05話 料理でGO!(前編)
ベタなお題でベタな展開は、やっぱり難しいです。
魔獣が見つめあい、俺の全身から汗が噴出した。最後の料理を前にして俺は息も絶え絶え懇願した。
「もういい加減にしてくれぇ」
話を24時間ほど遡って説明しようと思う。
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俺の右と左に鎮座する仏頂面の美少女二人。片や討伐の成果を聞きたがり、片やパーティの問題を話し合うと言う。俺としてはどちらも、問題なくこなせるミッションだったはず。
デンシュや宿屋の下働きどもが始めた野次に、二人とも機嫌を悪くしてしまったのだ。怒れる女性はモンスターより怖い・・・これは親父が良く言っていた台詞だ。幼い頃から繰り返し聞かせられた台詞と、怒れる母の姿がオーバーラップして、俺の思考を鈍くし、体を強張らせた。
キョクセンは自分がモテている話でも無く、妹の色恋沙汰には我関せずといった感じだ。勝負は明日とレザンが宣言し、解散となった。ヒマリとスイセンはぶつくさ良いながら去って行った。他のメンバーは店の前を改造し、キッチンだ審査員席だと騒いでいる。
俺はどこかに出かけようとしているヒマリに声をかけた。
「一日で料理が上達するとは思えない。なら後は食材の破壊力にかかっているわ!最高の戦闘力を手に入れるのよ!」
瞳が燃え上がっていて、まるで昭和のスポ根のようだ。気圧されている俺を尻目に歩き去ってしまった。その背を見送るように、タンブルウィードが西部劇の様に転がっていった。
ならばとスイセンに声をかけた。こんな不毛な争いは止めさせなければならない。
「料理の腕は同程度だと思います。なら後はインパクトです!最高のインパクト与えるのです!」
とっても不安な一言を残し、風のように走り去ってしまった。こんなに足が速かったのかと舌を巻いた。その日は二人とも遅くまで戻らなかった。
翌日、快晴の空の下、急ごしらえとは思えないキッチンスタジアムが完成していた。
魔王城の前とは言え、人間とはお祭り好き・イベント好きなんだなぁ、と一人ごちた。
マイクを握ったキョクセンはご機嫌にレフェリーを務めている。
「レディースアンドジェントルメンッ!!今日はお日柄も良く、足元が悪い中うんぬんかんぬんっ!」
「「いいから速くやれ~!!」」
「さて青コーナー、アムール亭の看板娘、ヒナタ嬢~!!ツマミ食いで鍛えた舌は侮れません!身長152cm、体重がふっ!!」
キョクセンが冷凍サバを顎に食らってひっくり返った。「なんでそんな事知ってるのよ!?」とヒナタ嬢。あ、キョクセンが立ち上がった。口からダラダラと血を垂らしている。
「続いて赤コーナー、当パーティーの紅一点、スイセン嬢~!料理当番をすべて干し魚と干し肉で済ますインスタント娘~。身長154cm、体重げふっ!!」
腹に冷凍マグロの直撃を受けて吹っ飛んでいった。暫く起きて来れないだろう。気絶したキョクセンからレザンがマイクを奪い取った。コホンと優雅な咳払い。そして・・・。
「試合、始め!!」
二人が猛然と食材の山に突っ込んでいくのが見えた。俺はこっそり逃げ出そうとしたのがバレて、ボルドーに簀巻きにされている最中だ。嫌な予感で全身が震えてきた。
長くなりそうだったので、前後編に分けました。次回もよろしくお願いします。




