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5話 水も滴る天使様と天使たちのホットライン

《琴音》

 あれから少し時間が流れたある日。

私は日常になってきた七瀬さんとの屋上での昼食会。

だが今日に限っては……。

 「雨だね……。」

 「雨……ですね……。」

運悪く雨だった。


 ざー……ざー……と容赦なく降り続く雨あられに私たちは扉のまで立ち尽くしている。

 (どうしましょうか……。)

悩んでも仕方ないのはわかっている。

だけど、なんで今日は雨なんだ。

天気予報では晴れだって言ってたのに……。

 「七瀬さん、どうしましょうか?……。」

 「うーん、そうだね……。」

七瀬さんはそう言って、屋上の扉と階段の間にある踊り場に座った。

 「うん、ここで食べよう。」

 「はい?。」

ポンポンと可愛げに座れとジェスチャーする七瀬さん。

若干ドヤってるのがなんか可愛い。

 とそんなことは一旦隅に置いといて……。

 「はぁ……、仕方ないですね……。」

私は少し妥協する感じで七瀬さんの隣に座る。

こんな状態でも楽しく調理パンや菓子パンを食べる彼女は本当にすごい……。

 「ん……、何?。」

そして、なんで様になるのかよく分からない。

補正……補正なのだろうか?。

いやしかし。

 「なんでもないよ。ただ、七瀬さんの食べてる姿が可愛かったからつい見とれてしまって……。」

 「ん!?。」

パンを咥えながら顔を赤くする七瀬さん。

うん可愛い。

なんというか……、語彙が消える。


《〇》


 しばらく経った頃。

暗く濃い雲が風に流されて、太陽の光が扉の窓から射し込んできた。

 「お!、晴れたね。」

そう言って七瀬さんは屋上の扉を開いて、雨上がりの箱庭を駆ける。

 「琴音……。」

突然、七瀬さんに名前を呼ばれて振り向く。

 「っ……!。」

雲の切れ間から差し込む光がカーテンのようになり、屋上の床にできた水溜まりがレフ板のように七瀬さんを照らす。

 「仄華……。」

水の滴る箱庭で踊る黒髪の天使。

その光景は今も鮮明に脳に焼き付いていた。



《琴音》→《仄華》



 学校が終わり、家に帰った私は睨みつけるようにスマートフォンを見つめていた。

 (まだかなぁ……。)

実はというと、あれからお互いの連絡先を交換していつでも会話出来る状態にした。

無論、SNSでも良かったのだが、市ノ瀬さん……琴音の発案で最初は電話にすることになり、今はそれを待っている状態だ。

 (なんでこんなに緊張しているのだろうか……。)

制服を脱がずにベッドに寝っ転がっている私はスマホの待機画面の時間を確認して無理やり時間を潰していた。


ピピッ、ピピッ。


 突然の電子音にびっくりした私は慌ててスマホを手に取って確認する。

[☏ 市ノ瀬琴音]

良かった。しっかりきた。

 「はい、もしもし。」

ガタッとスピーカーごしに何か落ちた音が聞こえる。

 「大丈夫……、市ノ瀬s……。」

《「琴音って言って……。」》

 「はい……、琴音。大丈夫。」

《「うん、大丈夫。少しベッドから落ちただけ……。」》

全然大丈夫じゃないが。

《「仄華は?。」》

 「私はいつも通りだよ……。」

耳元で聞こえる琴音の声が体に染み渡る。

少し囁き声っぽいのが余計にくる。

 「私、家族以外で電話するの初めてで何話せば良いか分からない……。」

《「あはは……、私も……。」》

 「…………。」

《「…………。」》

やっぱりダメじゃん。

そもそも普段から会話でできてないのに電話でできるわけないわな……。

 「あの琴音……、そろそろ切るね。」

《「うん……。」》

少し名残惜しい声がスピーカーから聞こえるけれど仕方ない。

でもどうせ終わるなら……。

 「琴音……、初めての電話、ありがとう……ね。」

《「っ!?。」》

プツンと切れてしまった。

やはりダメだったか……。

好きな人にAMSRとかしてみたいと思ってたからしてみたけど……。

大丈夫だよね……。

よね!?。

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