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第19話:ファミリーレストラン殺人事件

 ファミレスにやってきた俺と洋子。

 店員が「何名様ですか?」と訊いてくるので、「二名」と答えると、店員は俺たちを席に案内した。

 店員はその場を離れ、水を持ってきた。

「ご注文が決まりましたらそちらの呼び出しボタンを押して下さい」

 そう言って去っていく店員。

 俺と洋子はメニューを開いた。

 その時、「うわああああ!」と、男性の悲鳴が聞こえてきた。

 何だろう、と思った俺と洋子は悲鳴のした場所─トイレ─へと移動した。

 そこには既に人が集まっていた。

「通して下さい」

 俺と洋子は人混みをかき分けて奥へと行く。そこでは、血塗ちまみれの男が死んだ状態で洋式の便器に座っており、別の男が腰を抜かしていた。

「警察です! 皆さん離れて下さい!」

 洋子はそう言って野次馬たちに警察手帳を見せる。

 警察手帳を見た野次馬たちは離れていった。

 俺は店員に頼んで店を封鎖してもらった後、携帯を取り出して百十番通報をした。

 通報から十分、上野署の捜査員がやってきた。

 鑑識課員が現場検証を行う。

 遺体の写真を撮影したり、指紋を採取したり……。

「遺体の第一発見者はどなたかな?」

 刑事の問いに腰を抜かしていた男性が立ち上がった。

「僕です」

「名前を教えてもらえますか?」

黒柳くろやなぎ 徹夫てつおです」

「通報者は貴方ですか?」

「あ、それは僕です」

 刑事が俺の方を見る。

「貴方は?」

「黒沢 聡です」

 刑事が洋子に目を向ける。

「そちらの女性は?」

 洋子は警察手帳を出した。

「警視庁捜査一課、荒川 洋子です」

 敬礼する刑事。

「ご苦労様です」

さて──と、遺体を見る刑事。現場検証は終わっていた。

「こりゃ酷いな」

 刑事は合掌した。

「鑑識、害者の身元は?」

 鑑識課員が被害者の運転免許証を刑事に見せる。

毒島ぶすじま 浩一こういち、三十五歳。体中をめった刺しにされたことによるショック死でしょうな。遺体、運びます」

 鑑識が遺体を運んで行く。

「さて……黒柳さん、遺体発見時の状況を詳しく聞かせてもらえないでしょうか?」

「あれは僕がトイレに入ろうとした時でした。ドアの前に血溜まりがあったので、恐る恐る開けてみたら死んでたんです」

 ドアの前を見ると確かに血溜まりがあった。

「そうですか……。で、次に来たのは、黒沢さん、貴方ですか?」

「いいえ、僕が黒柳さんの悲鳴を聞いて駆け付けた時には、既に大勢の野次馬が居ました」

 刑事は辺りを見渡す。

「野次馬なんて居ないがね」

「あ、それは現場保存のため私が追い払ったんです」

 と、洋子が答える。

「そうでしたか。ありがとうございます」

「ところで刑事さん、他の刑事さんはいらっしゃらないんですか?」

「今、他の事件の捜査で居ないんですよ。だから非番だった私が駆り出されて……」

「じゃあ我々も捜査に協力します。いいよな、洋子?」

「構わないわ」

「ご協力感謝します」

「それじゃあ、店内に害者の連れが居ないか調べてみましょう」

 俺たちは店内に害者の連れが居ないか調査を始めた。

 結果、害者の恋人だという女性が居ることが分かった。その名は鮎川あゆかわ みどり

「浩一が殺されたって本当ですか!?」

「ええ、まあ……。それで貴方にお訊きしたいことがあるのですが、最近、毒島さんに何か変わったことはありませんでしたか?」

「分かりません。あ! そういえば、近々大金が手に入るかもって言ってました!」

 金銭トラブルか?

「そうですか。他に何か気付いたことは?」

「うーん……分からないわ」

「そうですか。有り難うございました」

 俺たちは鮎川に会釈をし、その場を離れた。

「あ、そう言えば、刑事さんの名前聞いてませんでした」

牟田むた 健一けんいち。階級は警部補です」

「それじゃあ牟田警部補、署に行って毒島さんのご両親に連絡致しましょう」

「そうですな」

 俺たちは牟田警部補の車で上野署に向かい、毒島の両親に連絡した。

 連絡から一時間、毒島の両親がやってきた。

 俺たちは毒島の両親と共に霊安室へ移動する。

 牟田警部補が遺体の顔に被せられた布を取り上げた。

「「浩一!」」

 毒島の両親が涙を流す。

「何で、何で死んじゃったのよ!?」

「娘に続いて息子まで……! 刑事さん、犯人見付けて下さい!」

「犯人は必ず挙げます!」

「お父さん、娘に続いて、というのはどういう意味ですか?」

「ああ、実は、一年前に私たちの娘、つまり浩一の妹が、恵子けいこが何者かに殺されているんです」

「そうでしたか」

「当時、警察は全力で捜査をしましたが、結局、犯人は分からずじまいで……」

「そうですか……」

 牟田刑事が遺体の顔に布を被せる。

 大金……妹の死……もしかして、毒島は妹を殺害した犯人を強請ゆすろうとしていたんじゃ? それで毒島は犯人に殺された。

「洋子、毒島 恵子の事件、再捜査してみるか」

「そうね」

 俺と洋子は霊安室を後にした。



 俺と洋子は警視庁の資料課にやってきた。ここには未解決事件の捜査資料が眠っている。

「すいません、毒島 恵子の捜査資料見せていただけませんか?」

「ちょっと待ってて下さい」

 資料課員が奥へと行き、毒島 恵子の捜査資料を持って来た。

「これがその資料です」

 俺は資料を受け取ると、空いている席に座って資料を開いた。

 事件は霞ヶ関の住宅街にある一軒家で起こった。

 被害者は毒島 恵子。当時、大学四年生だった彼女は、学校から帰宅したところ、家の中で待ち伏せしていた何者かに襲われ死亡した。

 警察は彼女と交際していた同じ大学の同級生、宮園みやぞの 寛人ひろとを犯人と見て捜査をしたが、有力な証拠は何一つ出ず、事件は迷宮入りしてしまった。

「成る程……。洋子、宮園 寛人のところへ行くぞ」

 俺は捜査資料を閉じて資料課員に返し、洋子と共に宮園家に向かった。

ピンポン──と、インターホンを鳴らすと、二十代の男性が出て来た。

「宮園 寛人さんですね?」

「あなた方は?」

 洋子が警察手帳を見せる。

「今更、警察が僕に何の用ですか? 恵子のことですか? 証拠もないのに僕を犯人扱いするんだったら名誉毀損で訴えますよ?」

「いえ、恵子さんのことではないんです。実は恵子さんのお兄さんが何者かに殺害されてしまったのです」

「え!?」

 驚きと惑う寛人。

「ど、どこで殺されたんですか?」

「カワサキというファミレスです」

「カ、カワサキは僕のバイト先ですよ」

「そうなんですか?」

「はい」

「そうですか。ところで、鮎川 緑という女性をご存知ですか?」

「鮎川 緑? 彼女は僕の大学時代の後輩ですけど?」

「ではその鮎川が毒島 浩一の恋人であることも?」

「ええ、勿論知ってますよ」

「そうですか。ところで、貴方はお昼ころ、どちらに居られましたか」

「それってアリバイですか?」

「教えて下さい」

「家に居ましたよ。今日のバイトはお休みでしたので」

「それを証明出来る人物は?」

「残念ながら居ません。でも僕は犯人じゃないですよ。僕を犯人にしたければ証拠を持ってきて下さい。それじゃ」

 寛人は家の中へ戻ってしまった。

「宮園は白だな」

「そうなの?」

「間違いないよ。さて、鮎川の住所を役所で調べるとしよう」

 俺と洋子は上野市役所に向かった。

「鮎川 緑の住所を知りたいんですが」

 俺の言葉の後、洋子が受付の所員に警察手帳を見せた。

「少々お待ち下さい」

「あ、出来れば戸籍謄本でいただけますか?」

 所員はパソコンをいじりだした。

 プリンターが起動し、鮎川の戸籍謄本が印刷される。

「こちらが鮎川 緑の戸籍になります」

 俺はそれを見て驚愕した。

「マジかよ!?」

「どうしたの?」

「鮎川の奴、籍入れてあるぜ。夫の名は宮園 寛人だって」

「毒島 浩一は何なの?」

「成る程な」

「何が成る程なの?」

「犯人が判ったからさ」

「誰なの?」

「後で教えてやる。取り敢えず、鮎川の家に行こう」

 俺は洋子と共に鮎川家に向かった。

ピンポン──と、インターホンを鳴らすと、鮎川 緑が出て来た。

「あ、刑事さんたち」

「毒島 浩一を殺害した犯人が判りましたよ」

「だ、誰なんですか?」

「……事件の発端は一年前です。当時、貴方の大学の先輩である宮園 寛人は毒島 浩一の妹の恵子と付き合っていました。ところが、ある日、その恵子は何者かに殺害されてしまいます。警察は全力で事件を捜査しました。が、しかし、事件は解決することが出来ずお宮入りをしてしまいました。そして浩一は一年かけて恵子の事件を独自に調べ、犯人に辿り着き、強請ろうと考えました。ところが、その犯人に口封じのため殺されてしまいました」

「へえ。それで、犯人は誰なの?」

「鮎川 緑さん……いや、宮園 緑さん、貴方ですよ」

「面白い推理ね。動機は?」

「寛人と恵子は不倫していました。それを恨んでの殺害です」

「証拠はあるの?」

「……ありません。全て憶測です」

「聡……ダメじゃん」

「憶測だけで私を犯人扱いするなんてゆるせないわ」

 落ちないか。

「では証拠を用意するまでです」

 俺と洋子は鮎川家を後にした。

「聡、どうすんの?」

「ファミレスに戻る」

 俺と洋子はファミレスに戻った。俺たちはそこで牟田警部補と再会した。

「牟田警部補、何してるんですか?」

「何って、聞き込み」

「そうですか。ところで、新しい情報はありますか?」

「いや、これと言って進展は。そっちはどうだね?」

「鮎川 緑が犯人です。しかし、証拠が……」

「そうか。じゃあもう一度現場を調べてみるかね?」

「そうですね」

 俺たちは現場へ移動した。

「おや?」

 牟田警部補が何かを拾う。

「これはボタンか」

「犯人の物でしょうか?」

「さっき調べた時は無かったのに」

「きっと遺体を運ぶときに、手に握られていたのが落ちたんじゃないか? そう言えば鮎川の服の袖、片方だけボタンが無かった気がするぞ?」

「じゃあ鑑識に回しておこう」

「その前に写真撮らせて」

 俺はボタンを携帯のカメラ機能で撮影した。

「洋子、鮎川家に戻ろう」

 俺と洋子は鮎川家に戻った。

「また貴方たち?」

「鮎川さん、これに見覚えは?」

 俺はボタンの写真を鮎川に見せた。

「貴方の服の袖、ボタンが無いように見えるんですが?」

「優秀なんですね」

「毒島兄妹の殺害を認めるんですね?」

「証拠が出ちゃったんだから、言い逃れは出来ないわ。行きましょう?」

 こうして事件を解決した俺と洋子は、鮎川を上野署へ連行していくのだった。


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