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撫子②

 撫子さんの不満はこうだ。


 撫子さんはこれまで学校で魔法を習ってきた。

 そして学校を卒業し、冒険者になったことで「自分は一人前だ」という認識を持つ。

 冒険者としての評価は、俺からではあるが、大丈夫だと言われるほど高めで自信を得る。


 しかし、人数の面から先に進めず、不満が溜まっていると。

 特に人が来ないその原因はリーダーである俺の悪評によるもので、俺から何か言われる、指図されることにもストレスを感じ始めたと。


 楠葉さんは一通り事情を説明すると、申し訳なさそうに俺へ頭を下げた。





 この日は月に一日設けたお休みの日だ。

 俺は楠葉さんからこっそりとお誘いを受け、個室のある飲食店で撫子さんの話を聞かされていた。


「悪い子じゃないのよ。でも、ちょっと視野が狭いというか、自分しか見れていないの。

 ごめんね。十夜にばかり負担をかけるけど、私も説明するわ。

 十夜は良いリーダーよ。だから十夜以外と組むのはまだ怖いし……十夜から離れて、次に組む人がいい人とは限らないから」


 ありがたいことに、楠葉さんは俺とこのまま組むことを考えていてくれるようだ。

 そして撫子さんの考えが危険なものだという認識をしている。

 ……逆を言えば撫子さんは俺と組むのが不満で、楠葉さんごと抜けたがっているとも取れるけど。そこは考えない方がいいのかも知れない。



 俺自身が良いリーダーとは言い切れない部分も多々ある。

 撫子さんの信頼が足りないとか、そこをどうにかできる魅力が俺にあればそれで問題は解決するのだし。

 仲間の方も、俺が上手くやらなかった事で集まりが悪い。もっと仲間を集められるリーダーだったらすぐに先に行けていただろう。


 それでも、人格面でそこそこ信用されつつあるというか、ダンジョンでの方針が楠葉さんと一致するというか。

 楠葉さんとは上手くやれているようで、あとはここを起点に、できるだけ撫子さんからもリーダーとして認めてもらえるよう、努力するだけだな。



 そこで、楠葉さんが先日言っていた、鬼角犬との戦闘訓練について。


「え? だって、私も十夜も一人で一匹に勝てるのよ。なら、複数対複数の訓練ならともかく、あえて連携の戦闘訓練をする意味があるとは思えないの。

 三匹までなら一人一匹で勝てるでしょう?」


 あの場で反論しなかったのは、それをすると妹が調子づき、余計に俺への評価を下げるかも知れなかったから。

 俺は連携戦闘の精度を上げる事は無駄ではないと思うし、強力な個体を相手にするためにも早い段階で練習しておいた方がいいと考えている。

 それに、鬼角犬だって油断すればこちらを殺しうるモンスターなのだ。二人で戦えた方がより安全に戦えると思う訳で、やっておいたほうがいいのは間違いないと思う。



 俺達はしばらくの間、ダンジョンでの活動について二人で話し合っていた。


 撫子さんの件を抜きにしても俺たちの間にはちょっとした溝ができており、意見の食い違いが出ていたからだ。

 この話し合いでどこまで溝が埋まるかは分からないが、それでも二人きりでやりとりをすることで、溝は確実に小さくなっていく。


 今後もこうした話し合いの場は必要だろう。

 撫子さんは当面の間は楠葉さんに任せるとして、いずれは撫子さんとも話し合える場を作りたいものだな。

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