26、エンディング
その後、私とリア・ソリスは、彼女の屋敷に住むことになったが、婚姻の披露が終わってからも、幾多の祝賀の席に招かれることになった。あまりに多忙なために、さすがに精神的肉体的に疲れを覚えた私は、とうとう地球の慣習を実行すると周囲に告げた。リア・ソリスと新婚旅行に出かけることにしたのだ。
最初の目的地はアルマダの隠れ里。最後のスレダーとなった、ナティス・オカピーをふるさとに送っていくためと、悲劇の歌姫オルパ・デスリーにゆかりの品を手に入れるためだ。
火星最大の悪名を誇ったサ・バンも、もとを正せば、ひとりぼっちの哀れな男に過ぎなかった。その墓に、せめてオルパの身につけていた物でも一緒に葬ってやれば、彼らの魂も少しは安らぐのではと考えたのだ。
旅行の準備をしている最中に、嬉しい知らせが飛び込んできた。ラング・ランドがリア・ソリスの侍女のナデレードを、正式に妻に迎えたいと申し込んできたのだ。リア・ソリスとわたしは喜んで、彼女の侍女としての勤めから解放してやったことは言うまでもないだろう。我々の新婚旅行が終わり、再びヘリウムの地を踏むときに、彼ら二人の婚姻の儀がとりおこなわれることに決まった。
ホロヴァス老人はというと、いまだにあの塔のまわりで毎日癇癪を連発していた。ゾダンガ再建とともに、あの塔の建設続行も決まったが、大幅な人員削減は致し方ないところで、日々進まない様子にいらだっているとのことだった。ゾダンガの再建に関しては、いずれ私がその指揮をとることになっていた。これからはヘリウムの姉妹都市として、復興していくことになろう。
新婚旅行には、カーソリスが新たに設計した、新造船が使えることになった。今までの飛行船とは一線を引く、斬新なデザインの船体は、強力な火器を持ちながらも今まで以上に高速が出せるように設計されていた。空気の抵抗を少しでも減らすように、なめらかな流線型の船体には開閉式のハッチがあちこちにあり、そこから必要に応じて砲台がせり出す仕組みになっていた。推進装置もこれまでの物に改良を加えて、超高速航行時でも極力振動が出ないように工夫されていた。船体側面にはヘリウム王家の紋章が描かれ、そのすぐ後ろに”シス号”と名前が入れられていた。この舟を先頭として護衛の3隻をお供にし、バルスームでのジョン・カーターの足跡の地を辿ってみるつもりだ。
最初の目的地アルマダに向かう途中、何もない平原の上を飛行中、私とリア・ソリスはデッキのテーブルで二人きりの自由を謳歌しながら、いつものようにジェタンの駒でゲームに興じていた。ヘリウム軍の王女の駒はリア・ソリス。
そのそばにいて、いつも王女を守っている王の駒には”私”の顔が刻まれているのは言うまでもない。




