だった。
神々しい、清々しい、美しい。
静かで、穏やかで。
涼しくて、暖かい。
天国心地良景色浮。
俺昇天心清。
嗚呼素晴光景。
清々気分始。
魔神讃祭。
万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳――――
――――俺の頭から出ていけ!
「――――何処だ、ここは」
目が覚めると、俺は見知らぬ場所に居た。
[クエスト「■■降臨」を受注しました]
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■■降臨
達成条件 ■■の討伐
報酬 ???
依頼内容
抗え。
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熱き対決、重苦しい抗争、栄光なる闘争。
どのような因縁があれど、其の前では等しき命となる。
これにて、第六章終了でございます!
ここまでご覧下さった読者様、本当にありがとうございました!
次は幕間となりますが、そのまま毎日投稿を致します。
お楽しみに!
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名前 『赤月の夜』赤月
階級 ランク36
所持金 95800HG(1700BP)
武器 魂縫双銃【魂吸収弾】
武器 魂縫双銃【魂吸収弾】
防具 冥灯魂衣【魂灯再臨】(紅砂のガンマン)
装飾 腐王鴉の眼核【死肉の王眼】
装飾 蒼炎冠環【燃焼加速】
装飾 青魂冥灯環【吸魂循環】
ステータス
体力 220
魔力 420
攻撃力 100
素早さ 250
吸収効力 1毎2
自動魔力回復 1毎2
状態異常命中 +140%
状態異常耐性 +60%
職業
遺物調薬師 熟練度5
【遺物調薬図鑑】【脆弱化】【遺物調薬観察眼】【高純化】【調薬合成】
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