黒~ブラック
少女は脱兎のごとく駆け出し、学校を後にした。その顔には満面の笑み。
それだけで、先輩からの返事が喜ばしいものだったことが一目瞭然だ。
『こんな、頼りない僕でよかったら・・・』
少女の脳内では、先ほどの先輩の言葉が、扇風機の羽根のようにグルグルと回っている。
道行く道にある物全て、少女には幸せの色に見えているようだった。そのため、その中に潜む不幸の色に気づいたときには既に手遅れだった。
一時停止すらせずに、道から飛び出した少女を、走って来た乗用車が跳ね飛ばしたのだ。鮮血に染まる少女を見て、周囲にいた人達は悲鳴を上げる。
やがて、どこからか救急車のサイレンが聞こえて来た。
* * *
少女は病室で目を覚ました。窓の外を見ると、既に日は沈んでいる。
頭には何重にも厚い包帯が巻かれており、触るとひどく痛むのだった。
「なんで、私はこんなところにいるんだろ・・・?」
自分の今の状況が理解できない少女。その時、入り口のドアが開き、1人の少年が姿を見せた。少年は少女を見ると、目を丸くして驚いた。
「い、意識が戻ったんだね!待ってて、すぐに先生を呼んで――」
しかし、少年の言葉を遮るように少女が言った。
「あなた、誰・・・?私のことを知ってるの?」
凍りついたような時間が、2人の間を流れる。そして、それを先に破ったのは少年の方だった。
「ごめん、病室を間違えたみたいだ」
少年はそう言って病室を後にした。
ドアが閉まると、少女の頬を熱い涙が伝った。なぜだかわからないが、少女はとても悲しかった。だから、少女は泣いた。理由もわからず、ただただ泣いていた。




