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決着と新たな懸念

おかしな点などありましたら教えてくださると嬉しいですよろしくお願いします!




悠に振りかかったポーションは、小さい擦り傷などを、時間を巻き戻すかのように修復していく。



患部は淡く輝いていて、治療しているだけなのだが、とても幻想的に見える。




(コレが回復ポーションか。…んっ。……この感じ…掴めた!!)



悠は右手に魔力を収束させる。


少しずつ集まった魔力が淡く輝きだす。まるでポーションのエフェクトのようだ。


(込める魔力は50ほどで大丈夫か。)




悠は右手を男の方に向け、収束させた魔力を解き放ち、魔法名を唱える。


「エクストラヒール!!」


淡く輝いている光は、男に飛んでいき身体を優しく包み込むように広がっていく。


男の身体中の傷は、時を巻き戻すかのように修復されていく。




(……イメージをしっかり持つためとはいえ、安易なネーミングだよな…。でも。上手くいって良かった。)





「おい、おっさん!起きろ!!」



倒れている男に軽く蹴りを入れ、叩き起こす。

怪我人に対して、酷いと思うかもしれないが、今は、ゴブリンロードと対峙しているから仕方ないと思う事にする。




「……うっ…。おれは…!?って何で傷が治ってんだ!?」




「俺の回復魔法で、おっさんの傷を修復した。今から……俺があの化け物狩る。おっさんは逃げろ!!」



足手纏いになるくらいなら、逃がそうと思っての発言だが、男は離脱しようとしない。



「おっさん!早くしろ!今、アイツは俺の魔法を警戒してるが、そろそろ仕掛けてくる頃合いだ!戦闘になれば足手纏いになるから、早く逃げろ!」





「…助けてもらっといてすまねぇが、俺にはまだ、助けなくちゃなんねぇ奴がいる。だから、そいつを置いては逃げられねぇ。」



悠は辺りを見渡す。


すると、ゴブリンロードの近くに、黒髪のロングヘアーの女の子が倒れている。


外見は中学生のように見えるが、成長が遅いだけかもしれない。




(あの子のことか…。あの子は、おっさん程重症じゃないから、魔力を10くらいかな。)




右手に魔力を収束させながら小石を握る。


左手に収束した魔力は淡い輝きを放っている。





「おっさん!ゴブリンロードは俺が引きつける!おっさんはその隙に女の子を連れて逃げるんだ!」



「……何から何まですまねぇ!…この恩は、絶対返す!……頼んだ!!」


男の言葉を最後に、悠はゴブリンロードにストーンバレットを発射する。


ライフルをはるかに凌ぐ速度の弾丸がゴブリンロードに襲いかかる。




「…!?グギャァァ!!!」




弾丸は、ゴブリンロードの右太腿を貫通する。


たまらずゴブリンロードは咆哮をあげる。

その隙に女の子にヒールをかける。男は礼を告げ女の子を抱えて村の方へ走っていく。





(……やはりそうか。ゴブリンロードの危機察知は、生物としての直感でスキルではない。だから、頭部や心臓への攻撃は避けれても、危機だと身体が感じない足や、手は、避けられないのか!)




「アクセル!!」




悠はロングソードに魔力を流し、重力魔法で一気に加速する。

凄まじい速度で踏み込むと、土は抉れて巻き散らかされる。その速度のまま大上段からの一撃を繰り出す。


怪物は棍棒で受けようとしたが、危機を感じたのか、直前で後ろに避けた。




だが、ロングソードは、怪物の胸元を縦に、真っ直ぐ切り裂き地面すれすれで停止する。





だが、悠の編み出した連続攻撃は、ここからだった。


まず、地面すれすれで止まっているロングソードを、下から上へ切り上げる。


重力魔法で制御されているロングソードの威力はなおも衰えない。


次に、切り上げ時の遠心力を利用した回転斬り、最後に刺突を心臓目掛け繰り出す。


だが、最後の心臓への攻撃は、身体を斜めにズラすことにより急所へのダメージを防いでいる。



だが、ゴブリンロードのHPは、150程まで減っていた。これではもう十全には身体を動かせないだろう。




(これで後はじっくりと、安全な遠距離攻撃でダメージを重ねて仕留めようか。…ん?何か様子がおかしい。)




先程まで此方を、憤怒の形相で睨みつけていたが今では、俯いて手に握っていた得物も落としている。よく見れば、口元は何か呟いているようだ。






直後、顔をあげたゴブリンロードの瞳には、深い知性と俗欲を宿していた。





「……やっと…やっと、やっとぉぉ!!!…支配権を奪う事が出来ました。貴方には礼を言わせてもらいます。ありがとうございました。」



先程までの獣のような、ギラついた雰囲気は消え失せ、理知的でどこか異質な雰囲気を放っている。




(こいつが、怪物に取り憑いてた下級悪魔か。……ていうか、悪魔ってどうやって狩るんだ。)




すでに、狩る事を前提として考えている悠に、なおも悪魔は語り始める。




「あれ?警戒しているんですかね。…まあ。劣等種の人族ですから仕方のない事でしょうが。今から私に隷属するなら殺さないでペットにしてあげましょう。如何致しますか?」



(まぁ、一先ず狩ってみるか。)



脳筋のような思考かもしれないが、気のせいだと思いたい。

悠は、厭らしい笑みを浮かべながら、語りかけてくる悪魔へ向けて思いきりストーンバレットを放つ。


「さて。どうします……へ?」


石の弾丸は、ゴブリンロードの頭を貫通していく。


一瞬の後、巨体は地に沈んだ。



頭部を破壊されれば、ゴブリンロードと言えども死は免れない。

頭の中で、ファンファーレが数回鳴り響く。





ゴブリンロードの死体から、ドス黒い煙のような物が湧き出てくる。


一通り瘴気の様な物が出終えると、それらは徐々に実体化してくる。

転生する時にモニターで見た、魔界に住んでいた悪魔そのものの悍ましい外見だ。


思わず身構えてしまう迫力をもっている。





「……せっかく…せっかくぅ!!強靭な肉体を確保出来たのに…。貴方やらかしてくれましたね…。」



(コイツ自身が実体化したのが、絶対に強いのに何か困る事があるのか?)



「何故ゴブリンロードに憑依なんて、回りくどい事をしてたんだ?お前は、ゴブリンロードなんかよりもずっと強いはずだ!」



悠の問いかけに、肩を揺らしながら嗤いだす悪魔。


一頻り嗤い終えた悪魔は、此方に向き直り芝居がかった口調で語りだす。





「何故と言われて答えるバカがどこにいるのでしょう?ましてや、私と貴方は敵同士。尚更、答える義務はありませんね。貴方には、次なる私の器になってもらいますよ?」


そう言うと、悪魔から放たれる殺気が膨れ上がり森が騒めく。



(コイツからは、真っ当なやり方じゃ情報を引き出せないな。……こうなったら奥の手を使うしかないか…。出来るだけ女神からもらった、このチカラに頼りたくはなかったが。仕方ないか。今回は、このチカラをくれた女神には感謝しないとな。)




悠は心の中で女神に感謝しながら祝詞を唱える。


悠を中心に光の奔流が渦巻いてゆく。




(女神の加護を局部鑑定した時に、頭の中に浮かんできた祝詞を練習しておいて本当に良かった。)




「…くっ。その神々しい魔力は…な、な、何なのですかぁぁ!?…こんな事あるはずがありません!劣等種が上位種を超えるなど……断じて許されない!!」




悪魔は焦燥を感じて、慌てて魔力を収束させ呪文を紡ぐ。




「闇より産まれし深淵よ。我が意に従い焼き尽くせ!ヘルフレイム!!」




悪魔が呪文を完成させて、右手を悠に向けて魔法を放つ。


漆黒の焔が、全てを焼き尽くし無に帰しながら迫ってくる。







……だが、悠には焦りや恐怖は浮かんでいない。



悠は光の奔流を圧縮し収束しながら右手を掲げる。


「ホーリーフレア!!!」


漆黒の焔を純白の炎が飲み込んでいく。このままでは一瞬で悪魔を焼き尽くしてしまうだろう。


だが、悠は、悪魔を半殺しにした所で魔法の発動を止めた。



「…ぐっ。…この加護は強い反面、副作用が強すぎる…。ここぞって時にしか使えないな。」



強大な光のチカラを行使した悠は、体力、魔力、の消耗が激しいのかゆっくりと、悪魔に近づいていく。





悪魔は、半身を聖なる炎で焼かれ意識も絶え絶えだ。



「…ゴロズなら、ごろ…ぜ。情報は…何が…あって…も吐…きはしな…い…ぞ。」



悠は、無言でロングソードに魔力を纏わせて悪魔に突き刺した。




激痛にのたうちまわっている悪魔に回復魔法を掛け、再度突き刺す。







ソレを、日が沈みかけるまで続ける。



「そろそろ、喋る気になったか?」


「喋りまずがら…。早くごろじてぐだざい」


悪魔の話によると、俺が転生した際に生じた、次元の穴を使って、何匹か異界の住人や、異界の魂が、この世界に入り込んだらしい。



「もういいぞ。楽にしてやる。」



そう言うと、魔力を込めたロングソードで切り刻む。


コアを落として悪魔は靄になり消えていった。辺りは薄暗くなっている。



悠は無言で帰路についた。



……頭の中にファンファーレの音を響かせながら。




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