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第18話:わんちゃん連続殺害事件!

 黒沢探偵事務所。

 ドアが開き、女性が入ってくる。

「どういうご用件ですか?」

「次郎を捜して下さい」

「貴方のお名前は?」

「須郷(すごう) 美咲(みさき)です」

「次郎くんというのはお子さんですか?」

「いえ、犬です」

「犬?」

「はい」

「写真はありますか?」

 須郷が懐から写真を取り出す。そこにはブルドッグが写っている。お世辞にも可愛いとは言えないが……。

「最後に見たのはいつですか?」

「昨日の夜です。今朝、目が覚めて散歩に連れて行こうと思ったら居ませんでした。お金ならいくらでも払います! 次郎を捜して下さい!」

「分かりました。では、調査の方を行わさせていただきます。連絡先を教えていただけますか?」

 須郷と赤外線で連絡先を交換する。

「見つかったらご連絡します」

「お願いします」

 須郷は事務所を出て行った。

 俺は写真を手に捜索を開始した。

 まずは飼い主の家の周辺で聞き込み。しかし、有力な情報は手に入らず。

ピリリリリ──携帯が呼び出しをする。

 俺は携帯を取り出して応答した。

「はい、黒沢です」

「洋子よ。事件が起きたから来て!」

「悪い、仕事中だから行けない。どんな事件なんだ?」

「上野公園で切断された犬の首が発見されたの。品種はブルドッグよ」

「何だって!? 今から行く!」

「え? でも仕事は?」

「今やってる仕事と関連がありそうだからな」

 俺は電話を切ると上野公園に急行した。



 上野公園。

「洋子!」

 俺は現場検証中の相棒に声をかける。

「あ、聡!」

 洋子が駆け寄ってくる。

「あれ?」

「何?」

「動物に関する殺害事件って環境課の領分だよね?」

「ああ、環境課の職員が別の事件で出払っちゃって居ないから捜査一課が動くことになったのよ」

「そうなんだ。で、殺された犬ってこの犬?」

 俺は懐からブルドッグの写真を出す。

「似てるかも……」

「遺体の第一発見者は?」

「匿名の通報だったから分からないわ」

「そうか。取り敢えず遺体を見せてもらおうか」

 俺は切断されたブルドッグの首と写真を交互に見た。

「同じ犬か……」

 俺は携帯を取り出し、須郷氏に連絡をした。

「はい、須郷です」

「黒沢探偵事務所の黒沢です。貴方の次郎くんが何者かに殺害されました」

「そ、そんな!?」

 電話の向こうで須郷氏の倒れる音がした。

「須郷さん!?」

 ………………。

 応答は無い。後で自宅へ伺ってみるか。

 俺は電話を切り、懐にしまった。

「洋子、聞き込みは済んだか?」

「今、唐沢くんがやってくれてるわ」

 唐沢刑事が駆け足でやってくる。

「荒川警部!」

「何?」

「聞き込みの結果、昨夜十一時前後に不審な車が公園前で止まっていたという目撃証言を入手しました!」

「ご苦労様。不審車両について判っていることは?」

「白のハイエースです。ナンバーは判っていません」

「分かったわ。引き続き捜索お願い」

 唐沢刑事は「はい!」と去って行った。

「洋子、俺、事務所戻るわ」

「そう。分かったわ」

 俺は洋子に見送られながら事務所に戻った。

 その事務所の入り口に男性が立っている。

「うちの事務所に何かご用ですか?」

「あ……今、依頼しようと思ってたところです」

「そうですか。では、中でお伺いします」

 俺は事務所のドアを開け、依頼人を中に入れた。

「それで、依頼というのは?」

「はい。私の飼っていた犬が居なくなってしまったのです」

「犬、ですか」

「探偵さん、探していただけないでしょうか?」

「写真はお持ちですか?」

「はい」

 男は一枚の写真を取り出した。そこにはシーズーが写っている。

「分かりました。貴方のお名前と連絡先を教えていただけますか?」

 男の名は風間(かざま) 信吾(しんご)だと分かった。

「では、見つかりましたら連絡させていただきます」

「お願いします」

 風間は事務所を出て行った。

 俺は携帯を取り出し、洋子に電話した。

「はい」

「あ、俺だ。今度はシーズーが遺体で見つかるかもしれないぞ」

「何で分かったの?」

「もしかして、もうお?」

「うん。で、何で分かったの?」

「実は今、依頼人が来てシーズーを捜してくれって頼まれたんだ。因にその前はブルドッグ」

「連続殺害事件……」

「洋子、不審な車とやらは見つかったか?」

「それがまだなのよ」

「そうか。じゃ、こっちはこっちで調べてみる」

 俺はそう言って電話を切り携帯をしまった。

「さて、調査開始だ」

 俺は事務所を後に、風間家周辺で聞き込みを行った。

 聞き込みの結果、数日前に風間家の前で不審な白いハイエースが止まっていたという目撃情報を手に入れた。

「ナンバープレートは覚えてますか?」

「覚えてないねえ」

「そうですか。ありがとうございました」

 通行人に頭を下げ、その場を離れる。

 ハイエースか……。

 俺は携帯を取り出して洋子に電話した。

「はい、荒川」

「洋子、俺だ」

「あ、聡?」

「そっちは捜査に進展あったか?」

「全然ダメね。聡の方は?」

「風間宅にハイエースが止まっていたとしか……」

 その時、白いハイエースが俺の横を通り過ぎた。

 俺はナンバープレートを記憶した。

「洋子、今から言うナンバープレートの所有者を調べてくれ。品川505、な、44-85だ」

「分かった、調べとくわ」

 俺は携帯をしまい、事務所へと戻った。

 事務所の前に女性が立っている。

「うちに何かご用ですか?」

「あ、あの、私の飼っている犬が居なくなってしまったんです。探してもらえませんか?」

「写真はお持ちですか?」

 女性が懐から写真を取り出した。そこにはチワワが写っていた。

「分かりました。お探ししましょう」

「お願いします! あ、これ前金です! それと、連絡先です」

 女性が懐から封筒と名刺を出す。封筒の中には二十万円が入っていた。

「ありがとうございます」

 俺は事務所に入ってお金を金庫にしまった。

プルルルルル──携帯が鳴り、俺は応答した。

「黒沢です」

「洋子よ。例のナンバープレートの所有者が分かったわ。浅井(あさい) 和利(かずとし)って名よ。白いハイエースを所有してるようだから、これから会いに行くんだけど、貴方も一緒に来て」

「了解」

 俺は洋子と合流し、浅井家に向かった。

ピンポン──インターホンを鳴らすが、応答しない。

「居ないのか?」

 俺はドアを開けてみた。鍵が開いている。

「浅井さん! お邪魔しますよ!」

 俺と洋子は中に入った。

 犬の鳴き声が聞こえてくる。

 俺たちは鳴き声の下へ移動した。そこには写真のチワワが。

 俺は懐から先程の名刺を取り出した。そこには木嶋(きじま) 香奈子(かなこ)と書かれている。その木嶋の番号に電話をかけた。

「はい」

「探偵の黒沢です。お探しのペットが見つかりました。これからお届けします」

 俺は携帯をしまい、チワワを抱き抱えた。

「浅井が帰ってきたら頼むよ」

「聡は?」

「俺はこの子を飼い主に届ける」

 俺はそう言って浅井家を後に、木嶋家へ向かった。

ピンポン──木嶋家のインターホンを鳴らす。

「はーい」

 先ほどの事務所前に居た女性が出て来た。

「わんちゃんお連れしました」

「あ、ありがとうございます。どこで見つかったんですか?」

「ごめんなさい、それはお教え出来ないんです」

「どうしてですか?」

「それもお教え出来ないんです。すいません」

「そうですか。あ、お代の方を……」

「いえ、お代は結構ですよ。もう頂きましたし」

「そうですか。ありがとうございました」

「いえいえ」

 木嶋はチワワを連れて中に戻っていった。

 俺は浅井家に戻った。

 浅井家の前には、覆面パトカーが一台、止まっていた。

 俺は洋子を見付け、声をかけた。

「洋子、浅井は戻ったのか?」

「うん。今、連行するところ」

「じゃあ、やはり浅井が連続殺犬鬼(さっけんき)だったんだな?」

「うん」

「じゃあ、これで終わりか」

「聡、お昼行かない?」

「オッケー。行こうか」

 こうして事件を解決した俺たちは、腹ごしらえをするため、近くのファミレスへと向かうのだった。


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