【7】
あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!
では、今年は男子会からです!
軍を返しに行っていたギルバートが戻ってきた。セアラや息子も一緒ということで、その護衛をメイたちの代わりにしていた討伐騎士のナンシーも城に戻ってきたのだが、初対面だったがインパクトの強い人だった。彼女とシャーリーに連れられて、メイとニーヴが女子会に行ってしまったので、ルーシャンたちも対抗して男子会をすることにした。アイヴィー城の仮眠室に集まる男たち。と言っても、ルーシャンとトラヴィス、引きずってきたジーン、そして、なぜか参加しているギルバートの四人だ。
「というか、なぜ閣下まで?」
最年長のトラヴィスがツッコミを入れた。何気になじんでいるが、彼は最年長である。念のため。
「いいだろ別に! 俺はメイを手放したくないの!」
「え、姉さん、公爵の愛人になるんですか?」
それはそれでセアラが喜びそうな気もする。いや、殴るか? 夫を。
「ちっがう! 王子の愛人になりそうなんだよ」
「それは無理だと思う」
思わず素でツッコミを入れてしまった。メアリ・アストレア・ウィンザーという女性を多角面から見て、それだけは無理だと思う。
「むしろ、官僚か軍吏にした方がいいのでは?」
トラヴィスもそんなことを言う。ルーシャンは思わず、「それだ!」と声をあげてしまった。
「いや、そうするよりも愛人にする方が身動きとりやすいだろ」
「……ギルバート様はとりあえず、愛人から離れませんか」
ついにジーンにまでツッコミを入れられた。ギルバートの矛先がジーンに向く。
「というか! お前が煮え切れば済む話なの! エドは人のもん取るタイプじゃないし! ウィルはわからんけど!」
誰?
「エドワード殿下なら、変人は嫌だと言ったのでは……」
まさかの王子。そういえば、ギルバートとこの国の双子の王子は同世代……というか、もしかして同い年か? なるほど。納得した。
「言ったなぁ。今はだいぶ落ち着いてるんだけどなぁ」
「この前、三階から飛び降りて池に頭から突っ込んでましたけど」
「うわそれ久しぶり! 王都ではおとなしかったぞ」
「一応、メイも緊張してたんじゃない?」
「あれが緊張するようなタマか?」
「公爵は姉さんをなんだと思ってるんですか」
ルーシャンはツッコミを入れたが、ルーシャンも『メイだから』で済ませてしまうことはあるので、人のことは言えない。
「というか、ジーン、姉さんと何かあった? あったよね?」
「おま、姉を揺さぶれないからって俺にカマかけるな!」
すでにだいぶ酒が入っているジーンである。ルーシャンは飲みなれないのでちびちび飲んでいるが、ジーンとギルバートは半分出来上がっている。自主的に飲んだギルバートはともかく、ジーンはほか三人が飲ませたのはある。飲ませてあることないこと吐かせようと言うことなのだろう。
「姉さん、押しに弱いから押しまくればなんとかなる気がするけど」
根が面倒見の良いメイは、押しに弱い。あんな感じだが、結構弱点だらけだ。攻略方法が分かっていれば何とでもなる。わかっていて、ルーシャンも甘えて見せるふしはある。
「たぶん、姉さんもジーンのこと好きだし」
「まあ、嫌いなら同衾したりしないだろ」
ギルバートの爆弾発言に、さしものトラヴィスさえ噴出した。ルーシャンも目を見開いて隣のジーンを見る。真っ赤だ。本当なのか。
「え、ジーン、メイと結婚すんの?」
「……しない」
うめくような低い声がトラヴィスに返答した。まあ、しないだろうな。ジーン、メイに振り回されている。
「え、それは添い寝しただけだよね、たぶん」
大好きな姉の夜の事情などあまり首を突っ込みたくないが、かつてメイの身に起こったことを考えると、ただ添い寝したとしか思えない。何しろ、弟のルーシャンの手を振り払ったことがあるほどだ。おそらくメイは、若い男が怖いのだ。信頼しているだろうジーンから無体を働かれれば、メイはいつもの調子ではおられまい。それが分かっているジーンも、手を出せないはずだ。
「メイはジーンとの同衾がお気に入りみたいだからなぁ」
「変な言い方しないでください……」
うなだれたジーンが弱弱しく言葉を吐く。思わず、ルーシャンは彼の背中を叩いた。
「これもう、メイを押さないとだめなんじゃない?」
「むしろ、押して駄目なら引いてみる?」
トラヴィスとルーシャンが困惑気味に目を見合わせた。これはもう、たぶん、メイに問題がある。いや、ジーンがヘタレなのは否定できないけど。
王都から帰ってきたメイが比較的落ち着いて見えたのは、ジーンが一緒だったからだろうか。だとしたら、我が姉ながら可愛らしい。
「……引いても、駄目だろ」
「うん?」
酔いが回って半分眠っているようなジーンが口を開いた。視線が彼に集まりが、ジーンは顔も上げない。
「あいつは確かに変人でひねくれてるけど、人のためにいつも必死だ。……なのに、自分が危機に陥っても、悲鳴一つ上げられないんだ……」
だから、俺が見ていてやらないといけないんだ、とジーン。そこで彼は落ちた。顔をつついてみるが、完全に寝ている。
「……よく見てるよなぁ」
ギルバートもしみじみと言った。トラヴィスがルーシャンに、「メイが声をあげられないのは昔から?」と尋ねた。
「まあ、そういうところはあったと思う。何かあっても、自分のことだと口をつぐんじゃうんだよね」
思えば、昔からそういう傾向があったのだ。そのことに、ジーンは気づいたのだ。
「ルーシャン、顔がゆがんでるよ」
トラヴィスに指摘され、ルーシャンは手で顔を触った。
「姉さんにジーンを激押ししたのは僕だけど、取られると思ったら寂しい……」
「お前も大概シスコンだな」
「もうシスコンでいいよ」
それでいい。ルーシャンはメイが好きだ。
「てか、お前も酒に強いな。遺伝か?」
かなり出来上がっているギルバートがルーシャンに向かって言った。そういうと言うことは、メイも強いのだろう。
「いや、こんなに飲んだのは初めてなので分かりません」
「えっ、そうなの?」
逆に驚かれた。こう見えても、ルーシャンは十九歳である。そんなに不自然ではないと思うのだが。
「でも、母は強かったですね。父は飲みつぶれてその辺で寝てた記憶があります」
「ノエルさんが? へえ」
多分、ギルバートの方がルーシャンの両親の記憶をはっきりと持っている。なんとなくそれがうらやましい。ルーシャンは姉のメイよりも記憶力はいいが、両親のことをよく覚えているのは、やはり年上のメイだった。
「痛っ」
聞き役に徹していたトラヴィスが急に悲鳴を上げた。見ると、彼の手を小鳥がくちばしで突っついている。
「え、何?」
「魔法鳥だな」
文字通り魔法で作った小鳥だ。伝令などに使っており、つまり何らかの伝言を持っている可能性が高い。トラヴィスがつつくと、その鳥はそのまま二つ折りの小さな紙になり、彼の手の中に残った。ルーシャンがポリポリとナッツを食べていると、トラヴィスは急に立ち上がった。
「どうしたぁ?」
「キャ、キャリーが産気づいたって」
「ああ、予定日、もうすぐだよね」
少し早いが、早産ではない。三日くらい誤差だ。
「初めてだっけ? 男があんまり慌てても、邪魔だって言われるぞ」
「ギルバート様、それ、体験談ですか?」
ルーシャンが尋ねると、うなずかれた。そうなんだ。まあ、ルーシャンも分娩中の部屋から追い出されるお父さんを何度か見たことがある。
ルーシャンとギルバートが特に焦らず話をしていると、突然、ルーシャンはトラヴィスに腕を掴まれた。
「一緒に来て!」
「ええっ!?」
トラヴィスも鍛えている男なので、ルーシャンはあえなく引きずられる。というか、ルーシャンは医者だが、産科はそんなに見たことがないのだが!
ギルバートの、「気をつけろよー」という声だけ響いた。というか、ジーンのことを彼に丸投げしてしまったが、よかったのだろうか。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
何も完結しなかった2021年ですが、今年は完結する…はず。




