表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界生物怪奇譚  作者: 入舟三叉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/11

異世界生物怪奇譚4:ソラマメ

ここは異世界、ナイラーヘイムル。

日は東から登るし月は一つだが、生き物は現実世界と少し違う。

そんな世界。の少し変わった生き物のお話。


思えば、この世界で初めての洗礼だったのかもしれない。

なんとなく異世界へ召喚され、右も左もわからず、とりあえず宿に泊まった時の事。

それなりに異世界からの転生者は多いのか、着任研修は充実していた。

どこかの勇者のように、ひのきの棒と小遣い賃だけ渡されて放り出されるのではなく、最低限の座学と物資支給、身分証に宿に仕事にと、至れり尽くせりである。

そうして、仮住まいの用意が出来るまでの間としてあてがわれたのがこの宿。


本来であれば、城内の客室らしいのだが、改装中だとかで街の宿を用意されていた。

タダなんだから、文句を言ってはいかんのだが、汚いし暗いし臭い。

まぁ、お城の客室も街の宿と大して変わらないのかもしれないが。

家具は黒ずんでるしカビ臭いが、寝具はきちんと洗濯されているのか、綺麗だったのは幸いだった。

ふと、部屋を見渡すと、机の上に紙の束が置かれている。

木製の窓を開けたが、それでも暗いので燭台を近づけてみた。

なんだろう?宿の紹介とか、仕事の契約書とかだろうか?


"新規オープン!ふわふわのパンがなんと30ペンス!"

パン屋の広告?期待していた物とは違ったが、他の書類はそうではないかもしれない。

パン屋の広告を脇に置き、次の書類に目を通す。

"急な出費でも大丈夫!30日間金利ゼロ!あなたのゴルト金融!"

今度は消費者金融だった。年利150%は高いだろ。いや、そうじゃない。

何か嫌な予感はしてきたが、次の書類、もといチラシに目を通す。

"3年ぶりの全国公演。あなたの街にも憧れの楽団が。"

あー、次はコンサートかぁ。異世界の音楽も聞いてみたいなぁ。

どれどれ、次はどんなチラシだろうか?

"信じる者は救われます。毎週日曜日9時半よりミサ。寄付歓迎。"

教会もビラを撒くのか。何故か女性の絵が描かれていたり、他のチラシより色鮮やかなのが気になるが。


そうして、30枚近くのチラシに目を通したが、全部広告だった。

消費者金融のチラシは5枚もあった。景気が悪いのか・・・?

チラシに対する脱力感なのか、異世界疲れなのか、少し身体のダルさを感じ、ベッド上に転がっていた。

そこから、15分か20分くらい経っただろうか?

窓からの西日が部屋の奥に突き刺さったあたりで、部屋のドアがノックされる。

ドアを叩く音と同時に、外から声を掛けられた。

「晩御飯が出来ましたよ。食堂へ降りてきてください。」

はーい、と返事をし、重い腰を上げ宿屋の階段を下りていく。

食堂は割と広く、部屋や廊下に比べるとずいぶん明るい。


席について、しばらくすると料理が運ばれてきた。

蒸された根菜類に、ステーキ肉と、赤いスープ。

それにパンとチーズも付いている。

城内の客室の代わりだけあって、食事は豪勢だった。味はわからんが、現実世界で食べたとしても、そこそこのお値段がしそうである。

かなりクセが強いチーズやら、香草類やらの匂いに苦戦しながら食べ進めていると、さらに籠に盛られた何かが持ってこられた。

「これはサービスだよ。今朝、採れたばっかりのソラマメ。」

ラグビーボールくらいの籠にぎっしりと、大き目のソラマメが10本くらい入っている。

緑が鮮やかでツヤもあり、新鮮なんだろう。生きが良く動いてるし。

動いてる・・・?

籠に入ったソラマメは、表面をボコボコさせたり、震えたり、ピチピチしていた・・・


気味が悪いと思いながらも、恐る恐る一つ手に取り鞘を割ろうとした。

その時。

「お客さん!なにやってんの!ソラマメ食べた事ないの?」

宿の女将さんに怒鳴られたかと思ったら、ソラマメをひったくられる。

「これは!こうやって!食べるんだよ!」

ガッ!ゴッ!グチュ!

ソラマメはテーブルに置かれ、鉄槌打ちで3度潰される。

私が知ってるソラマメからはしないような、生々しい音が聞こえた。

女将さんは少し潰れたソラマメを手に取ると、ヘタの当たりを千切って私に渡してきた。

「こうやって。潰してから、ヘタを千切って、中を飲むんだよ。」

出されるがままに、受け取ってしまったが、気分は初めて納豆を食べる外国人のような。

汚物でも扱うかのように、指先でつまむように触りながら、鞘を押しつつ中身を啜ると・・・

あ、ソラマメだ。ソラマメのポタージュスープ。

塩味が無いのが残念だが、少し甘く、しっかり旨味があって美味しい。

香りも普通のソラマメで、チーズなんかに比べるとよっぽど食べやすい。


意外と美味しかったので、二つ目に手を伸ばして、ドカドカと潰したところでハッとした。

これの中身って・・・

そうして、一本目のソラマメの切り口を見たが、幸いにも緑色だった。赤かったら泣いてたかもしれない。

なかなかにボリューミーな晩御飯だったが、ソラマメも含めてペロリと平らげてしまった。


こっそり、一本だけ懐に隠して持ち帰ったが。


そして、次の日。

朝から城で軽い説明を受けた後、ギルドクエストもとい隣町へのおつかいへと向かう。

身分証を提示し、城下を抜け、人の目が届かなくなった辺りで、ついに本題である。

ソラマメの中身が見たい。

カバンに忍ばせていたソラマメは、まだゴソゴソと動いていた。

改めて、グルリと回しながら眺めてみたが、外見は普通のソラマメそのものだった。

嫌な予感がしつつも、鞘の縁に爪を立て、少しづつ割っていく。

そうして、少し中が見えそうになった瞬間。

パカッと割れて、中身が飛び出してきた。1つは顔の方に飛んできたので、咄嗟に目を瞑ってしまう。

頬に痛みを感じ、地面に蹲ってしまったが、急いで辺りを見回した。

カサコソと這うような音が聞こえたので、そちらを見ると。

ヤツがいた。

緑の胴体に蜘蛛のような細長い八本足。蟹のように目が飛び出て、触覚のようなものも生えている。

その、"ソラマメ"たちは、草原の彼方に走り去って行った・・・


頬から滲む血を拭いながら、隣町への道へと戻る。

歩きながら嫌な事を考えてしまった。

これ、環境破壊にならない・・・よね?いや、黙っておこう・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ