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トカレスカ騎士団  作者: 観測者エルネード
第一章:騎士団設立篇
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堂々巡り

「ああは言ったものの、人手が足りん」

 執務室でアニールが漏らす。ティール港町やメルカ教団からの報告が書かれた木板に共に目を通していたエルベン、イヴイレスもそれぞれ天を仰いだり頭を抱えたりしている。

 超異形の力の残骸をバルト一派の手に渡る前に確保する。口で言うのは簡単だが、その為には大陸中を駆け巡り支配せねばならない。100余人しかいない小さな騎士団では達成は到底不可能な目標であった。

「しかも、向こうは力を吸収してその場を離れるだけでいいんだからな。こっちは確保したらずっと管理しなきゃならないのだが……」

 イヴイレスが問題点を上げ、再び頭を抱える。

「ーーーそれ以前に、俺達はまだソルドラス大陸の現状を知らない」

 エルベンが地図を広げ、大陸の北と東を指し示す。かつてフォルモ帝国とヴェール連合国がそれぞれあった所だ。

「俺達が今いるのはかつてエイジリア王国が支配していた領域の東部分。でも、王国の南端と西端、北の現状の解明は進んでいない有様だ。そうだろ、アニール」

「耳が痛いな。そうだ、エルベン。……まずは大陸の現状を調査し、理解するところから始めなければいけないか」

 アニールはすぐさまアルトとレイザを呼び出し、情報提供と協力を依頼する。

「ーーーというわけでアルトさんはエイジリア王国が使っていた城や砦、とにかく今でも仮の拠点として使えるような場所の選定をお願いします」

「承知した。早速取り掛かろう」

 アニールは次にレイザに眼を向け、唇を湿らせてから切り出す。

「……レイザさん。貴女は光の民の里の一員でもある。私は今すぐにでも、協力できる相手が欲しい。ーーーまずは光の里の族長にお目通り願えないだろうか」

 レイザが眉をしかめて難しい顔になり、考え込む。アニールの言葉を聞いていたアルトの眼が揺らぐ。

「……お言葉ですが、団長。光の民は普人類に対して強い拒否感を抱えているのです。利用され、差別された歴史がある故です。エイジリア王国ではそれが著しかったですが、フォルモやヴェールでもかつて迫害されたこともあります。外から人がやって来るのを彼らは良しとしないでしょう。ましてや、今の騎士団にはかつてのエイジリアの兵もいます」

「……耳が痛いな」と、アルトがぼそりと漏らす。

「レイザさんの言いたいことは分かったが、我々の敵は大陸存亡の危機を齎す可能性がある。それを前にして形振り構っているわけにはいかない。何より、光の民であるレイザさんや希少な天使のユーアちゃんは今のところトラブルがあまり起きていないじゃないか」

 種族が違うことによるトラブルが起きないではなかったが、今のところ大きな問題に発展したことはなかった。

「ーーーそれでも、血に刻まれた屈辱はそう癒えない。それを覚悟の上で参るのでしたら、もう何も言いません」

「……よし。ではユーアちゃんに声をかけてくる。レイザさんは出発の準備をお願いします」

「待ってくれ、団長。俺も同行したい。ーーー元エイジリアの兵の顔がなければ、過去とちゃんと向き合ったことにはならない。仮の拠点の選定は他の奴にやらせるから、同行させてくれ」

 アニールとレイザの瞳がぶつかり、レイザが少し頷く。

「分かった。ではアルトさんも一緒に行こう」




 街の一角、切り株の上には翼が靡いている。その対面では、かつてエイジリア王国に仕えていた兵士が歴史を彼女に教えている。

「……かくしてトラマオス3世は周辺国を征服し、エイジリア王国の支配下に置いた。この戦いがきっかけでエイジリア王国は一気に列強に躍り出たんだ」

「あの、トラマオス3世って武勲は凄いんですけど内政はどうでしたか?」

「うーん、昔のことだからなあ……。といっても内政に関してはあまり聞かないからパッとした功績は残せなかったんじゃないか」

「歴史の講義か。精が出るな」

 ザッ、と止めの足音を鳴らしてアニールが声をかける。

「講義中済まないが、ユーアちゃんに話がある。講義はまた後の機会にしてくれないか」

「ははっ、団長の言葉とあらば」

「アニールさん……いえアニール団長、何か用事が?」

「光の里に行こうと思う。ユーアちゃんを連れていきたいが、どうだ?」

 ユーアは空の王国の反体制派によって地上に遣わされた使者でもある。地上で様々な繋がりができることはユーアの望みにも繋がるだろうとアニールは考えた。

「行きます。……その、空の王国のこと、光の民の皆さんに言ってもいいですか?」

「……私が認めた範囲だけ、な。トカレスカ騎士団の活動に支障が出るのは困るし、今のユーアちゃんはトカレスカ騎士団の客員なのだから」

 ごくり、と唾を飲む。翼が少し立っている。緊張しているようだ。

「……大丈夫。私たちやこの街とも貴女は馴染めた。光の里でも大丈夫だと思うから」

「いえ。私には私の使命があります。……使命が果たせるか不安です。が、頑張ります」

「その意気だ」

 アニールが肩を叩き、翼が少しやわむ。



 一週間後、アニールが選んだメンバー達がメドゥーエク街の門を発つ。馬アレキテルに乗るアニールを筆頭に、アルトとレイザが後に続き、ウインダムスを含めた4人の団員が彼女たちを守るように囲っている。

「では行ってくる。大陸の平和のために」

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