四強披露宴・終幕
「では4人目─―完全無欠。 その戦い方には全く隙がない。 生徒会長も務める実力者――海崎メグリ!」
その大歓声は、庭園の外にいるイズルにも聞こえてきた。
声援の大半が男子だった月乃とは違い、メグリは男子女子関係なく支持されている。
「まずは生徒会長として、このような催しを開いていただいた学園、並びに学園関係者に感謝します」
イズルの挨拶は他の四強とは違った。選手としてだけでなく、生徒会長としての運営側の立場も背負っている。
そんなメグリの言葉に、その場の全員が耳を傾けている。
「そして、海崎メグリ個人としましては――相手が誰であろうと絶対に勝利し、優勝します」
絶対的な自信から来る強い言葉。それは誰にでも真似できるものはない。
「その瞬間を、ぜひとも皆様に見ていただきたいです」
メグリが言い終えると、会場が大きく沸いた。
「凄いな。 まるで別世界にいるみたいだ」
イズルは思わず呟いた。そして実感した。
学園の誰もが海崎メグリの優勝を望んでいることを。
その対戦相手は、メグリが優勝するための踏み台でしかないと。
(誰も俺の優勝なんて望んでいないんだな)
分かっていたことだった。魔導決闘祭に優勝するというイズルの願いは、自分一人のものであると。
(だけど─―いや違うな。 だからこそ、負けるわけにはいかないんだ)
負けてしまっては、学園に通い続けなくてはいけなくなる。
この孤立してしまっている学園に、あと2年も通い続けなくてはいけなくなる。
それだけは避けなくてはいけない。
「先輩、約束――忘れていませんよね?」
「ああ」
「私以外に負けるなんて許しませんからね」
やがて歓声は聞こえなくなり、教師の声が聞こえた。
「それではパーティの最後は――生徒による魔術花火です。 こちらの魔術は、東堂家当主・東堂 玄真様より学園に提供いただきました」
その言葉に反応したのは、生徒よりも来賓客だった。
「あの東堂家の技術が見られるのか――」
「本日はいらっしゃっていないようですが……」
来賓のざわめきに釣られるように、生徒たちからも期待が高まる。
「何か凄いのが見られるのか?」
「楽しみ~」
会場の熱気は最高潮になった。
「それでは――上空をご覧ください」
一瞬の間が空いて、小さな光が空をのぼっていく。
――パァンッ!
光がはじけ、大きな光の花が夜空に咲いた。
魔術花火――魔術装置によって、生徒の魔力を光に変換して作られたもの。
その花火は、生徒たちの込める魔力に反応して、色や形を次々と変えていく。
その花火は、会場の外からも見ることができた。
「きれいですね」
月乃は空を見上げたまま言った。
目を輝かせながら、次々と夜空にあがる光を見つめている。
「私は花火が大好きなんです。 花火は私に生きる希望をくれたんです」
花火があがるたびに、庭園からは歓声が聞こえる。
だがイズルは――花火を直視することができなかった。
だって花火は、イズルと同じ炎の魔術だ。同じ炎なのに、花火は見るものを喜ばせる。
(だけど……俺の炎では誰も喜ばない)
そう考えると、花火にすら嫉妬しているのを感じた。
「先輩は花火に参加しないんですか?」
「俺なんかが参加しても誰も喜ばないだろ」
「少なくとも私は嬉しいですよ」
月乃の視線は、今も花火に向けられたままだ。
「私はまた見たいです――先輩の優しい炎が作る花火を」
やがて、花火に向けられていた視線はイズルに向けられた。
その瞳は花火に照らされて輝き、強い期待を向けている。
「俺の炎は、そんないいもんじゃないぞ」
イズルは、その期待から逃げるようにして空を見上げた。
花火ではなく、空に浮かんだ月を見つめる。
「先輩、約束――忘れていませんよね?」
「ああ」
やがて花火は終わり、会場は拍手で包まれた。
その拍手をやがて静かになっていき、四強披露宴は終幕した。




