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魔王の宿屋へようこそ!  作者: 風鈴くぅ
辺境都市ホルンブルグ編
20/21

19話 道中にて・・・

 辺境都市ホルンブルグ。南に森、東に海、東に首都とを繋ぐ街道の交わる城砦都市である。

 南の森を抜けると古代帝国アザレアが存在するが、森の中に存在する魔王城を恐れてか、この百年ほどは攻めて来る気配な無かった。

 そんな訳で、規模の大きいとは言えないホルンブルクではあったが、つかの間の平和を謳歌し、それなりに繁栄していたのであった。


 その様な城砦都市と南の森とを繋ぐ細い街道を、少女二人、ゴブリンの様な肌色をした男三人、ボロを纏ったゴブリン一人の奇妙なパーティーが北上していた。


「やっと見えてきたわね。なかなか立派な城壁じゃない」

「百年程前までは、南方の帝国と小競り合いが続いてたし、魔王が住み着いてからは魔物と戦う最前線になったし、争いは耐えないみたいだよ」


 ヒマリが眩しそうに城壁を眺めていると、歴史に詳しいキョクセンが、嬉しそうに説明し始めた。


「もっとも、そんな魔王も十四年程前に消滅してるし、今の魔王は城に引きこもって出てこないみたい」

「消滅って、どう言う事?」

「人間の方には中々情報は流れてこないんだけど、噂では今の魔王が、先代の魔王を食い殺したらしいんだ」

「そんな事しないわよ!」


 ヒマリが声を荒げて地面を蹴り付ける。近くの木々から、驚いた小鳥がバサバサと飛び立っていった。

 怒りに気圧されたキョクセンが、しどろもどろに言い訳を始めた。


「いや、ホントに人間には分からないんだって、只の噂なんだから。分かってるのは、今の魔王が現れるのと同時に、先代の魔王が消えた事ぐらいさ。ていうか、何で怒ってるの?」

「怒ってないわよ!」


 足音も荒々しく、ヒマリは先頭まで歩いていった。



 =====(ヒマリ視点)==================================



 ――――――まったく腹立つんだから。私が父様と母様を食い殺す訳ないじゃない。

 大体、私が物心付いた時には二人とも、もう居なかったんだから――――――――


 あれ、とヒマリは腑に落ちない事に気づいた。

 二人とも、何故死んだんだろう。レザン達も詳しく話してくれる事は無かったので、自分も特に疑問に持たなかったのだ。


 ――――――父様と母様の事を知りたい。ううん、私自身の事だもの。

 食い殺している訳は絶対に無い・・・と思う。いくら魔王でも、そんな、そんな――――――


 帰ったらレザンに問うて見ようと、強く心に決めたのだった。



 ==============================================



 ヒナタはとても困っていた。

 誰かが困っていたら助けたい。たとえそれが見も知らぬゴブリンでもだ。助け出す事に何の異論も無い。だが・・・。

 ヒマリは『絶対助けるんだから!』と息巻いているが、正直、何の手立ても無い。

 ゴブリンを助ける為に人間と戦うとなると、自分達も人間から追われる身となるかも知れない。

 自分達は社会的地位も低く、裁判等で勝てる見込みは無かった。

 となると忍び込んで連れ出してくるか。うん、バレたら俺達は立派なお尋ね者になるだろう。

 一直線に突っ込んで行きそうなヒマリを、止める必要があるな。


「なあなあ、ヒマリさん。ここは慎重に作戦を立てようじゃないか」

「どうしてよ」

「相手が返さざるを得ない状況にするには、弱みを掴んだり、知恵を絞る必要があるんじゃないだろうか」

「作戦ならあるわよ」お世辞にも立派とは言えない、小さな胸を反らしてニヤリと笑った。「買い戻せば良いじゃない」

「は?」

「だ・か・ら、その金持ちからゴブリンの妹さんを買い戻すのよ」

「そのお金はどうするんだよ!?」

「自分で言うのも何だけど、私はちょっぴり金持ちよ。ゴブリンの一匹くらいどうにかなるでしょ」


 ゴブリンの相場は分からないが、ヒマリが意外とちゃんと考えてる事に関心した。やれば出来る子だったんだ。


「もちろんゴブリン兄弟には、借金を返し終わるまで宿屋で働いて貰うわ。どう?良い考えじゃない?」


 これには皆、拍手をして感心した。ゴブリン兄なんて涙を流して喜んでいる。うん、無事に解決しそうだ。良かった良かった。


 俺たちは上手く行く事を確信しながら、辺境都市ホルンブルグの門を潜ったのだった。

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