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撫子①

 人が増えても戦闘が楽になっても、収入はそこまで変わらない。

 一人当たり銀貨四枚から五枚。

 それが今の俺たちの収入だ。


 俺としてはもっと先に行きたい、もう少し稼ぎたいという思いがある。

 余裕のないダンジョン攻略をする気は無いけど、今は余裕がありすぎると思う。戦力は過剰気味だ。

 ただ、仲間の二人は俺とダンジョンで一泊するつもりが無いというか、俺を警戒しているようなので、まだ先に進めないでいる。

 焦ってもしょうがないとは思うけど、でも、もう少し先に進みたい。


 難しいね、仲間と組むって言うのは。





 収入の方は微妙だけど、やれることはやっている。

 俺と楠葉さんの二人で鬼角犬と戦う練習をしておいて、撫子さんは温存するようにしている。


 なぜこんなことをするかと言うのも、これは鬼角犬複数と戦うときに必要になる技術だからだ。

 撫子さんが先制攻撃で一匹を削り、俺たち二人で残りを倒す。

 今は1匹しかいないので撫子さんが待機だけど、敵の数が多ければ撫子さんの魔法と俺たちの武器戦闘のどちらも必要になる。

 今のうちに訓練は必要だ。


「新しい人が来たら、また連携の訓練をするんですよね?」

「そりゃ当然だな。引き出しは多い方がいい」

「そのうちですけど、仲間が増えてダンジョンに泊まるようになったら、先に進むんだよね?

 鬼角犬相手にここまで練習するの、無駄と思うんだけど……」

「いや、それはおかしい。

 ダンジョンを攻略する度に毎回ここは通るんだし、鬼角犬とも戦うよ。何も無駄にならないじゃないか」


 そうして訓練多めにしていると、九敬姉妹が不満を口にした。

 ダンジョン泊は嫌だと言いつつ、訓練も嫌だと?

 さすがにそれはワガママ過ぎるのではないか?


 俺はさすがに嫌な顔をして見せ、二人に抗議する。

 

 そうすると、楠葉さんはばつの悪そうな顔をして、撫子さんはふて腐れたような顔をした。

 撫子さん、言われたことは理解できるけど、言い返されたことは面白くない様子だ。


 まぁ、いいけど。



 俺たちはとうぶん先に進まず、準備期間を長めにとる。

 それで話は終わりだった。

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