ダンジョン拡大④
「こっちで良かったみたいね」
「ああ。でも……寝袋は買い直しだな」
「痛いね」
「痛いな」
俺たちは出口を目指して動いていたけど、その途中で、元・野営地までたどり着いた。
野営地もダンジョンに飲み込まれており、野営地があった場所はダンジョンの外にあった時のまま、ダンジョン内にその姿を現している。
三号ダンジョンを破壊するときは、きっとここが拠点の一つとして使われるんだろうけど、今はここで休もうとは思わない。
死角の多い野営地だ。俺たち二人がモンスターの出る場所でゆっくりするなど、自殺行為でしかない。
騎士団とかなら、ここにあるテント全てを使い切ってもまだ足りないほど人を送り込めるから、有益に使えるんだろうけど。
こうやってダンジョン内に取り込まれたものは、持って帰れない。
誰かが身に着けていたもの以外はダンジョンの一部になってしまうため、ただのオブジェになってしまうのだ。
言うなれば、そこいらに落ちている石ころと同じでしかない。
「この剣、俺の物より使えそうだな。借りてくか」
「騎士様の槍って違うわね。私もこれ、借りていこうっと」
なので、遠慮なく持ち出すことにした。
これは投げて使う石ころと同じ。
ダンジョン内でしか使えないとはいえ、ダンジョン内では有効に使えるのだ。
自分の武器の使いべりを少しでも抑えるため、ここにある武器はありがたく使わせてもらおう。
ついでに、持って帰れるかどうかは知らないけど、目についた銀貨や金貨を数枚、こっそり持ち出しておく。
火事場泥棒と言う事なかれ。
運よく持ち帰ることが出来れば確かに泥棒のように思われそうだが、普通に考えれば持ち帰ることが出来ないわけで、一時的に、ダンジョンの中限定ではあるけど、金持ちになった気分を味わおうという事なのだ。たぶん。
それに、だ。もしもここで持ち帰らなければダンジョン内にお金が放置されるわけで、その分、経済圏からお金が減ってしまうのだ。それは国にとっての損失である。
俺は少しでも国に貢献すべく、ダンジョンに死蔵されるお金を減らすべく、ちょっとだけ手伝いをしているのだ。
などと自分に言い訳をしておいた。
俺たちはダンジョン内でちょっとの間だけ使うだろう装備や道具を回収し、再び外を目指した。
現在の時刻は夕暮れ時であり、もうすぐ夜の帳が下りるだろう。
できれば、夜になるまでに外へと行きたい。
ここから先は強行軍であり、休憩なしで進む予定で。
だと言うのに。
「お願いします。助けてください……」
ダンジョンに取り残された、娼婦のお姉さんを拾ってしまうのだった。
物語ではよくある展開だけど、自分がそうなるとは思ってみなかったよ。




