最終回w
世の中には、理解できない趣味を持つ人々が存在する。
理解されたいのか。
はたまた、理解されたくないのか。
それとも、ただ見てほしいだけなのか。
ここは——
変わった趣味を持つ者たちが集う場所。
『カワシュミの館』
——しかし本日は
様子が違う。
照明が少し落ちている。
観客も静か。
そして——
中央の席に座っているのは
川口。
「えー」
一拍。
「本日は最終回ということで」
「司会は私、川口が務めさせていただきます。」
スタジオ、
ざわつく。
その横に——
黒岩。
いつもの席ではなく
ゲスト席。
腕を組んで
少し照れている。
「本日のゲストは——」
一拍。
「館主 黒岩さんです。」
拍手。
しかし
どこか不思議な空気。
黒岩、
ゆっくり立ち上がる。
「どうも」
一礼。
「本日は」
一拍。
「私の変わった趣味を」
「お話ししようと思います。」
スタジオ、
静まり返る。
川口、
少し身を乗り出す。
「では」
「あなたのー?」
「変わった趣味、ワッツ?」
黒岩、
深呼吸。
そして——
「えー」
一拍。
「私は」
「27歳独身」
さらに——
「彼氏募集中の女です。」
沈黙。
……
……
川口、
固まる。
観客、
ざわつく。
黒岩、
少しだけ微笑む。
「私の変わった趣味なんですが」
一拍。
「人の変わった趣味を聞いて」
さらに一拍。
「ため息をつくことです。」
静かに。
深く。
「……かはぁーーーっ」
スタジオ、
完全沈黙。
川口、
ゆっくり言う。
「以上?」
黒岩、
うなずく。
「以上。」
沈黙。
……
……
しかし——
突然
川口が
ゆっくり袖をまくる。
「さて」
一歩前に出る。
「最終回ということで」
一拍。
「今までの」
「うらみ」
「晴らさせていただきます。」
スタジオ、
ざわつく。
黒岩、
ニヤリ。
「来い」
「遠慮するな。」
川口、
指を突きつける。
「この!」
「変態女が!」
スタジオ、
どよめく。
黒岩、
目を閉じる。
そして——
「もっといじめてw」
「サイコー!」
「たまんねーわ!」
スタジオ、
騒然。
川口、
完全に戸惑う。
「いや」
「違う」
「そういう反応じゃない」
黒岩、
うっとりしている。
「もっと」
一拍。
「冷たい目で見てくれ。」
川口、
完全に引く。
しかし——
止まらない。
「この!」
「つまみ出せしか言わない女が!」
「人の人生をつまみにしてきたくせに!」
黒岩、
震える。
「……」
一拍。
「最高。」
両手を握る。
「ゾクゾクする。」
スタッフ、
肩を震わせている。
川口、
もう止まらない。
「この!」
「ため息製造機が!」
「番組終わらせた女が!」
黒岩、
椅子の上で小さくガッツポーズ。
「来た!」
「今日イチ来た!!」
スタジオ、
大爆笑。
川口、
ついに息切れ。
「……」
「……」
肩で息をする。
一拍。
黒岩、
満足そうに言う。
「ありがとう」
深々と頭を下げる。
「最高の最終回だった。」
沈黙。
……
……
川口、
ゆっくりカメラを見る。
「……」
一拍。
「やっぱり」
「この人」
「変わった趣味でした。」
その瞬間——
照明が落ちる。
重たい音。
ドン……
ドン……
ドン……
画面に
黒い背景。
白い文字。
——
次回新番組
——
タチの悪いイタズラが好きな
準軽犯罪になりかねないヤツらを紹介する番組!
——
ザ・アンダーグラウンド
——
川口、
最後に小さく言う。
「お楽しみに。」
暗転。
——完——




