撫子③
楠葉さんが俺の側に付いてくれたおかげで、撫子さんへの抑えはこれで何とかなると思っていたけど。
撫子さんは楠葉さんが俺の側に付いたことを不満に思い、俺に食って掛かってきた。
「お姉ちゃんを騙しているんですか!?」
「騙すって。何を騙しているんだよ」
「とぼけないでください! お姉ちゃんが十夜さんの肩を持つなんて、騙している以外の何があるって言うんですか!」
「いや、単純に、撫子さんの言い分がめちゃくちゃだからでしょ」
ダンジョンで鬼角犬と戦っていたんだけど、その単調な訓練に嫌気がさしたのか、撫子さんは暴発した。
ダンジョン泊をするのは嫌だと。
俺と一緒に夜を明かすのが怖いと言いつつ、先に進めない、単調な訓練は嫌だと言い出したのだ。
先に進みたければダンジョン泊をするしかないし、ただ日帰りでモンスターと戦うなら、俺や楠葉さんが訓練をした方がまだマシ。
そう説明されても納得せず、問題は偏にリーダーである俺の実力不足だと騒ぎ出した。
早く次の仲間を探して来いと、そう言っているのだ。
そこまで間違った話ではないが、言われてすぐ解決する問題でもない。
募集に人が来ない以上、何ともならないのだ。
「あの、枝村さんを仲間にするのは?」
「いや、アレは無い」
一度枝村が仲間になりたそうな目でこちらを見ていたが、基本方針が全く違うのでアレを仲間にする事は、現状ありえない。
そもそも、俺の悪評は元を質せばあの女がばら撒いたものであり、敵対関係に限りなく近い間柄なのだ。現状、仲間にする気は無い。
「反省しているかもしれないじゃないですか。選り好みできる状況じゃないと思います」
「命のかかった仕事で、妥協なんて選択肢は無いんだよ」
基本、俺たちの意見は平行線だ。
そこでやや言葉を柔らかくしつつも楠葉さんが俺を擁護した。進まない話し合いを止めようと、口を挟んだだけに近かったが、それでも俺の側に立った。
そうして、撫子さんは今度はその事で更に暴発したのだ。
ダンジョンの中だというのに。
どうしようかね、この子。
楠葉さんと姉妹じゃなきゃ、すぐに切り捨てたくなってきたよ。
撫子さん、出会いは普通だったけど、枝村と同じ種類の人間だったか。
本当、どうしようね?




