白~ホワイト
バレンタインデーなので、甘い(?)恋愛小説を書いてみました。
放課後の空き教室。そこで少女は想い人を待っていた。
「先輩、来てくれるかな・・・」
不安げに呟く少女。
少女は気持ちを落ち着けるため、大きく深呼吸をした。すると、それが合図だったかのように、教室前方の扉がゆっくりと開かれる。
「あっ、ごめん!待った・・・よね?」
教室へと入ってきた人物――少女の想い人である先輩は、少女を見るなり申し訳なさそうに頭を下げた。少女は、先輩のそんな行動にもつい見惚れてしまう。そして、程なくして我に返る。
「あ、あの・・・。わ、私が早く来すぎただけですから、先輩は悪くありません!ど、どうか頭を上げてくださいませです!!」
先輩を前に動揺してしまい、とっさに変な日本語を喋ってしまう少女。それを聞いた先輩は、口元に手をあてるとクスリと笑った。少女は顔を真っ赤に染める。
「ご、ごめんね。ふふ、キミ面白い子だね」
褒められたのだろうか?少女は恥ずかしさで顔を上げられずにいた。
先輩はそんな少女の様子に気づいてか、話を本題へと移した。
「えっと・・・。それで、キミは僕に話があるんだよね?その、話ってなにかな?」
少女はハッと先輩の顔を見た。優しそうな目が、少女を真っ直ぐに見つめて来る。少女の鼓動は激しくなり、胸の奥からは温かいものが込み上げて来た。
『先輩、私はあなたのことが好きです・・・』
目を瞑り、少女は心の中で思う。
今まで背中の後ろに隠されていた左手が、ゆっくりと先輩の前に差し出される。その差し出された左手には、手の平サイズの箱が握られていた。そして、箱の中からはチョコレートの甘い香りが漂う。
『この「想い」を、チョコレートにのせて、あなたへ届けます――』
下校時刻を知らせるチャイムが校内に鳴り響く。少女にはそれが、自分を祝福するウエディングベルにすら感じられた。