記録十五:ゼド邸倉庫〜脱出
ゼド邸はかなり広く、様々な部屋があります。
ガン爺の鍛治部屋があれば、魔物の解体部屋も。
そんな解体部屋に、地竜の死体が新鮮な状態で横たわっていました。
「これは素晴らしい…少なくとも、ドワーフの生首よりは何倍もマシな品物です!!」
「事足りるのか。」
「開いて見ねば分かりませんが、恐らく十分かと!!…本当に丸ごと頂いてもよろしいので?」
「丸ごととは言っていない。肉と食える内臓は寄越せ。貴重な蛋白源だ。後は好きにしろ。私には必要ない。」
「ああ…それは何と…ほぼ丸ごとと言うことではありませんか……神よ、今一度感謝いたします…!」
ゼドは膝をつき、祈り出してしまいました。
その間にも、解体師達による作業が粛々と進んでいきます。
「……これは凄い。頭目!当たりです!これは素晴らしい肝でございますよ!!」
「おお…そうか!慎重にな!傷など付けて無駄にするなよ!肉とそれ以外の内臓は、食べやすく切って包んでおけ!殺菌も忘れるな!…いやはや、キノクニ様、お陰で精力ざ…いえいえ、秘薬が大量に作れそうです。とある貴族様からの発注でしてね。誠に助かりました。ありがとうございます!!」
「言葉などいらん…品は?出し惜しむな…全て見せろ。」
「はいはいっ!こちらへどうぞ!キノクニ様!!」
ゼドはシャキンと立ち上がると、ハキハキと歩き出しました。
到着したのは倉庫です。
「ここには店に並べているものも含めて全ての品が収まっております!…特別に3品までお持ちください!」
「良いのか。」
「ええ!商人とは品物に適切な対価を払ってこそでございます!正直3品でも少ないのですが…残りは今後のお付き合いにて、代えさせていただきたく!」
「そうか…本よ。」
「グー…」
グリモアは移動に待ちくたびれ、寝てしまっていました。
「本よ。」
「グー…」
「仕事だ。」
「グー…」
メキャッ…
「ああああああ!!ギブギブギブギブ!起きた!起きましたわ!あああああ!!…何や?!何しとんねん!?」
「仕事だグズ。」
「なんやとぉ?!誰がグズ…うはー!凄い数の品やなあ!!」
寝ぼけグリモアが目を覚まして驚きます。
「そうだ。全て鑑定し、私に見せろ。この中から3つ、品を選び貰う。」
「全部?!マジで言うてんの?!何日かかると…」
「1日でやれ。」
「はあ?!」
「1日でやれ。」
「はぁん?!」
メキャッ…
「ぎゃあああああ!わかったわかった!頑張る!やるだけやるからやめて!折れる!折り目つく!いだだだだ!!」
「商人よ。品を全て見やすい位置に降ろせ。すぐに選定を始める。」
「はい!喜んで!」
ゼドが入り口付近のレバーを引くと、商品棚がずれ、段になり、全ての品が明らかになりました。
棚の間には階段があり、自由に行き来できます。
「魔動棚でして!全ての品を見ることが可能でございます!!」
「良し。始めろ。」
「はいはい。ああ、因みに、わざわざかざさんでもええで。ホルダーからでも見えるさかい。オレの視野は365度や!」
「では全て、一気に鑑定しろ。」
「…処理する頭脳は1個だけや。」
「無駄口を叩く暇があるならば、さっさとやれ。1日を1秒でも過ぎる度に、1ページずつ引きちぎっていく。」
「いやああああ!わかったから!やめてー!!!」
「ほほほほほ…実に興味深い。私もお付き合いいたしますよ!」
こうして、キノクニとグリモアの選定作業が始まりました。
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「ほい。」
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名前:退魔の短刀
分類:剣 Lv.3
数値:攻 108
:魔 50
特性:霊体に攻2倍
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「次だ。」
「ほい。」
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名前:蛇剣ダンダラ
分類:暗器 Lv.1
数値:攻 180
:魔 30
特性:隠密時の攻2倍
__________________
「次だ。」
「ほい。」
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名前:豪運の丸薬
分類:秘薬 Lv.5
効果:1時間運上昇
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「あ、鑑定のレベル上がったわ…」
「次だ。」
「ほいほい…」
こんな風に、ひたすら作業的に、キノクニとグリモアの作業は進んでいきました。
外に待っている人達がいるなど、知る由も無く…。
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時刻は深夜2時です。
作業を始めたのか昨日の13時だったので、13時間経っています。
「…いや、休憩!もう無理!脳みそ焼き切れるわ!あかんあかん!」
「…」
「睨んでもどうにもならへん!!今オレにできるんは休憩だけや!!もう無理!」
「残り11時間だ。今から寝て1日以内に終わるのか。」
「睡眠込み?!嫌や!睡眠時間は除いてーな!嫌嫌嫌…グー…」
「…ふん。冗談だ。お前の軽口が移った。」
グリモアはキノクニの貴重な冗談を聞くこともなく、文句を言いながら寝てしまいました。
ゼドはとっくに椅子に座って寝てしまっています。
キノクニも腰を下ろし、少し瞼を閉じました。
屋敷の前では、ギルド長始めギルド職員とマリアン達が寝ています。
そんな静かな、都の夜でした。
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翌朝。
キノクニは目を開けると軽く体を動かし、グリモアを手に取ります。
「起きろ。朝だ。」
「…んはあっ!あかん!寝てしもた!!今何時や?!あと何時間あんねや!?」
「やかましい。今は朝の8時だ。残り時間は11時間だ。」
「…あれ?減ってへん…何や自分!なんだかんだ優しいんやから!ツンデレめ!このこの!」
「のこり10時間59分28秒だ。」
「…ほいほい。」
そして静かに作業は再開しました。
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「終わっっったああああ!!」
現在12時55分です。
ようやく、全ての品を鑑定し終わりました。
グリモアの鑑定は、レベルが3つも上がり、途中から作業効率も良くなりましたが、それでもギリギリでした。
「寝て良い?マジで寝て良い??」
「好きにしろ。」
「グガー!!」
グリモアはキノクニの言葉と同時に、一瞬で眠りに落ちました。
「ふあ…お疲れ様でした。キノクニ様、グリモア様。コーヒーなど、お飲み物は…?」
「いらん。それよりこれらを貰う。」
キノクニが見せた品は、以下の通りです。
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名前:双龍の骨鎖
分類:呪物 Lv.8
特性:任意操作可能
:呪い「不運」
:伸縮自在
説明
双子の龍の背骨をそれぞれ削り出し、
鎖の形に加工したもの。使用者の意の
ままに操れるが、双龍の怨念に呪われ
る。双子の絆で結ばれており、引き離
すことが出来ない一対の鎖。
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名前:蘇生薬
分類:呪薬 Lv.9
効果:死の危機に瀕する者、死んで間も
ない者を蘇生する。
説明
死者をも呼び戻す魔法の薬。外傷や魔
傷には効くが、病に使うと死を早め
る。暗黒の女神が作ったとされる。
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名前:風蹴りの脛当て
分類:足防具 Lv.6
数値:守 90
:魔 210
:運 3
特性:空中を蹴ることができる。(1回)
回数は、レベルに準拠する。
説明
遥か昔、ハーピィの羽根を使って作ら
れた脛当て。特性もさる事ながら、守
備力にも長ける脛当て。運も微少上が
る。
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「これは…何とも癖のある品々を選ばれましたね…良いのですか?呪物も混ざっておりますが…」
「構わん。本当に良いのだな。」
「ええ!持って行ってください!他にもご入り用の物や処分に困る物があれば当屋敷や支店にお立ち寄りください!こちらの札を見せていただけば、サービスさせていただけますし、いつでも私に取り次げます!」
ゼドは笑いながら、黒く硬い長方形の薄い札を渡して来ました。
「これは…魔法がかかっているのか。」
「お分かりになられますか!さすがでございます!その札には私の魔力の波動が込められております!身分証としても使えますので、困った時には是非お使いください!!」
「…そうか。ならば貰っておく。」
「ええ!…それではキノクニ様、この後はどうされますか?どうやら正門にはギルドの面々が待ち構えている様子…宜しければ秘密裏に、宿を手配することも可能ですが…」
「頼もう。少し休む。」
キノクニもまた、グリモアほどでは無いにしろ、疲れていました。
キノクニも人間…恐らくは…です。疲れるのです。
「ではまたお会いしましょう!キノクニ様、グリモア様!お2人の行く末に幸あらん事を!…斧は未だ加工中とのこと。3日後にお受け取りにいらしてください!」
「わかった。世話になったな。」
「こちらこそありがとうございました!」
ゼドのお辞儀を背に受けつつ、キノクニは案内役に付いて行き、無事裏口から脱出し、ゼドが手配した宿へ向かいました。
「…はあ……あのような御仁は初めてだ……」
「頭目。アレは何者だ。」
いつの間にか、ゼドの横に影のように黒い男が立っていました。
「ああ、カゲロウ…彼はキノクニ様。旅人らしいよ。…マリアン殿に勝てるね。」
「あのSSS級魔導師にか?!…どうやって…」
「凄まじい速さで詰め寄り、輝く拳骨で一発だ。痺れたよ…お前も見に来れば良かったのに…」
「俺の任務は頭目の影…しかしまさかあんな男がいるとは…俺は何度も奴に見つかり、その度に殺気を飛ばされた。アレは…まるで魔物のようだったぞ…今まで会った事もない、な…」
「彼は本物だよ…ああ、早く、もう一度会いたいものだ…」
「はぁ…味方のうちは良いが…敵に回したくない者だな…」
「敵などと持っての他だ!出来る限りの支援を約束したよ!ああ…神よ、感謝します…」
「…はぁ…」
こうしてゼド邸での騒動は幕を閉じたのでした。
続きは次回のお楽しみです。




