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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第一章「特殊第六執行部隊」1-1「ケイン・アッキネン編」
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CASE.006「インタースペース」

ご覧いただきありがとうございます。

初任務を終えたドゥーはどこへ向かうのか…第6話いってらっしゃい~


※本作はカクヨム、小説家になろう、アルファポリスにも掲載しています。

 赤いモノアイが、街を歩いていた。


 ニューヨークのタイムズスクエアを、白を基調に、さらに“天界じみた意匠”で拡張したような街並み――そう言えば伝わりやすいだろうか。

 本来は石造りの城塞都市であるはずなのに、空へ向かってはガラスの巨塔が幾本も突き刺さり、その谷間をモノレールが縫うように走る。

 足元には白い石畳が清潔に広がり、頭上では広告ホログラムが淡く明滅していた。浮遊車両がほとんど無音のまま滑るように行き交い、洒脱な装いの人々が忙しなく通りを流れていく。


 ――名は基底界(インタースペース)


 神々の世界――『神域』と、地球を含む無数の異世界――通称『下界』。

 そのちょうど中間に位置する、別次元の中継点。

 神々と人とが“唯一”交流を持つことを許された場所。

 まさしく天界――それが“基底界”だ。


 ただし、そこを行き交う者たちに天使の輪も羽もない。悪魔の牙も尾もない。

 見た目だけなら、至って普通の「人」である。


 そんな街のど真ん中を、重装備の赤いモノアイが闊歩すれば――まあ、目立つだろう。

 すれ違う人も、車道の向こうの人も、モノレールの窓越しの人影までもが、皆一瞬だけ視線を止めた。



 視線を集める男の名は『ドゥー』。

 つい先日、下級執行官として初任務を終えたばかり。そして現在は、輪廻庁サンサーラ・エージェンシーへ向かっている途中だ。


「はぁ……」


 足取りがとても重い。

 「控えろ」とあれほど言われた『アバドン・システム』を、短時間とはいえ行使してしまった。

 任務は一応大事なく成功したものの、上からの小言は確定だろう。余波で破損してしまった装備のメンテもある上、七面倒くさい大量の報告書もある。どちらかと言えば任務自体より、こういった後処理の方が幾倍も億劫だった。


(資格取って転職するかな?)


 現実逃避をしているうちに目的地へ着いてしまった。

 白いバッキンガム宮殿――と言えばそれっぽいか。厳かな白の建築が、街の白さと同化して鎮座していた。漫画であれば「ドォン」という効果音と共に登場する、そんな堂々たる佇まいと重厚感を醸し出している。


 気にせずドゥーは、建物の入口らしきガラス扉へ向かった。

 脇に設置されたタッチパネルへ手を翳す。ウィーン、と自動扉が開いた。


 中もまた、とても白い。

 白いラウンジに、白い受付。白い――ゴミ一つない、生活感のない清潔さだ。


 受付には二人の受付嬢がいる。こちらも白を基調としたコスチュームを纏い、来客であるドゥーに軽くお辞儀をしていた。

 ドゥーは受付の前を素通りし、さらに奥のゲートへ手を翳して小型モノレールへ乗り込む。

 行き先は、輪廻庁サンサーラ・エージェンシーのさらに中枢、転生監査機関『RAC』――ドゥーが所属する実働部隊のアジト。

 他の部署はワンボタンで転移できるのに、RACへの移動手段はアナログなモノレールのみだ。


 理由は至極単純。

 “近づくまでに数行程の面倒を挟む”。それが秘匿のためのセキュリティとして機能しているのだ。


 軍に近い立ち位置である以上、異世界の情報や神々の秘匿情報も多く飛び交う。中には主神級の神々が関わる情報もあるため、そのための輪廻庁入口・輪廻庁内のゲート・モノレール使用という三重セキュリティである。


 モノレールに乗り込むと急発進し、Gで身体がよろける。

 RAC自体、あまり出入りの激しい部局ではない。乗客は自分一人しかいないため、アナウンスで流れるCMの音声と、微かに軋むモノレールの音のみが車内に響く。

 静かで非常に落ち着いた雰囲気であり、ドゥーが好きな瞬間の一つだ。


 だが、わずか数十秒で到着。

 無慈悲にも扉が開いた。ドゥーは再度大きなため息をつき、重々しい足取りでモノレールを後にする。


 目の前に広がったのは、輪廻庁のような白ではない。

 秘密基地めいた暗い灰色の絶壁。物騒な工場地帯のような空気。銃器ラックの気配さえする――先ほどまで彷徨っていたあの街とは正反対の、紛れもない軍事施設だ。


「めんどくさいな……いちいち輪廻庁経由すんの」


 三度目の手認証を終え、ようやくRAC内へ。

 ドゥーはその場でグイーッと背伸びをした。軍人とて人の子だ。一日中この装備を纏っていれば、どこかしら体が凝ってしまう。


 すると奥の方から、タッタッタッと足音が聞こえてきた。

 もはやその軽い足音だけで、誰か分かる。


「先輩~~~ッ!!」


 脇腹に何かが激突する。

 装甲をしている都合上、当然ダメージを受けるのは激突した方である。


「いだいッス~(´;ω;`)」


 声の主は――『ミラ』。


 任務中も「ッスッス」と煩かった、特殊第六執行部隊所属の下級オペレーターだ。

 水色ボブで、背丈は女性平均くらい。服装は軍服ではなくパーカーにショートパンツ。完全に私服だ。ここが荘厳たる軍事施設であることは、どうやら彼女の脳裏には存在しないらしい。


「先輩、あの黒い波紋みたいなヤツ、何なんスか!?」

「ん、波紋?」

「執行対象を半分消し飛ばしたアレっスよ、アレ!」

「あぁ……」


 ここで話していいことだろうか。

 執行官、それも特殊第六執行部隊に“特殊”が付く主な原因である自分の恩寵(ギフト)は、その一端であっても秘匿情報に他ならない。話したところで理解できるとは限らないが。


 そう悶々と考えていた矢先、さらに奥から対照的な大人の女性の声が飛ぶ。


「コラ、ミラッ!」

「げ。見つかったっス……」



 ――『カイ』。


 紫髪のエリートお姉さん――の皮を被った監査官。

 その経歴は超絶エリートのそれだが、なぜこのような急造部隊に籍を置いているのかは謎だ。ちなみに、その理由を問い詰めると拳と酒臭い吐息が飛んでくる。


 コツコツとヒールを鳴らし、ミラの額に指を押し当ててぐりぐりする。


「『げ』とは何ですか、『げ』とは。アナタまだ報告書途中でしょうに」

「お前、報告書ほっぽって逃げてきたのか……」

「だって一回の任務で五千文字超のレポートっスよ!? そんなに書く要素どこにあるんスかぁ~!? 『たのしかったです('ω')』でいいじゃないっスか!!」


(なるほど)


 先ほどのアバドン・システムの“波紋”と呼ばれるものへの問いは、きっと字数稼ぎの一環だったのだろう。

 ドゥーが内心で納得すると、カイの視線がこちらへ滑ってきた。


「笑ってるけど、あなたもよ。ドゥー」

「……う(別に笑ってないぞ)」

「先輩、アバドンなんたら使ったから多分その分の報告も追加っスよ。お互い難儀ッスね☆」


(あぁ……神殺しでも始めようか)


 心の中で暴言を吐いたところで、カイは二人を連れて歩き出した。



 ――



 着いたのは、特殊第六執行部隊専用の作戦指令室だ。


 トイレ、バス、キッチンは完備。隊員の個室も揃っていて、ここだけで生活が成立するという、まるで完全無欠のシェアハウス。

 当然、食糧庫には大量の食品、主にカイの酒とツマミ類が敷き詰められており、各々が自分好みに所々をカスタマイズしている。


 当然ミラやドゥーの自室もあるが、頑なにミラは自室を厳重にロックしており、ドゥーに至っては引っ越したばかりのミニマリストのため、一瞥で飽きるほどのつまらなさだ。


 そんな何でも揃っている完璧基地だが、その唯一の欠点は“住人の質”だと、カイは言う。

 ドゥーは今回と合わせて三度目の訪問だが、相変わらずのその“惨状”に感心した。


(散らかってる缶……全部カイさんのだろ……。というかまたTバック――いや、下着もモニターにぶら下がってるし……)


「カイ姐、自分の物くらいは片付けてほしいっス。特にパンツ……というか、ほぼ紐でしょコレ。何をどう隠す用ですか、これ」

「うるさいわね~。どうせキレイにしても次の日には元通りなんだからいいでしょう?」


 ミラが「じゃあせめて飲みかけの缶だけでも!」と愚痴る。

 カイは「ブーッ」と子供のように反抗する。


(……さっさと終わらせるか)


 ドゥーは静かに、現実へ戻る準備を始めた。

 目の前の書類の山と対面し、ペンを手に取ったのであった。

【今回の用語まとめ】


基底界インタースペース

神々の世界である「神域」と、地球を含む無数の異世界「下界」の中間に位置する別次元の中継点。

神々と人が交流を許された、いわば天界に近い場所。


■神域

最上位存在、すなわち神々が本来属する領域。

通常の基底界人や転生者が容易に立ち入れる場所ではない。


■下界

地球や、神々によって作られた無数の異世界をまとめて指す言葉。

RACが監査・執行の対象とする世界群もここに含まれる。


輪廻庁サンサーラ・エージェンシー

魂の輪廻転生を管理する巨大機関。

基底界に存在し、転生監査機関RACを含む複数の部門を抱えている。



――――――――――――――――――――――――――――



ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ


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※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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