表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃亡するのに女装していた男魔道士、女戦士と知り合って一緒に旅する事になる  作者: ヘラジカ
第三章:魔の厄災エクスエナ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/90

3-8:堕ちた武の客

 酒場の外へ出ると、男二人が武器を持って待ち構えていた。


 二人共、重そうな両刃の斧を両手持ちしている。


 屋内で振り回すには向かない武器だ。


 二人が素直に外で待ち構えているのも納得だし、攻撃を受けたらただでは済まないだろう。


 だが、その対価として攻撃速度は鈍くなる。


 故に、素早いエリンの格好の餌食。


 負ける事は無い。


 まあ、万が一負けそうになったら僕が黒魔法で倒すか。


 この村から逃げなきゃいけなくなるけれど。


「よーし、逃げずに来たな」


「ちッ! お前の得物、長物かよ。ああッ、クソ! アルベルトの野郎を思い出してイライラする!」


 アルベルト?


 確か、武の厄災と呼ばれる男の名前がアルベルトだったな。


 何でも、その武力で領地を占拠した上、武を極めようとする者たちがその土地に集まっていると聞いた事があるが、詳しくは知らない。


「アルベルトというのは、武の厄災の事でしょうか?」


「ああ、そうだ。アルベルトの野郎、俺たちを破門しやがったんだ」


「だから、俺たちで魔の厄災を倒して奴を見返してやろうというわけだ」


 それで、エクスエナを討伐しにここまでやって来たのか。


 呆れた理由だ。


 それに、破門されたのが悔しいのならば、武の厄災アルベルトを倒すべきだろう。


 それをやらない時点で、こいつらの高が知れるというもの。


「ッたく、嫌な事思い出しちまったじゃねーか!」


「あのさあ、そっちが勝手に振ってきた話題だし、文句があるならアルベルトとかいうのに直接言ったら?」


「うるせえ! 行くぞ、ぶっ殺してやる!!」


 怒った男二人は両刃の斧を振り回しながら、エリンに襲い掛かる。しかし、当然の如く二人の攻撃を避けるエリン。


 男二人の方も扱う武器の割には素早く、それなりに修練を積んでいるのが分かる。しかし、エリンの方も扱う装備、身体能力向上の白魔法、そして何よりこれまでの修行の成果で、男二人を翻弄する。


「くそッ! ちょこまかと!」


 男二人は攻撃を繰り返すが、エリンに当てる事ができず、徐々に苛立ちが増していく。


 そうして、動きが雑になってきたところで、エリンが片方の男の右手を槍で突く。


 男は衝撃と傷みで斧を落としてしまう。


 そして、その隙にエリンは男の喉元に槍を突きつけて、動きを止めた。


「どう? まだやるつもり?」


 勝負あったな。


 槍を突きつけられている方の男は両手を上げながら手を開き、降参のポーズをしている。


 だが、


「まだだ!」


 もう片方の男が持っていた斧をエリンに目掛けて投げつける。


 エリンは、とっさにこれを避けた。


 そして、槍を突きつけられていた方の男も、槍が離れたのを機に間一髪でこれを避けるが、足をひねったのか倒れてしまう。


 結局、一か八かの投擲攻撃も外し、下手をすれば仲間をも殺しかねない攻撃も無駄に終わった。


 かと、思った。


 斧を投げた男は、エリンが避ける先を予測していたのか、その方向にナイフを数本投げ、これをエリンの腹部に命中させる。


 腹部が空いた鎧を着ているエリンに、投げナイフが刺さった。


「いったァー!」


 エリンが痛みで思わず声を上げる。


 しかし、この程度で戦意喪失するエリンではない。


 エリンはすぐさまナイフを投げた方の男に襲い掛かった。


 男の方も、腰の鞘から短剣を抜き、二刀流でこれに応戦するが、エリンに圧されている。


 このままやればエリンが勝つだろう。


 まったく、往生際の悪い奴らだ。


 だが、エリンの傷が心配だし早く終わらせたい。


 それに、槍を突きつけられていた方が男が勝ち目が無いと悟ったのか、僕を人質にしようと動いているのが丸分かりだ。


 僕は、背後から襲おうとしている男の動きを止め、逆に男の背後に回って首元に普段から隠し持っているナイフを当てる。


「そこまでです!」


 僕は、エリンとその戦っている男に声をかけ、二人の戦闘を中断させる。


「毒のナイフです。少しかすっただけで動けなくなる神経毒の他、このまま放置すれば死ぬ毒も含ませています」


 本当は、こっそりと使った黒魔法で体を麻痺させているだけなのだがな。


「くッ!」


「貴方も一対二で戦いたくはないでしょう? 素直に負けを認め、仲間を連れてさっさと帰った方がよろしいのでは?」


 僕は、体が麻痺した方の男を突き放し、背中を蹴り飛ばして、もう一人の男の方に飛ばす。


「ち、ちくしょう! こんな、こんな奴らにッ!」


 男は、仲間の鎧の首元付近を掴み、引きずりながら去っていった。


 恐らくだが、仲間を心配してではなく、毒のナイフを警戒して素直に引き下がったのだろう。


 仲間を気遣う様な奴らには見えなかったからな。


 だが、今はそれよりも、だ。


「ちょっと、クロエ。いいところだったのに」


「そんな事より、お腹の傷、見せてください」


 投げナイフによる傷は、思ったより深かった。


 だが、僕はそこに白魔法で治癒の光を当てて、完全に治してしまう。


「凄いじゃん、クロエ。もう全然痛くないよ」


「誰かさんが怪我ばかりするせいで、毎回白魔法で治しているうちに上達したんです!」


 本当に上達してしまったのだがら、困ったものである。


 最初のうちは、かすり傷を治す程度が精一杯だった。


 だけど、これまでの旅の最中でエリンの傷を治すのを繰り返すうちに、何時の間にか刺し傷程度なら簡単に治せる様になってしまったのだ。


 しかし、これは喜ばしい事だけではない。


 男の僕が白魔法を上達させられたという事は、これはすなわち女であるエクスエナの黒魔法も上達している事を意味してしまう。


 傷が完治して喜ぶエリンとは裏腹に、僕は改めて不安を覚えるのであった。

ブックマーク数が増えると作者が喜びます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ