伝説(レジェンド)級
遅くなりました!
「ウォーターアロー!」
「ストーンボール。」
「ウインドカッター!!」
辺り一面に威力や種類、規模が、様々な魔法が入り乱れる。
闘技場に濃密な魔力が溢れかえり、実力がEランク冒険者レベルの参加者は、魔力酔いで戦闘不能に陥って、魔法が直撃している。
ここで、数十人いた参加者の内、4割ほどが脱落している。
ふいに、赤髪の女が中心へ駆ける。
女の周りには紅の魔力が迸り、弱い魔法は魔力だけで散らしている。
「!?…なんなんだ!! あの女は!?」
放った水魔法を一瞬で蒸発させられた男が、驚きの声をあげる。
「……。あいつを狙うぞ!!」
我にかえると、強力なライバルを残り全員で潰すべく、周りに呼びかける。他の参加者も思いは同じだったのか、男に呼応して魔力を高めていく。
共通の敵を見つけると敵同士でも手を組むのは、人間の十八番なのかもしれない。
女が、中心へ辿り着くのと、男達が魔力を収束・圧縮させるのは、僅差で男達の勝ちのようだ。
約15名程度の魔法使いが、一斉に得意な魔法を放つ。
様々な色の魔法が一斉に飛ぶ光景は、迫力があり、なおかつ美しかった。
火の矢、水の槍、土の弾、風の刃。色とりどりの魔法が1人の女へ襲いかかる。
また、魔法を放つ際に、全くの偶然だが時間差での攻撃になっている。これを完璧に防ぎきるのは困難だろう。
女は、迫り来る魔法を見ても一分も同様を感じさせない。その紅瞳に宿るのは、勝利を確信した色だ。
突如、女を中心にして魔力の嵐が吹き荒れる。
魔力の嵐。と表現したが、的確には魔力の嵐の様に見える程の、魔力の収束・圧縮だ。
通常、魔法を行使した際に威力を決定付ける、収束・圧縮は、可視できる程の密度にはなることは無い。
密度や魔力量が、濃く、大きくなればなる程、大規模かつ高威力の魔法を使えるとされている事から、今回、女の放つ魔法の威力が伺える。
魔力の嵐が収まり、一瞬の静寂が訪れる。
右手には、燐光が煌めき、業火属性を付与された鮮やかな紅の魔力が渦巻いている。
女へ向けて、魔法が迫り来る。その距離は残り10メートルをきった。
「よし!! これであの女も脱落だ!」
「今の内に、他の奴を攻撃だぁぁ!」
周りの攻撃者達は、勝利を確信したのか女への警戒を失い、仲間討ちを始めようと再度魔力を高める。
女は、魔法を残り3メートル位まで引きつけると、右手を天高く上げ、魔法名を紡ぐ。
「灼熱世界!!」
魔法が完成すると、強大な魔力が世界を改変していく。
中心部から闘技場の結界内全域へ、強力な熱風が吹き荒れる。
熱風が、参加者へ触れると一瞬にして蒸発していく。次々と、残りの参加者を焼き尽くし蒸発させると、堂々と出口へ向かい歩いていく。
「………。アリシア選手ーー!!なんという事だ! 強力な魔法により全員をノックアウトだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
解説者らしき者も、一瞬だけ唖然としていたが、持ち前の応用力により瞬時に復帰する事が出来た。
アリシアが相手を殲滅するまでに1分もかからなかった。
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貴賓席–––
––––––それも、特に身分の高い者だけが立ち入る事が許される個室形式の部屋だ。
そこから、1人の金髪男と、ローブを着用した壮年の男が闘技場内を、凝視していた。
試合を見終わると、金髪の男が、ローブの男へ問い掛ける。
「……バトラーよ、先程の魔法は何級の魔法だ。」
「はっ!……あの魔法には濃密な魔力を多大に消費しておりました。あの消費度合いからして、おそらく伝説級の火属性魔法です。」
金髪の男は、バトラーと呼んだ男からの、思わぬ返答により困惑が見てとれる。
「この国に、伝説級の魔法を扱える者は何人おる?」
「……今の所は、私も含め4人だけでした。」
「そうか、これで5人目になるのか。伝説級の魔法使いは。」
「それで、あの娘は、どういたしましょう?」
「ふむ……。」
そう言って考え込むが結論はすぐに出たのか顔をあげる。
「……まだ、あの娘が件の魔法使いとは限らまい、暫くは様子見でいこう。」
「御意!」
臣下の礼をとり、再び横に控える。
魔導大会は始まったばかりだ。




