エピローグ
僕は退院してからも、しばらく左腕にギプスをつけて生活する事になりました。
その事を話すと、何かと不便だろうからと、差し入れを持ってきたり、世話を焼きに来てくれる人が結構いて、僕はうっかり二次災害で修羅場を引き起こさないよう、それからしばらく来訪のスケジュール管理にはかなり気を使う事になります。
女の子がやって来た時にアポなしで来客があった時は肝が冷えましたが、その時の来客が溝口さんだったおかげで、なんとかトラブルもなくやり過ごせました。
「やあ一真くん、腕怪我したんだって? 大丈夫かい?」
「怪我したのは左腕ですし、ちょっと骨にひびが入った程度なので大丈夫ですよ」
ギプスを付けた生活にも慣れた頃、長谷川さんから電話がありました。
「そうかい、そりゃ良かった。良かったついでに、近々また別れさせ屋の仕事をお願いする事って可能かな? もちろん無理そうなら断ってくれていいんだけど……」
「いえ、問題ありません。明日にだって出来ますよ」
「そりゃ頼もしいね」
二つ返事で仕事の依頼を引き受けた僕は、早速スケジュール調整をします。
琴美には琴美の生きる世界があるように、これが僕の生きる世界です。
これからも僕は、琴美のような明るく優しい世界に生きる人を羨ましく思う事は何度もあるでしょう。
けれど、今僕が歩んでいるこの人生は、紛れもなく、僕が自分の意志で選んだものですし、その選択に後悔はありません。
だからこれからは、人に誇れるような人生じゃなくとも、せめて心の中だけでは自分の人生を胸を張って生きようと思います。
これもまた、僕の選んだ道です。