5-6:蘇生の条件
聖都の大魔道士役リリアンヌに案内され、僕とエリンは神殿内にある大魔道士役の部屋に案内される。
懐かしい部屋だ。昔は先代の大魔道士役だった母が使っていた部屋で、今は当代の大魔道士役であるリリアンヌが使っている部屋。
幼い頃、母に会いに行った時はこの部屋に通される事が多かった。
そして、今はリリアンヌに会いに行くとこの部屋に通される。
「それでクラウディオ、女の園は楽しめたか? 魔法学校に入りたいと言った時は驚いたが、面白そうだったしなあ。俺が編入の書類を作った甲斐があったならいいのだが」
「リリ姉、魔法学校には卒業の儀式目当てで仕方なく編入しただけで、女子校に入りたかったわけじゃないって、前に何度も言ったよな?」
「ほー。その割には魔法学校で女の園を随分と堪能した様に見えるなあ。その格好、身も心も女の子になってしまったみたいに見えるぞ」
「こ、これは、手配されている状況から逃げるのに仕方なく、だ」
まるで、いやらしい下心があって魔法学校に入ったみたいに言われるのは何か嫌だ。
それに、現状を説明する上で女装している事に触れないわけにもいかないか。
僕は、リリアンヌに何故今も女装しているのかを詳しく説明した。
「ふーん。女装して魔法学校に通うだなんて一週間もしない内に正体がバレると思っていたのに。ここまで周りを欺けるとはな」
リリアンヌは僕の頬に右手を当てて、それからゆっくりと自分の顔を近づける。そして、僕の顔を至近距離で舐め回すように見てきた。
近い。恥ずかしい。そして、それ以上によく分からない恐怖の様な感情が自分の中で湧く。
「リリ姉?」
「いや、可愛いなと思って」
リリアンヌは僕の頬から手を放して頭と顔を元の位置に戻す。
「こんなに可愛かったら誰もクラウディオが男だって気付かないか。幼い頃はあんなに可愛かったのにとクラウディオが成長するに連れて落胆していたのにな。まさか可愛くなって戻って来るとは思わなかったぞ」
頬から手を離された事に安堵した僕は一呼吸をして落ち着き、それから今回何故会いに来たかについてリリアンヌに改めて話す事にした。
「リリ姉、今日来たのはそこにいるエリンを生き返らせてほしいからなんだ」
「エリンというのは、クラウディオの隣にいる女戦士の事でいいのか? 生き返らせるも何も生きている様に見えるのだが」
「今は、僕が屍操の黒魔法を使って死体が崩れない様に保っているに過ぎない。だから、蘇生の白魔法で生き返らせてほしいんだ」
「屍操の黒魔法!? クラウディオ、本当に黒魔法が使えるようになったのか?」
リリアンヌは口を閉ざし、少しの間考える素振りを見せる。
「あのなあ、クラウディオ。色々言いたい事はあるけれど、とりあえず言う。何で俺がこのエリンを生き返らせなきゃいけない?」
僕の頼みでも無条件では駄目だという事か。
そうだよなあ。考えていなかったわけではないけれど、今の僕に出せるものは少ない。
とりあえず、アレを提案してみるか。
「リリ姉、身辺を守る強い兵士が欲しくないか?」
「さっき追い払った神殿の衛兵たちがいるし、これ以上は要らないな」
「いいや、要る。さっきの衛兵たち、あっさりとエリンにやられていたじゃないか。あれではいざという時にリリ姉を守れない。だから、このエリンを生き返らせてリリ姉を守るボディーガードにするべきだ」
どの道エリンは故郷の村に戻ったところで居場所がない。
だから、可能ならば戦士として働ける場所があればいいと思い提案してみた。
後は、リリアンヌがこの提案に乗ってくれさえすれば。
「ちょっとクロエ? そんな勝手に決められても」
先程の提案に対してエリンが僕にそう言ってきた。
まあ、当然か。
「でもな、エリン。今の時代に戦士として働ける場所なんてそんなに無いぞ」
「そ、そうだけどさあ」
「故郷の村には帰りたく無いんだろ?」
「ううッ……」
僕とエリンがそうやりとりしていると、リリアンヌが口を開いた。
「あのなあ、雇う雇わないかはこの際別にして言うけど、白魔法だってタダじゃないんだぞ。しかも、蘇生の白魔法となると大量の魔法力を消費する。だから、俺の一存じゃあ決められない」
何だ、そんな事か。
初めからそう言ってくれれば話は早かったのに。
僕は、吸収の黒魔法を応用して自分の魔法力をリリアンヌに分け与えた。
「クラウディオ、何をした!?」
「これで、人間一人を生き返らせる分の魔法力は得たはずだ。だからさあ、リリ姉。僕からのお願いって事でエリンを生き返らせてやってくれないか?」
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