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魔女の呪いで転生十回目! エリスティア・オッペンハイムは今度こそ婚約破棄して悠々自適に暮らしたい  作者: ゆずまめ鯉


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四十四話「穏やかな日」

 王太子が現王妃を告発した結果、元侍女の当時の報告が虚偽だったことが正式に認められ、王妃は身分剥奪の上、国外追放処分が下された。廃妃が産んだ三姉妹の処遇については、まだ幼いことから実母と引き離すべきではないとのことで、廃妃が連れて行くことになった。城に残ると最後までごねていたが、意見が聞き入られることはなかった。

 虚偽報告をした元侍女は、一年間の無報酬労働処分となった。場所は城内でも過酷とされる炊事場だ。

 もっと重い処分を下すべきだという厳しい意見もあったが、十年前の罪を正直に告白したことで、王太子が減刑を求めて国王陛下に掛け合った。脅されており逆らえなかったこと、遠くに引っ越しながらもずっと後悔していたこと、王太子の要請に応じたことを考慮した。

 前王妃の無念が十年越しに晴らされ、王太子だけでなく、前王妃に世話になっていた側近や従者など大いに喜んだ。

 王太子は、前王妃が眠る墓所にお参りしに行くというので、私も付き添っていた。前王妃は、シルヴァーフォード城にある広大な中庭で埋葬されている。花が好きだったことから季節の花々が植えられ、色鮮やかだ。


「お母様に、ご報告は済みましたか?」

「……ああ。伝えたよ」

「あれ、そのお花……マドンナリリーですね。群生する場所を思い出したんですか?」

「……ん?」


 私ももらったことのあるマドンナリリーが墓石に供えられていた。生花を目にしたのはこれで二度目だ。育てにくいというのに、この花が自生している場所があるのなら今度こそ見てみたい。

 以前、王太子に渡された際は、学校に向かう途中で見つけたと口にしていた。その翌日に摘んだ場所を尋ねたところ、なんと『忘れた』と言われてしまった。

 その時のやり取りを伝えると、王太子は私に「忘れた」と返答したことを思い出したらしい。


「この花は…………僕が育てた花だ」

「え、そうだったんですか?」

「ああ。何度も育てるのに失敗していて、ようやく初めて咲いた日が、キミの誕生日の当日だったんだ」


 だから、朝一番に会いに来たんだと打ち明けられた。学校へ行く時に着用する、紺色の服ではなかった理由を今頃知ってしまった。


「それなら、どうして嘘をついたんですか?」


 どんな事情があって嘘をついたのか知りたくなった。


「……僕が育てたと言えば、重すぎる気がしたんだ。それに、まだ一輪しか咲いてなかったから、格好悪いと思った」

「それで『忘れた』って答えたんですか。見せられないから?」

「……うん」


 私によく思われたい一心で、咄嗟に吐いてしまった嘘だと打ち明けてくれた。


「それなら、正直に言ってほしかったな」

「……ごめん」

「仕方ない。今回だけですよ? それで、今度こそ、案内してくれますか?」

「うん。見に行こう」


 王太子に右手を差し出されたので、そっと手を重ねると、マドンナリリーが咲いている場所まで連れて行ってくれた。墓所からはそう離れていなかった。きちんと手入れを施した花壇に、真っ白くて大きなマドンナリリーが三本咲いている。群生しているところを初めて目にした。ユリ特有の甘い香りがした。


「一輪しか咲かなかったのに、よく摘めましたね?」

「キミの誕生日だったから、特別に」

「あのマドンナリリー、押し花にしようとしたんですけど、丁度いい大きさの重しが見つからなくて、そのまま飾ることにしたんです」


 枯れてからも、捨てることなく飾っていた。今も生けたままだ。机の上にあるものは、絶対に触れないでほしいと使用人に言付けしてある。


「そうだったのか。枯れたまま机に置かれていたから、てっきり、キミは花が好きじゃないんだと……」

「見たんですか?」

「王都からいなくなった日に、な。手がかりを求めて部屋まで行ったんだ」


 それで好きではないと勘違いしたのかと納得した。確かに好きか嫌いかで聞かれるとどちらでもない。でも、育てることがとても難しいと耳にすると興味はある。


「実は、あのマドンナリリー、今もありますよ」

「え?」

「清掃に入った使用人に、何度か間違えて処分されそうになってるんですけどね。枯れても綺麗だから、そのままにしてあるんです」

「……そうか。それならよかった」


 使用人が捨てようと運んでいる最中、事情を知る別の使用人が慌てて注意する、ということが二、三度あった。エリーゼはその都度、『お嬢様の持ち物を勝手に移動させるなんて!!』と憤慨していた。


「新たに摘もうか?」

「いいえ。時々、こうして足を運んで眺めたいので、そのままの方が嬉しいです」

「わかった」

「天気のいい日に、テーブルと椅子を設置して、ゆっくり昼食を取るのもいいですね」

「すぐに手配しよう」


 少し離れた位置で待機していた側近を呼ぶと、王太子は食事の用意をするよう言いつけた。

 それほど待つことなく、昼食の準備が整った。柔らかい白パンに、山盛りのローストビーフ、ローストポーク、チーズ、茹でたニンジン、ソラマメ、リーキ、飲み物はオレンジジュースとミルクが並んでいる。

 白パンを口にしたのは久しぶりだ。昼食を堪能しながら、今後やりたいことについて話し合った。

2026/5/6 本日二度目の更新です。連休最終日であまりアクセスはないのですが予定通り載せました。

明日もこのくらいの時間帯に45話、そして46話が更新できたらいいなと思います。

完結予定日は5/9です。

推敲は一度しただけなので、タイトルやらなんやら後から色々と直す場合もございます。

よろしくお願いします。

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