4-3:村には帰れない
老戦士たちの話から察するに、エリンは村で死んだ事になっているとの事。
多分というか、間違いなく僕のせいだ。
あの時、エリンを人質にして森の奥に消えたまま旅に出たから、村の人たちからすれば帰らぬエリンが殺されたと思うのも当然。
「ごめん、僕がエリンを人質にしたばっかりに」
しかし、その言葉に対して老戦士たちはこう答える。
「クロエのせいではない。エリンを修行の旅に連れ出す事はワシらが頼んだ事」
「半ば無理やり墓を作ったのはエリンの両親の独断だ。あいつら、ワシらの忠告も聞かずに何としてもエリンを死んだ事にしたかったみたいでな」
そう言ってくれると罪悪感も若干薄れるが、それ以外にエリンの両親にも原因があるように聞こえる。
考えたら、エリンからは両親とか家族の事を聞いた事はない。
まあ、僕も両親の話をエリンにした事は無いし、特に話題にする事でも無いから不自然ではないのだが。
「ううん、皆大丈夫。元から私の両親って弟にしか期待していなかったし、私も戦士なんか目指しているから半ば見限られていて、こうなるのも仕方無いとこあるんだ」
エリンのその言葉に、僕も槍使いの老戦士たちも皆沈黙した。
「だから、今回も村には顔出さないつもりだったし、ここまで来たのも師匠たちに修行して強くなった事を報告したかっただけ」
そうか、エリンが里帰りの話に最初良い顔しなかったのは、そういう事か。
だが、今のエリンの言葉で、エリンの生存が隠し切れない事に僕は気付く。
何故なら、
「そうですよ。エリンは魔の厄災エクスエナを討伐した事になっていますし、その噂が村に届けばエリンが生きているって村の人たちも知る事になります」
「マジか!? それを早く言え!」
「やりやがったな、エリン!」
落ち込んだムードが一転して一気に祝勝ムードとなり、今宵の夕食の宴はエリンを除く全員がエリンのその成果を祝い、盛り上がる。
宴の後はエリンを含めて殆どの者が疲れて早々に寝てしまうが、僕は一人夜風にあたりたくなったので、外に出て物思いに耽っていた。
エリンに帰郷を勧めた選択は、果たして正しかっただろうか?
そんなことを考えていた時、不意に老戦士の一人が僕に声をかけてきた。
「で? 魔の厄災を実際に殺したのはクロエ、お前さんなのか?」
「はい、私が黒魔法で殺しました。でも、エリンもかなりいいところまでエクスエナを追い詰めましたし、エリンがいなければ殺せなかったかもです。だから、褒めてあげてください」
「そうか」
しばしの沈黙。
そして、
「エリンが直接殺したわけではないのだな?」
「えっ? あっ、はい」
「エクスエナ討伐の話で、あまり浮かない顔をしていたが、人を殺めたショックからでは無かったか」
確かにそうだ。
本来ならば、一番の主役であるはずのエリンが盛り上がらないのはおかしいか。
「まあ、直接手を下したわけでなくとも、人を殺めた経験がショックだったのかもな。しかし、そんな調子で武の厄災討伐に出かけて大丈夫なのか?」
「実は──」
僕は、エクスエナから解放した領地の住民たちが、エリンの事を魔の厄災を倒した英雄として持ち上げている事。そして、武の厄災を恐れている事を伝えた。
「そうか、優しいエリンらしいな。それに、自分が殺したわけでもないのに英雄扱いされる事に引け目を感じているのかもしれん」
「私も魔の厄災討伐でエリンの世話になりました。ですから、今度は私がエリンが武の厄災を倒せるように助ける番です」
「そうか。エリンの事、またよろしく頼む」
槍使いの老戦士は、僕に頭を下げてそう頼んだ。
相も変わらず弟子思いのいい師匠だな。
「ワシはもう寝る。クロエも夜更かしは程々にな」
そう言って、槍使いの老戦士は去っていった。
さて、僕もそろそろ寝るか。
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