外で電気シェーバーで髭を剃る男
世の中には、理解できない趣味を持つ人々が存在する。
理解されたいのか。
はたまた、理解されたくないのか。
それとも、ただ見てほしいだけなのか。
ここは——
変わった趣味を持つ者たちが集う場所。
『カワシュミの館』
「司会は私、館主の——」
「黒岩です!」
「そしてアシスタントの——」
「はい!!
** それではぁあ?(川口でぇーす!彼女募集中!)**
** 次のカワシュミはコイツ!」
男が現れる。
胸ポケットから
電気シェーバーが
少し顔を出している。
服装はどこか古い。
昭和のサラリーマン風。
「金輪際 中山と申します。」
「んでわぁ?
あなたのー?
変わった趣味、ワッツ!?」
「いやぁ〜」
男はにこやかに笑う。
「外で髭を剃ることですな!」
「外で?」
「そうそう!」
「公園!」
「駅前!」
「スーパーの駐車場!」
一拍。
「どこでもナウい!
** バッチグー!」
黒岩、
黙る。
「なぜ外で?」
「爽快なんだよぉ〜!」
男は胸を張る。
「やってミソ!」
「朝の空気!」
「鳥のさえずり!」
「ブーンってね!」
シェーバーを
軽く鳴らす。
「最高だよ!」
黒岩、
腕を組む。
「……家で剃ればいいんじゃないですか?」
一瞬。
中山、
目を見開く。
「そらねーのかい!?」
身を乗り出す。
「黒岩さん!」
「髭は!」
「外でよ!」
一拍。
「剃るのが!
** おめぇ!
** きやちーんべよぉ!」
スタジオ、
ざわつく。
黒岩、
ゆっくりと口を開く。
少しだけ
江戸っ子口調。
「べらんめぇ……」
一拍。
「私は剃る必要がないからねぇ。」
「髭が生えないんだ。」
沈黙。
中山、
固まる。
「……」
「……え?あんたぁ!!じつぁあ女の子かい!?」
スタジオの空気が
止まる。
黒岩、
カメラを見る。
……
……
「……かはぁーーっ……」
深く、
長いため息。
「川口」
「はい」
「つまみ出せ」
「どうぞ!!」
川口が、
サラダ煎餅
を差し出す。
「……」
黒岩、
それを見る。
一拍。
「軽いな」
「つまみだせと……」
「パリパリは好きだが今じゃない!!!」
中山、
静かにシェーバーを取り出す。
ブーン。
スタジオの隅で
髭を剃り始める。
——ここでCMが入る。
*
CM明け。
川口の肩に、
なぜか
細かい剃りカスが
付いている。
「えぇ、いかがだったでしょうか?」
黒岩、
少し疲れた顔。
カンペを見る。
「次回は——」
一拍。
「横断歩道で青信号を見送る男」
「おおおお!!」
「楽しみですなーー!!」
「また来週!!」
黒岩って女性だったのか!?w




