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第八話 必殺の一撃

 偶然と偶然が重なりあって出来ているのが、現在という日常だっていうのは、なんとなく理解しているつもりだ。ならば今眼前と背後を埋める偶然とやらは、よほど俺達に対して悪意を持っているようだ。


広大であれ(バースト)『ファイヤーウォール』!」


 群体で迫り来るツゥーレムに肉薄して戦い続けていたマイアが、魔法で相手全体を足止めして、俺達が固まっていた場所まで戻っと来る。


「あいつらをまとめて倒しせる手があるのかマイア」


 あれだけの強気をゾナに吐いたのだ、一つくらいは思い付いたのではなかろうか。


「あるにはある。しかしその手はひどく直線的な攻撃での。……お主らであやつをあの廊下に押し戻すことは出来るかえ?」


 廊下って階段に続く一本道のことか。


「メリーさんはバーストって使えるの?」


「ええ、それ以外の中級も風と水ならかなりの数を使えるわよ」


 じゃあイケるかな。こと戦闘に関しては一級品の実力を持つマイアが、自信満々に使おうとしている手なら、廊下に押し込めさえすれば確実にやってくれるだろう。


「では、俺が左右の奴を、メリーさんが中央の奴等を押し込む方針で行きます。マイアは牽制とジョイはマイアの援護を。合図で合わせて一斉に押しこむからな」


「承知したぞ!」


「了解」


「わかったわ、なんとかしてみる」


 マイアは作戦を聞いて元気に飛び出し、ジョイは矢を携え、メリーさんは魔法の構成に取り掛かっていく。

 俺はと言うと、初めて実践で利用する術に、若干に緊張を覚えていた。使用できるのは確認済みなのだが、いかんせん威力や運用に関してはまだ試験段階といったところで、やや不安だったのだよ。日本で機械を作ったり、実験を行ったりしていた時は、準備と検証などいやというほど出来ていたのだが、この世界においての戦いというのは、想定の範囲外が常に生まれていき、あらかじめ用意していた物では足りなくなるのがあたり前。ぶっつけ本番など技師であり科学者の端くれであった俺からすれば、愚かしいとさえ思っていた事であったのだが、ここでは命を盾にして、その愚行を強いられる。


「今だ!!」


 メリーさんの魔法構築が完成に近くなったのを見て取り、叫びを上げる。


「『ストーンウォール』アクトシックス! そんでもって『ウインドボール』アクトシックス!」


 俺はサイドに広がる奴等を漏らさず囲えるように壁を作り出す。しかしいつもは地面から出現させて地面に固定するように出す壁を、固定しないままにその場に留める。そんでもって風の塊でその壁ごと無理やり押し込んでいく。

 マイアに突っかかっている中央の奴等はかなりでかいのが多かったが、サイドに散るのは大抵小さいのだったのでこの力技でも充分なはず。

 だが、ウインドボールを六個同時に操作するのは俺の脳の容量からして限界ギリギリ。まだ単純な動きなんでなんとかなっているが、今の心境は腕を六本同時に動かさなければならないようなものだった。


「どおおりゃああああああああ!!!」


 魔法使ってこんな掛け声をしたりする奴はそうそういないだろうが、まさに俺の今の作業は力技意外の何者でも無かったので必然的にこれですよ。


広大であれ(バースト)『ウォーターボール』!」


 中央寄りになったツゥーレム達に、メリーさんは直径二メートルほどの水の塊を作り出して飛ばしていく。押すというより押し流すなんていった感じだったが、ここに来て初めての水系の魔法に対応できず、敢え無くその体を廊下にまで引き戻すことになってしまったツゥーレム。


「勝機!!!」


 押し込んだ事でツゥーレム達とやや間隔の空いたマイアが、その手にもつハンマーを掲げて疾走する。


「乾坤一擲!! 今こそ我は解封する成り!!! 衝波穿!」


 廊下に流れ込んだ中でも、一番抵抗していた最も大きくなったツゥーレムに、渾身の雄叫びとハンマーの一撃を浴びせるマイア。マジでワイルドだよねあなた。


「砕け散れぇぇぇぇえええい!!!!」


 その全力全開の一撃が当たった場所から唸りを上げ、衝撃の嵐が巻き起こり直線上にいたツゥーレム達を巻き込んで全てを粉砕していく。その風圧は俺らが膝を曲げて姿勢を低くして耐え無ければならないほどに、恐ろしい威力だった。衣服が翻り、砕けた小石が顔に当たり、鳴り響いた轟音は遺跡中に響いただろう。メリーさんなんて悲鳴を上げながら伏せてしまっている。


「なんだよそれ……」


 正直なところ今目の前で起こった光景を信じられないでいた。魔法を使った様子も無かったし、いくら馬鹿力とはいえ、遺跡の廊下の幅が倍に広がるほどの損害を与える直線攻撃を使ってみせたのはどう考えても理解不能だ。直撃を食らったツゥーレムなんてもはや小石のような大きさが精一杯なほどの残骸と化している。


「どうじゃ我が奥義の威力の程は?」


 勝負が決した事を確信しのかマイアはこちらに振り返って俺に向かってドヤ顔をかましてきた。


「すげぇはマジで。腰が抜けると思ったわ」


 いくら頑丈になった俺もあれをくらえばかすっただけで即死だろう。


「驚いたというよりは不可解だと顔に出ておるぞ。フフフ、お主を驚かそうと黙っておいた甲斐があったの」


 なんでトウカといい、マイアといい皆さんは俺を驚かそうとするの!? 今まで気付いて無かっただけで、実は俺っていじられ体質!?


「妾の力の説明は帰ってじっくりしてやるわい」


 是非お願いしたい。


「かぁーー! かなりの実力者なんて思ってたけど、なんだよ今のは」


 俺らの後ろからオッサンが声を掛けてきた。まだ巨体のゴーレムと戦っていると思っていた俺は、驚いて後ろを振り向く。そこには飄々と立っているゾナ、そして遥か後方では関節部分に十数の斧を挿し込まれ、おそらく最後のトドメに頭からかち割られたゴーレムがいた。


「あの斧は数まで増やせるのか……」


「便利だろこれ?」


 そう言って手斧サイズにした双転斧を見せ付けてきた。というか明らかにあっちも強敵だったろうに、たった一人でもう倒してきたのかよオッサン。この人も充分化物だわ。







 

 軽症でしかなかったが、傷の手当てと疲労回復のために少しの休憩をした後に、俺らは一目散で騎士たちに駐屯している階層まで戻っていった。

 あのツゥーレムとの戦闘で、マイアが見事なまでに遺跡を破壊してしまったことは問題ではなかったのではなかろうか? 下へと続く階段まで塞いでしまったし。そんな不安を戻ろうとしている時にゾナにぶつけてみると。


「ああ、それなら心配しなくていいぞ。遺跡ってのはな、なんとそれそのものが一つのゴーレムみたいになっててな。ほっとけば勝手に直っちまうもんなんだ」


「なんという不思議空間」


 魔法って不思議なんて思ってたが、これは完全に永久機関になっているのではなかろうか。ぜひ構造を知りたいものだが、さすがに手が届きそうにない物件だ。


「ということは途中で拾ったそれなり(・・・・)ぐらいのお宝なんかも元に戻ったりするのか?」


「ご名答。だからこそ遺跡ってのは絶大な価値がつく。っていってもゴーレムや魔物なんかも復活したりするから、厄介なものでもあるんだがな」


 それなりといっても、現在では作ることがかなり難しい純度の高い硬質なガラス瓶や、奇怪な形をした花瓶。なんの絵か不明な絵画や、様々な形をした置物等等、どれも技術的視点から見ればかなり価値のあるものだった。それが時間が経てば復活してくるのか。

 そんな風に思いを巡らせながら一階層目戻ってこれた。


「さっそく私たちのテントで見て頂戴ねキドー」


 メリーさんは布で包まれた石版を大事に抱えながら俺へと期待の眼差しをおくってきた。







 石版に刻まれたワードの数は実に百弱にも及んだ。そのうちでメリーさんが知らなかった単語は十個ほど。あとは街に戻ったら神様に聞きにいくしかない。いままで最初の出会いのせいか敬遠していたが、この機会に一度会ってみてもいいかもしれない。

 一応目的の物は発見したし、お宝の確保もかなりの数に及んだので任務はこれで完了ということになった。石版は一旦騎士団お預かりとなり、俺たちは予め乗ってきていた馬車へと荷物を積み込んでブローナスへと帰っていった。


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