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90.古都ファムォーラ

[古都ファムォーラ]



 運命が巡り合う地。



 アウラの命名も無事終え、ハノワが張り切って招待状の作成に取り掛かっていると地下牢にてアンデッドの研究に明け暮れるリッチの元へ身をよじらせながらアウラが訪れる。


「ココ狭いわね」


「呼んでくれれば行くのに。どうしたの?」


「色んな所から人が来るって話だったけど、折角ならクロナたちを呼んだらどうかと思ったんだけど」


 周囲に広がる死体の山には目もくれず、子供たちに街を見てほしい旨を告げる。確かに[色んな国の人]が来ることにはなっているが、アンデッドが衛兵として機能し、巨大なハーピーが空を支配している国を討伐対象と考えないかがいまだに不安であった。もちろんハノワにはしっかりとその事実と[やましい奴ら]の出入りは一切禁ずることも一筆書かせたが、そもそも悪戯だと思われないだろうか。



 いまだ想像できぬ各国からの招待客を面倒に感じながらも、アウラに溜息を吐きながら返答する。


「アウラにはサプライズのつもりだったんだけどこの前リロに伝えたら、ただちに向かいます、って即答してた」


「もうこっちに向かってるの!?あの子たち大きくなったかしら!」


「冒険者にもなれたみたいだし、土産話を聞くのが楽しみだなぁ」



 かつて鳥とねずみの姿を取った際に経験した短くも濃い冒険。自由に生きるクロナたちがそのような冒険をしてきたのか、何を見てきたのか。年甲斐もなくウキウキしているとアウラが思い出したかのように話しかけてくる。


「そういえば無言でアニスたちが地平線に向かって飛んで行ったけど、もしかして」


「…あの子たちクルス大好きっ娘だし、仕方ないね」


 家族平等に突撃してくる3姉妹だが、クルスの胸に飛び込む際はアンデッド以上の邪念がにじみ出ているのをロード夫妻にて確認しており、親としても好きにしなさいといった状態で半ば放置している。


「でもあの子たち目が本当いいよね」


「私よりもいいからね。産まれた時の栄養価が違うだけでこうも違うとはね」


「それでアウラと同じくらいでかくなったらクルスもやばい、よね………あっ」


「どうしたの?」



 クルスたちが来る、その一報は確かに素晴らしいものだ。…しかし彼らは今とあるメンバーとパーティーを組んでいるわけで。


「あの子たちの性格考えると今一緒にいる冒険者仲間、連れてきちゃうかも」


「あら、いいじゃない。お友達もきっとこの街を気に入ってくれるわ」


「その[お友達]って前に縄張りに入ってきた子たちなんよ」


「……自称勇者だったかしら」



 その話題を聞くと明らかに不機嫌になり始める。縄張りに侵入してきた者としていまだ認識しており、当然アウラの今の機嫌を考えると飛び立った娘たちも…。










「クルスさんのお父様は王様なのですか!?」


 新たな拠点を手に入れたという情報にリロ問わず、クルスやクロナも喜んで向かうことにした。リロは渋い顔をしていたが、魔の山の調査を終えた一行はその後、共同でいくつか依頼をこなしていくなかで共にいる時間も長くなり、是非国に来るようクルスが冒険者仲間たちを誘うことにした。



 迷わず来訪に賛同した勇者一行はこの世界で得た新たな仲間たちとともに、彼女らの両親を一目見ようと順調に晴天の下を闊歩している。



「えっと、まぁ王様と言えば王様ですね……不死王ですけど」


「何か?」


「な、何でもありません!」


「今向かっている方向ですが、俺の記憶が正しければ最近難民がかつてのゲシュタルトに集まって建国されているのですよね?もしかしてご両親は建国に手を貸されているとか?」


「そう伺っております。落ち着いたので是非見に来るよう、我々が呼ばれました」



 いまだ警戒を解くことはないリロだが、構わずクロナたちの両親へと話は移る。以前にも話題にしたはずだが、それでも家族の話はいつ聞いてもいいものだと勇者たちは仕切りに話題を振る。すでに会えない前世の両親を思い浮かべながら…



「確か可愛い妹が3人いるんだよな!お袋も美人で親父が最強だって!!会ってみてぇな~」


「あんたが会いたいのは妹さんとお母さんでしょ」


「お父様は世界一です!」


「きっとクルスさんたちに似て妹さんたちはとても可愛らしいんでしょうね」


「えっと、あははははは」



 捨て子であったことを告げておらず、愛想笑いで返すしかないが考えてみれば両親も妹も魔物であり、彼らが実力のある冒険者であることを失念していた。今更の事態に気付いたクルスは全身に嫌な汗が流れるのを感じるも、その思いもアイリスの一言で現実となる。



「……ッ。3体、凄い速さでこちらに向かってる」


 [索敵]に映る敵影の報告に、全員すぐさま身構えるがそのうち3名はこの状況に懐かしさとおおよその見当がつく。




「「「…………ォぉおぉおおおおお兄様ぁぁぁぁあああああアアアっ!!」」」



 先頭を歩いていたクルスは瞬時に全員の視界から消え、振り返ると後方に砂煙をあげながら仰向けで地面に倒れている青年と巨大な鳥の姿をした異様な存在を3体確認する。



「は、ハーピーだ!!」


「クルスさん!!!おのれ魔物め!!」


「待ってください!」


「何言ってるんですか!魔物ですよ!?」


「その剣をいますぐ下ろさねば貴様らの首を切り落としてやる」


 クルスが魔物の不意打ちにあったことで一気に殺気立つが、その前をクロナが立ち塞がり、背後からリオンの首に剣を突き付けるリロの姿に場は困惑する。何が起きているのか状況を整理しようとする一行をよそに、襲ってきた魔物たちは嬉しそうに白目を剥くクルスの上で飛び跳ねる。


「お兄様お久しぶり!元気そうだね!!」


「ちょっと大~きくなった~?」


「あ、お姉様、リロ先、生も久し、ぶり」



 気絶はさせているが襲っているわけではなく、じゃれついているうえにクロナたちに親しげに話しかけてくる妖美なハーピーたちに勇者一行はクルスが目覚めるまで呆然とこの異様な光景を眺めることしかできなかった。

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