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第四話 作戦会議

 なんだかんだあってから、改めて週末に俺の家に集合して今後の計画の話し合いとあいなった。暇なのか? なんて疑問が浮かぶだろうけど、改築工事はリッキー達に任せているし、図書館での調べ物も一段落して、お金の余裕もまだまだある。そんでもって魔法開発も、俺の中では元から予定の内の一つに入っていたから、それなりに乗り気であった。オリジナル魔法の創作なんて面白そうだし、自分だけの必殺技はヒーローにとっても必須スキルであろう事は間違いない。


「それでは第一回、魔法革新計画を開始しまーす」


「うぉー! パフパフパフ」


 ノリが良いんだな姫さま。これが俗にいう御転婆姫か。


「この子達は誰なの?」


 会議を行おうとしている書室予定の部屋には、メリーバンナさんと俺以外に、ジョイとミミル、ビルマイア、そんでもってトウカが机を囲む椅子に座っている。シェリーも入って来て浮遊しているが、どうやらメリーバンナさんには見えていないようなので、傍観するだけのようだ。紹介するにあたって、流石にビルマイアの経歴を知られるのはまずいので、マイアと呼称させてもらった。


「俺んちの家族代表と居候だ」


「……重要で難しい話をする予定だったはずだけど?」


「だから信頼を置ける人を集めたんじゃないか。それに新しい事を考えるには、いろんな人の意見や視点が必要不可欠なんだぜ?」


「なんだか楽しそうねあなた、思ってたより軽い人なのかもしれないわね」


「軽いとは心外だが、常に楽しむことは大事だとは思ってるな」


「まぁいいわ、どうせあなたの力に頼らざるえない状況に変わりはないのだから」


 まぁ見た目子供ばかりが集まってたら、研究所勤めのメリーバンナさんには不満が残るのかな。俺は高校までしか行ってないから、これぐらいの年齢層の話し合いしかしたことないからな。


「……キドーよ」


「なんだよマイア」


「こやつちと妾共を舐めておりはせんか?」


「そうだと思うよ? 実際全員子供だしね」


 地球で言えば高校生以下の子供達と、自分の未来について話し合わなければならないのだ。多少の不満は仕方ないんじゃないだろうか。


「あまり舐められるのは妾の沽券にかかわるので言わせてもらうが、妾は龍人族で、お主よりも遥かに長く生きておる」


「……見た目で判断し侮ってしまったことを心からお詫びします」


「どうしたんだよ急に」


「龍人族は魔法師としても優秀だし、研究所への協力者として名を連ねる人も多いの。なのに私は見た目でその実力を決め付けてしまっていたわ。それでは私の嫌いな貴族と一緒だなって思って」


 ちょっと思考が走り気味になる傾向があるけど、反省が出来るのならこの人の未来は明るいな。


「まぁマイアは本当にアホだけど―――グハッ!!」」


 つい口を滑らしてしまい、空いていた椅子をマイアに顔面へと投げつけられて昏倒してしまう俺だった。


「己の過ちをすぐに省みていける心を持つことは、大変いいことじゃ」







「じゃあ、改めて始めまーす」


 昏倒した俺が目を覚ますのを待ってから会議再開。殺気を放ちまくってるマイアを、ミミルが頭を撫でながらなだめている。なんだかミミルの趣向にマイアの容姿はピッタリ嵌ったらしく、初めて会って以来やたらとスキンシップを試みるミミル。なかなかの刺々しい雰囲気を持ったマイアであるはずなのだが、流石は天然、まるで動じていない。


「といっても俺は開発とか設計なんかは得意分野ではあるが、魔法の知識に付いては大したことないし。他のメンバーもあってそれなりってところだ。なので今回はメリーバンナさんの意見に対して、俺らが発案してりしていく方向でいこうと思う」


「呼び名はメリーでいいわよ。みんなそう呼ぶしね。まあ方法として一番簡単なのは、今だに解読できていないワードをキドーに読んでもらうのが早いんだけど」


 魔法の構成は例えば、ファイヤーボールなら『ファイヤー』と『ボール』という単語を組み合わせる事で効果を発揮している。新しい魔法を作るための方法は二つ。新しい組み合わせを生み出すか、新しい単語を見つけるかである。


「こないだ俺がうっかり詠んじまったあの本とかはどうなの?」


「確かにアレの中身もかなりの未解読のワードがあるらしいけど、そういう未解読な部分が含まれた古代文書は基本的に国が管理していて、読めるのも研究所で言えば所長とか王族、最高位にいる貴族なんかしか許されていないわ。図書館においてあるのも、表紙だけを写した模造品だしね。勿論持ちだそうものなら、極刑間違い無しよ」


 なんでも、危険過ぎるワードが出てきた場合は、その場で封印して歴史から抹消するため、極秘扱いなのだそうだ。そんなのもあるかよ……。箱を開けたら爆弾でしたなんてのは勘弁願いたいが。


「なら組み合わせか?」


「そうね、それなら可能性が無くは無いけど。実はすでに開発されていて、一族ごとに秘密裏に使われている魔法がかなり多いわ。無闇に表沙汰にしてしまったら、場合によっては王族なんかを敵に回しかねない危険性も伴ってしまう」


「秘密であるからこそって魔法は多いだろうな」


 どんな物であれ知られてしまえば対策を講じられて価値が激減することなんてよくある話だ。でも敵にまわすって部分は完全に八つ当たりだと思うんだけど。


「だからこそ、膨大な知識を得た上で、まだ存在しない可能性の高いものを見つけだすのよ」


「それが未開発だって確証はどうやって得るんだ? 国内だったら調べられなくもないかもしれないけど、他国だったりしたら難しいだろう」


「そんなのぉかんたんですよぉ~」


 ここに来てミミル参戦。


「神様に直接お聞きすればいいんですよ~」


 ミミルに出会った当初に教えて貰ってビックリしたのだが、なんでも神殿には神託の間というのがあって、神様からのお告げを聞くことができる場所が大きな神殿にはあるらしい。それを実行するものの徳によっては姿まで現すこともあるようだ。なんとうい暇人神かつ便利な神様だ。勿論聞ける内容に決まりがあってルールにそぐわない場合は返答は無いらしい。


「あいつらも役に立つんだな」


「なにかいいましたぁ~?」


「いや独り言だから気にしないで」


 俺としては厄病神に近い扱いになっているので、世の中に良い影響を与えているあの神様達の姿が少し想像しにくい。みんなは後光輝く壮大なお姿を想像しているだろうが、俺は悪そうな笑みを浮かべて俺を見下ろしている姿しか思い浮かばない。光と闇の神様は会ったことがないのでまだ分からないけどね。


「自然魔法なら四神様に聞いて、付加魔法なら地のドゥッガ様、治癒魔法は光のアグリア様、精神魔法と幻想魔法は闇のダグゥー様、あとは……他にも色々あるけどそれぞれの条件にあった神様に聞きに行けば問題はないはずよ」


 うむ、専門用語なのだとは思うが全く分からんな。自然魔法ぐらいなら分かるけど。要は火、水、風、土のどれかが発生するのが自然魔法に分類される、はず。


「でもさ、組み合わせの方を協力するのはいいけどまだまだ実践するには時間掛るぜ? 俺が勉強しないと駄目なせいだけど、でもメリーは結構急ぎで結果を出したがってるように思うんだけどいいの?」


 俺の質問に固まっているメリーさん。


「………………なんで分かったの?」


「いや、だって流石に俺があの場であんな事口走っちゃったとしても、身元の確認もせずに女性が自分の部屋に男を連れ込むなんてよっぽどでしょ」


「あっ」


「ほほう、そちは見た目によらず、なかなか大胆な女なのじゃな」


「女に連れ込まれるとかキドーの兄ちゃんモテモテだな」


「?」


「……」


 今更気付いた顔をしているメリーさん。そんなに切羽詰まってたのか、しっかりしてるように見えてちょっとドジっ子? 後、最後のトウカさんの無言によるプレッシャーが真横から直撃して辛いです。







 メリーさんは実際の所かなり焦っていたようだ。なんでも彼女の所属する第七研究所の分室、そこの新たな室長選抜が年末に行われるのだが、彼女の分室の室長には貴族出身の若造が選ばれる見込みらしい。貴族が構成メンバーの大半を埋めている研究所では珍しくもない話ではあるのだが、なにやらそいつは根回しと、実績の横取りでのし上がって来た者のようで、実力に関してはからっきしのようだ。将来貴族職に付くための箔付けの為に、研究所に所属しているようで、熱心さの全てを出世と嫌がらせにしか向けていないような、研究者の風上にも置けない、無能を絵に描いて行動力だけ付け加えたような、とんでもなく傍迷惑な男だ。しかも超が付くほどの貴族主義らしく、そいつが室長になろうものならメリーさんどころか、分室の機能停止と同意義だという。そいつが貴族の中で、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵とある爵位の中でも上から二番目の侯爵の三男というから世も末である。


「困難とか苦労なんていくらでもしてみせるけど、あんなのに無駄にされるのは許してやれるものではないわ」


 分からないでもないな。今まで積み上げた物が崩れるなんて事は日常茶飯事だし、それが起こることで得られるものもあるのでそれはいいのだが、それを崩しやがるのが救いようの無いアホでは殺気すら抱くこと請け合いだろう。しかも当然の如くの見下し目線でとか考えただけでも拳を作ってしまいそうになる。


「この国の貴族はアホでも勤まるのじゃのぉ~」


「私の分室は若い子で構成されていて、他の子は目を付けられるのが嫌らしく既に諦め気味なのよ。ならいっそ―――」


「自分が室長になってやろうと」


「ええそうよ。悪目立ちはなるべく避けるべき環境なのだろうけど、アレに上に立たれるくらいなら矢が降り注ぐ戦場に自分から挑むほうがよっぽどましよ」


「なるほど納得。でも年が変わるまではもう二月もないぞ? 新魔法開発なんてぶち上げるぐらいなんだからかなりそいつが選ばれるのを覆すのは難しいんだろう?」


「かなり評価される論文を提出した上に、元研究所の幹部である侯爵からの推薦状も届いているわ。どちらも金で買ったのは見え見えだけど、大きな実績として扱われているわ」


「この短期間で新しい組み合わせを見つける事ができる見込みは?」


「そうね……年末までにこの街からたった一つの小石を探すくらいの確率かしら?」


 半径数十キロのこの街から探すとか難易度高いのに、期限付きとか難易度高すぎるにも程があるだろう。


「じゃあメリーさんの目指すのは」


「当然あなたがいるんだから新ワード発見になるわね。そのために誰にも知れれていない古代書を、手に入れる必要があるわ」」


「でもそれってそもそも、古代書を見ること事態が難しいんじゃ?」


「……方法は一つだけ考えてあるわ、かなり頼りたくはないのだけれど」 

偏見や選民意識ほど無駄なものは、なかなかない。

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