小さな一歩
(やっと落ち着いた……)
ほぼ見学気分でやってきたけど、今日は
大変な1日だった。
アニメって本当にすごいんだな。
普段何気なく見てるけど、それでも裏側がこんなに
慌ただしく移り変わる作業とは思ってなかった。
「私も、今日はこれで失礼します」
まだ、少し打ち合わせをするという伊藤さんに
挨拶をして、スタジオをあとにした。
いつの間にか晋太さんは、次の仕事に移動していたし
私はこの後特に予定もない。
と、なればやることは一つ。
(この修正した部分の脚本、もう少し練ってみよう)
帰り道のカフェに入って、ホワイトモカを1つ。
甘いものはもう少ししてから食べよう。
やっぱり、いつになってもこのスタイルが1番落ち着く。
だいぶまとまったと思っていたけど、改めて見ると
荒削りにもほどがある。仮にも、私は脚本家なんだろう。
だったら、もっと向こう側の人にうまく伝えられるはずだ。
(ここは、この言い回しじゃないほうがいいかもしれない
考えてみれば、この後こいつとこいつが喧嘩するんだから
この人の立ち位置はこうで……)
『俺は、まだ皆で歌っていたいよ』
(そうそう、この後自らの意思で去っていくこのキャラ。
だから、今だけは皆で歌っていたいと、そう思いながら…)
『だから、もう一度ステージに立とうよ。
もう一度、皆で踊ろうよ』
「おぉ、ゲームストーリーとは少しセリフが違うけど
それでもあのストーリーの感じは損なわれてない」
やればできるじゃないか、自分。
「…はい、庵ちゃん、ガトーショコラ好きでしょ」
「うわぁっ、びっくりした、宏太さん…なんで」
「ははっ、こんな会社に近いカフェに居たら
前通ればわかるでしょ!今日からアニメ現場に
入ったんだって?すごいねぇ〜〜〜」
「私は全然すごく無いです、晋太さんの
アシスタントですし…でも、新しい発見はいっぱいでした!」
「そっか、前向きなら良かった」
「あ、ガトーショコラいただきますね」
「このタイミングかい…あ、そうだ、庵ちゃん今日
会社よったりした?まだ寄ってない?」
「今日は〜〜、まだ帰れてません、今から帰ろうかと
思ってたところなんですけど、なんでです?」
「一次選考の結果が今日届くって、美東さんが」
「……一次選考?なんの?」
「え?小説の…コンクール…っえ?」
「今日!?届くんですか!?」




