表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【拡散希望】  作者: 飴矢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/6

2日目

【拡散希望】沢北市内の女子高校生が行方不明

 1☆月1G日の夕方頃を最後に行方が分かりません。

 ■■県立沢北高校三年■郷■■

 しんrK15$(cm 痩せ型で制服に■■■■色のカーディガン   連絡先はこちら


 ◇――◇――◇――◇――◇


 スマートフォンのアラームが鳴っている。大丈夫、スヌーズにしているから、後三回までに起きれば遅刻しない。

 薄っすらと目を開ければ枕元には白い流行りのキャラクターのぬいぐるみ。壁側には雑に掛けたせいで、ハンガーからずれ落ちそうなオーバーサイズのカーディガン。

 これを見て一気に目が覚める。



 ――関節のあちこちが変な姿勢でもしていたかのように、痛い。



 嫌な、夢を見たのだろうか?

 10/25

 画面に表示された日付は、記憶よりまた一日増えていることに血の気が引く。

 SNSを開くと【拡散希望】の文字。

 ……文字化けが少しマシになっているけれど、引用もコメントも増えている。

 投稿したアカウントを確認すると、このためだけに作られたようで……連絡先は両親の電話番号だった。


 着替えて、リビングへ向かう。今日も二人そろって家にいるみたい。

 両親はこの何日かで一気に年を取ったように見える。……疲れているんだ。


「17日から県内の女子高校生の行方が不明となっており警察は事件、事故の両方で調べを……」


 最悪だ。リモコンでテレビを消した。

 いきなり画面が切れたのをお父さんが不思議そうにしている。そしてまた画面が再生される。


「……つは付近の防犯カメラの映像を確認し、引き続き生徒の行方を確認しているとのことです。次のニュースです」

 淡々としたアナウンサーの声が気に障る。

 部屋に引きこもっても……窓の外には地元の報道記者がいるのが見えて、一旦は開けたカーテンを力一杯閉める。

 もう嫌だ。外にも出たくない。


 気になってSNSの画面だけは開いてしまう自分も嫌だ。


 ❖──❖──❖──❖──❖

 

「知ってる(´;ω;`)中学のときの同級生。大人しい子だったのに何で…早く見つかりますように」

「島崎放送です。この件について詳しく取材を依頼したく思うのですが、DMにお返事いただけたら幸いです」

「辛いときこそ睡眠や食事は絶対!諦めないでくださいね」

 

 ❖──❖──❖──❖──❖


 中学の卒業アルバムの私は今より少しぽっちゃりしていて……ねぇ、何で?何で勝手にそんなことをするの?

 私は、何も頼んでいない。

 どうすれば終わるのかも分からない。

 だめだ、もうこれを見るのはやめよう。


 ふらふらと靴を履いて、玄関のドアに手を……掴めない。掴めないけど、そのまま通り抜けることはできた。

 こんなことができる自分も気持ち悪くて吐き気がする。

 地面に零れ落ちた金木犀はオレンジ色の絨毯みたいで、それを踏みつけながら歩く。


 どこに行って、何をすればいいかも分からない。

 コンビニに行くと自動ドアは開いたから、招き入れられるようにふらっと立ち寄る。

 誰も、私が見えていない。窓には、自分には見えるのに誰も気が付かない。さみしい。

 こうやって人はどんどん幽霊になっていくのかなぁなんて考える。


 コンビニを出てふらふらと商店街を歩く。何か、気が紛れるから。

 いつものパン屋さん、お休みなんだろうか?通るたびにしていた甘いバターの香りがしない。

 お店は開いているみたいだけど……近付くと商品もちゃんと並んでいる。

 

 ……香りが、しない。


 体温が一気に下がった気がする。そうだ、昨日はあんなにしていた金木犀の香りもしなかった。

 何で……?分からない。もう何も分からない。

 ぐずぐずと鼻を鳴らして泣くことしかできない。


 世界に一人、取り残されたような気分だ。


 いつの間にか日が暮れ始め、間もなく五時のメロディーが鳴る頃だなと思った。

 昔懐かしい音楽を思い出すと、家に帰りたくなる。家族に……会いたい。

 ずっと心配している。声は掛けても届かないけれど、近くにいたい。いなきゃダメな気がする。

 目を逸らしちゃダメなんだと思う。

 

 帰ろう……そう思ったときに頭に強い衝撃を受けて視界は暗転した。

 16時40分。

 ねぇ、どうして……?


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ